米労働省が2021年2月5日に発表した1月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数4.9万人増、(2)失業率6.3%、(3)平均時給29.96ドル(前月比+0.2%、前年比+5.4%)という内容であった。
(1)1月の米非農業部門雇用者数は前月比4.9万人増と、前月の22.7万人減から増加に転じたものの、市場予想(10.5万人増)を下回った。業種別では娯楽・宿泊や小売りで減少が目立った。非農業部門雇用者数の3カ月平均増加幅は、前月分の下方修正の影響もあって2.9万人へと減速しており、安定的な伸びの目安とされる10-15万人程度を大幅に下回った。
(2)1月の米失業率は6.3%と前月から0.4ポイント改善し、2020年3月以来の水準に低下。市場予想(6.7%)も下回った。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も11.1%と、前月から0.6ポイント改善した。一方で、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が61.4%に低下しており、労働市場の縮小基調に歯止めがかかっていない事も分かった。
(3)1月の米平均時給は29.96ドルとなり、前月から0.06ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+5.4%であった(予想+0.2%、+4.5%)。(1)で示されたように、宿泊・娯楽など比較的低賃金の業種で雇用者が減少した事が引き続き平均時給を押し上げたと見られる。
米1月雇用統計は、非農業部門雇用者数が増加に転じたとはいえ4.9万人増という極めて低い伸びに留まった。雇用者が増えない中での失業率の低下については、求職活動を断念した人が増えた事が影響した他、「雇用されているが休職中」の人の扱いがデータの歪みとなったためと見られる。平均時給の増加についても、比較的低賃金の労働者にコロナ禍のしわ寄せが生じている構図が透けて見える結果となった。
「大きな政府」を標榜する米民主党のバイデン政権にとっては看過できない内容の雇用統計だったと見られる。米1月雇用統計の発表後にバイデン大統領は「米経済はなお苦境にある」とコメント。大統領補佐官も「雇用統計は支援の必要性を明確に示している」との見解を示し、1.9兆ドル規模の追加経済対策案の早期妥結を議会に要請した。
なお、冴えない内容の米1月雇用統計を受けてドルは下落した一方、米国株は追加経済対策への期待などから上昇。米長期金利は将来的なインフレ高進を見込んで長めの期間を中心に上昇した。