ビジネスやマーケティングなどの場において、自社や自分の立場が競合他社と比べて不利な状況に陥ってしまうこともあります。そのような勝ち目のない状況になると、諦めてしまう方もいるでしょう。
しかし、どれだけ勝ち目がない状況でも、アンダードッグ効果を活用すれば状況を改善できる可能性があります。そのため、勝ち目がなくてどうしようもない状況に陥ったときのために、アンダードッグ効果について把握しておくようにしましょう。
アンダードッグ効果の意味
アンダードッグ効果とは、状況が不利な方を応援したくなる心理効果のことです。日本語では「判官贔屓(ほうがんびいき)効果」とも表現できます。スポーツで明らかに実力が足りないチームが強豪チームに立ち向かっていったり、投票で誰も票を入れないだろうと思われている候補者につい票を入れたくなったりしてしまうなどが、この効果に当てはまります。
アンダードッグ効果が心理学用語として使われる場面
アンダードッグ効果は不利な方を応援したくなる心理効果のことです。そのため、選挙やスポーツなどでよく使われることがある言葉です。
逆に、人気のある方に乗っかっておこうという心理が働くこともあります。このようなアンダードッグ効果と逆の心理効果をバンドワゴン効果と言います。
これらは事前にどちらが有利、不利という情報がなければ心理効果として働きません。そのため、事前情報が必要なアンダードッグ効果とバンドワゴン効果は合わせてアナウンスメント効果と呼ばれることもあります。
アンダードッグ効果が人々に与える心理
アンダードッグ効果のことを理解し、その心理効果を人々に与えられれば不利な状況を改善できる可能性があります。
不利な状況に落ちってしまったときにアンダードッグ効果を活用できるようにするためにも、アンダードック効果が人々に与える心理効果について把握しておきましょう。
応援したくなる
アンダードッグ効果は、ただ不利な状況になれば応援してもらえるわけではありません。不利な状況になっても、懸命に頑張る姿を周囲に見てもらうことで、その様子に胸を打たれた方々が応援をしてくれるようになります。
そのため、不利な状況になってすでに諦めムードを漂わせているような状態では、アンダードック効果は期待できません。
弱いものを守りたくなる
人間は集団で生活することで、弱い存在は守るべきものという考えを持つようになることがあります。そのため、小さな赤ちゃんや老人などは守らなければいけないという本能が働くことがあります。
この本能が、状況が不利で立場が弱くなっているものに対して向けられることで、アンダードッグ効果が現れることもあります。
感動や切なさがある
不利な状況に立ち向かって頑張る姿は、感動や切なさ、カタルシス(精神の浄化作用)などいろいろな感情を与えます。そのドラマチックな状況に惹かれて、ついつい状況が不利な方に注目をしたり、応援したくなったりなどすることでアンダードッグ効果が現れることがあります。
マーケティングにアンダードッグ効果を活用した具体例
前述したように、アンダードック効果は、不利な状況に陥りその不利な状況に立ち向かっていることを周囲に気づいてもらわなければいけません。
そのため、マーケティングにアンダードッグ効果を活用したいのであれば、その不利な状況に陥っている、不利な状況に立ち向かっているという情報をうまく発信する必要があります。
「発注ミスをしたため購入して欲しい」という販売方法
スーパーやコンビニなどの商品POPには、「お買い得」や「おすすめ」などの内容が書かれていることが多いでしょう。
しかし、場合によってはあえて、「発注ミスをして困っています」や「大量に売れ残っています」など、弱みとなる内容が書かれていることがあります。
このような店の弱みを見せるようなPOPは、困っている仕入れ担当者を守ってあげたい、商品が全部売れるように応援したいと思わせる効果があり、不要なものでも購入してしてもらえたり、SNSで情報を拡散してもらえたりする可能性があります。
コロナ禍でお客さんが減った飲食店のキャンペーン
新型コロナウィルスが流行した影響によって飲食店は大打撃を受け、その状況はテレビやネットなどで大きく報じられました。
その飲食店をサポートするために、国がいろいろなキャンペーンを行ったこともありましたが、コロナ禍でキャンペーンを行うことに賛否があったり、そのキャンペーンのシステム不備があったりなど、思うような効果や評価は得られませんでした。
しかし、それらの不遇な飲食業界の状態を知ったことで、その弱った飲食店の力になりたいと、できるだけ飲食店を利用しようと考える方も多くいました。
不人気を逆手に取ったキャンペーン
自社の商品やサービスなどにあまり人気がないことをアピールするような宣伝も効果的です。
また、過去にはSNSで商品が売れず困っていることを消費者に伝え、なぜ商品が売れないのか消費者から意見を集めるということをした企業がありました。その際には意見をしてくれた消費者に商品券を渡すというキャンペーンも組み合わせたことで、大きな話題となりました。
アンダードッグ効果を発揮するための条件
周囲が応援したくなるためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。マーケティングでアンダードッグ効果を得るためにはどのような条件が必要になるか、事前に把握しておきましょう。
逆境でも一生懸命にやっていること
不利な状況にあるにも関わらず、その状況を改善しようとする努力の様子が見られなければ、誰も応援しようという気持ちにはなりません。そのため、アンダードッグ効果を活用する場合には、逆境でも努力を怠っていないことが前提条件となります。
普段の姿を知ってもらっていること
どれだけ不利で、どれだけ危機的な状況であるかを正確に把握するためには、不利な状況になる前の普段の姿を知ってもらわないといけません。
たとえば、大型スーパーに負けないように頑張る地域の商店や、大手チェーン店が近くにできてしまった飲食店など、普段からその努力の様子が確認できやすい中小規模の個人店や企業などがアンダードッグ効果を得られる可能性があります。
日本のアンダードッグ効果「判官贔屓(ほうがんびいき)」とは
判官びいきとは、弱者や敗者に同情して応援する気持ちのことで、アンダードック効果の日本版のようなものです。
判官びいきの判官とは、九郎判官のことを指し、九郎判官は源義経のことです。源義経は平家を倒した功労者であるにも関わらず、鎌倉幕府初代将軍である兄の源頼朝にうとまれてしまうことで、悲運の死を遂げてしまいます。
源義経に対する同情の気持ちが判官びいきの由来になっていると言われています。もともと日本人にも弱者や敗者に同情するという感情があるのです。
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ビジネスやマーケティングの場では、不利な状況に陥ってしまうこともありますが、諦める必要はありません。不利な状況でも、アンダードック効果をうまく活用して、応援をしてもらえば、状況を改善できる可能性があります。