JR北海道は10日、冬の道東観光の風物詩として、釧網本線で20年以上にわたり運行されている「SL冬の湿原号」の現状と今後の予定について発表した。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響もあり、「SL冬の湿原号」の利用は減少している状況だが、JR北海道によれば、道内唯一のSL観光列車を守るため、蒸気機関車の全般検査や客車リニューアルを行い、引き続き運行していくという。
「SL冬の湿原号」の蒸気機関車C11形171号機は1940(昭和15)年に製造され、北海道各地で活躍。1975(昭和50)年に用途廃止となった後、標茶町で静態保存されていたが、1998(平成10)年から復元が行われ、1999年4月21日付で車籍が復活している。その後、2003年度、2008年度、2013年度の計3回、全般検査を実施した。
1・3・4・5号車に使用される14系客車は1973~1974年に製造され、秋田運転区(スハフ14-507・オハ14-526)と熊本機関区(スハフ14-505・オハ14-519)で使用された。1980~1982年にかけて五稜郭車両センターで北海道向けに改造され、急行「はまなす」などに使用された。1999年、SL列車の運行に合わせ、苗穂工場で改造を受け(スハフ14-507の改造は2003年)、車内の腰掛を変更したほか、テーブルやダルマストーブが設置された。
2号車の「カフェカー」は、1952年に製造された旧型客車(スハフ44-2)で、函館・札幌・旭川・函館の順で使用されてきたという。1988(昭和63)年、「C62 ニセコ号」の運行に合わせ、五稜郭車両センターで「カフェカー」に改造され、あわせて車両番号を「スハシ44-1」に変更した。
今後について、蒸気機関車C11形171号機は2021年に苗穂工場で全般検査の実施を計画している。蒸気機関車の心臓部であるボイラーは大阪の商社に搬送し、修繕・性能検査を実施。台枠や台車といった主要な部品に摩耗やひびが発生するなどしているため、これらの修繕も行う。
14号客車と「カフェカー」も、サービス機器の電源に使用している発電エンジンが老朽化していることから交換が必要であり、台車部分・車体外板・腰掛・トイレ・内装品なども劣化しているため、2021年と2022年にリニューアルが実施される。なお、蒸気機関車の全般検査と客車リニューアルは春から秋にかけて行われ、冬の「SL冬の湿原号」としての運行は継続するとのこと。