「栄枯盛衰」という言葉を古文や一般書籍、テレビなどのメディアで耳にすることよくあるでしょう。しかし、実際に意味を問われるとうまく説明できなかったり、自ら積極的に使用するほどには正確に意味を理解できていなかったりする方も多いのではないでしょうか。
この記事では、栄枯盛衰の意味からその使い方や例文、よく間違えやすいその他の四字熟語も紹介していきます。これらを正しく理解して、ビジネスの場や日常生活で活かしてみましょう。
「栄枯盛衰」とはどんな意味?
栄枯盛衰とは、「人や世の中は、盛んなときもあれば、衰えることもあり、その流れを繰り返していく」という意味の言葉です。
栄えていたものが勢いを失ったり、逆に衰えていたものが勢いを取り戻したりする際に使います。現象や情勢に対してだけでなく、人に対しても使う言葉なので普段の生活からビジネスの場までさまざまな状況で使用できます。
「栄枯盛衰」の語源・由来
栄枯盛衰の由来は「平家物語」にあるといわれています。
平氏と源氏の争いの中で、それまで強い勢力を持ち、栄えていた平氏が源氏に破れ、衰退します。この平家の繁栄と衰退から栄枯盛衰という言葉ができたといわれていますが、真相はまだわかっておらず、あくまで一説になります。
読み方は「えいこせいすい」
栄枯盛衰は「えいこせいすい」と読みます。難しい読み方ではないので、ぜひこの機会に覚えてみてはいかがでしょうか。また、あわせて漢字の書き方もマスターできるといいでしょう。漢字が思い出せなくなったときは、あらためて言葉の意味を考えてみてください。自ずと漢字が思い浮かんでくるはずです。
「栄枯」と「盛衰」のそれぞれの意味
次に、「栄枯」と「盛衰」のそれぞれの意味について解説します。
まず「栄枯」とは文字の通り、草木が茂ったり枯れたりするさまを表す言葉であり、栄えることと衰えることをたとえています。また、「盛衰」も、盛ん・衰えるという文字の通り、繁栄と衰退を意味する言葉です。繁栄が永続的に続くことのない世の儚さ、といったニュアンスも含みます。
どちらも似た意味の熟語ですが、それらを重ねることでより意味を強めているものが、栄枯盛衰という言葉です。
「栄枯盛衰」の使い方と例文
次に栄枯盛衰の使い方や、その使い方がわかる具体的な例文をいくつか紹介していきます。
栄枯盛衰は、繁栄と衰退を表す言葉であるため、適切な場面で使用しなければ相手に失礼になってしまうこともあります。たとえば業績が好調の企業や組織に対して安直に使用すると、いずれ衰退すると指摘したことになり、非常に無礼な発言になってしまうため注意が必要です。
よく使う表現「栄枯盛衰は世の習い」
栄枯盛衰を使う表現や例文に「栄枯盛衰は世の習い」もしくは「栄枯盛衰は世の常」というものがあります。「世の習い」とは、世間のならわし・世間にありがちなことという意味で、「栄えているものもいつかは衰えていくのは世間のならわしである」ということです。
頑張る姿勢を促すときにも使用可能
一見するとネガティブな印象を受ける言葉ですが、それとは逆に励まし、頑張る姿勢を促すときにも使うことができます。なぜなら、繁栄と衰退は繰り返される、というさまが栄枯盛衰だからです。
好調の方に使うと嫌味に受けられかねない栄枯盛衰ですが、逆に不調の方には、「今は大変でもいつか逆転するときがくる」といった励まし方ができます。繁栄が永続的ではないように、衰退も永続的ではないのです。
「栄枯盛衰」の例文
それでは上述の意味を踏まえて、栄枯盛衰の例文を紹介します。
<例文>
- 栄枯盛衰は世の常だから怠けずに努力し続けなければならない
- 今は大変でも栄枯盛衰は世の常だから、またいつか上昇するだろう
「栄枯盛衰」と似た間違えやすい四字熟語
栄枯盛衰には似た意味を持つ四字熟語がいくつかあります。それらの四字熟語も、正しい意味や使い方を知り、それぞれを区別できるようにしておくことで、より正確な使い分けが可能になるでしょう。
ここからは、似た四字熟語と栄枯盛衰との違いを解説していきます。
盛者必衰
盛者必衰(じょうしゃひっすい)とは、世の中は無常であり、勢いの盛んな者もついには必ず衰え滅びるという意味です。
「無常」とは、一切のものは常に変化し続ける、という仏教用語のひとつです。世の中は変化し続けているので、どんなに繁栄していても必ず衰退する、という漢字の通りの意味になります。
繁栄と衰退を繰り返す栄枯盛衰と違う点は、盛者必衰には「繰り返す」ニュアンスがない点です。
諸行無常
諸行無常(しょぎょうむじょう)は、世のすべてのものは移り変わり、また生まれては消滅する運命を繰り返し、永遠に変わらないものはない、という意味です。仏教の根本的な考えを表す言葉になります。
「諸行」とは因縁によって生じた、この世のすべての事象を指し、「無常」と合わさることでこのような意味になります。
栄枯盛衰と非常に似ていますが、諸行無常は「万物(ありとあらゆるもの)」が対象です。そのため繁栄と衰退だけでなく、物体が壊れていくこと、町の様子が変化していくこと、などより広い意味で使われます。
「栄枯盛衰」の類語
栄枯盛衰には、似た意味の四字熟語だけではなく、そのときどきによって代わりに使うことも可能な類語も多くあります。日常では聞きなれない言葉もあるでしょう。ボキャブラリーをさらに豊富にするために、これらの類語も知っておきましょう。
一栄一落
一栄一落(いちえいいちらく)は、栄枯盛衰と同じ、世の中は繁栄と衰退の繰り返しである、という意味です。
春には花や草木が茂り、秋になると枯れることを由来とする言葉で、主に人の運命や地位などが栄えたり衰えたりすることをいいます。
消長遷移
消長遷移(しょうちょうせんい)とは、栄えたり、衰えたりして移り変わる、という意味です。「消長」とは勢いが衰えたり盛んになったりするという意味で、「遷移」は移り変わりという意味の言葉です。
邯鄲の夢
邯鄲の夢(かんたんのゆめ)は、繁栄は儚いということ、または、人生が儚いことを表したことわざのひとつです。中国の古書が由来であり、日本では「邯鄲の枕」ともいいます。
ある青年が邯鄲という町の宿で、出世して栄華を極める人生を50年余り送る夢を見るが、目覚めてみれば、炊きかけの粥も炊き上がっていないわずかな時間であった――という話が元になっています。
興亡盛衰
興亡盛衰(こうぼうせいすい)は、栄えたり衰えたりすること、という意味です。
興亡と盛衰はそれぞれ、「興亡」は国などが盛んになることと、滅亡すること、「盛衰」は栄えることと衰えることを意味します。
「栄枯」が付くそのほかの言葉
栄枯盛衰