2021年1月13日、NVIDIAはノートPC向けのGeForce RTX 3000シリーズを発表した。ASUSTeKの「TUF Dash F15 FX516PR」は、その中からGeForce RTX 3070 Max-Qを搭載した15.6型液晶のゲーミングノートPC。高い性能はもちろん、リフレッシュレート240Hzの高速液晶、持ち運びしやすい薄型ボディ、それでいて頑丈と見どころたっぷり。さっそくレビューをお届けしよう。

  • ASUSの「TUF Dash F15 FX516PR」。2021年1月27日発売。今回レビューする型番「FX516PR-I7R3070ECW」は実売価格20万円前後

    ASUSの「TUF Dash F15 FX516PR」。2021年1月27日発売。今回レビューする型番「FX516PR-I7R3070ECW」は実売価格20万円前後

デスクトップ級のスペック、AmpereベースのモバイルGPUを搭載

まずは、ノートPC向けのGeForce RTX 3000シリーズに触れておこう。アーキテクチャはAmpere、製造プロセスは8nmである点は、2020年秋に発表されたデスクトップ版と変わらない。全体的な仕様としては、発熱を減らすためにCUDAコアやRTコア、Tensorコアの数が減っている。大まかなスペックは下の表で確認してほしい。

■表 デスクトップ版 RTX 3080 ノートPC版 RTX 3080 デスクトップ版 RTX 3070 ノートPC版 RTX 3070
アーキテクチャ Ampere Ampere Ampere Ampere
製造プロセス 8Nnm 8Nnm 8Nnm 8Nnm
SM数 68 48 46 46
CUDAコア数 8704 6144 5888 5120
RTコア数 68(第2世代) 48(第2世代) 46(第2世代) 40(第2世代)
Tensorコア数 272(第3世代) 192(第3世代) 184(第3世代) 160(第3世代)
ブーストクロック 1710MHz 1245~1710MHz 1725MHz 1290~1620MHz
メモリバス幅 320bit 256bit 256bit 256bit
メモリ種類 GDDR6X GDDR6 GDDR6 GDDR6
メモリ容量 10GB 8GB/16GB 8GB 8GB
PCI Express 4.0 x16 4.0 x16 4.0 x16 4.0 x16
TGP(カード電力) 320W 80~150+W 220W 80~125W

スペックを見ると「ブーストクロック」は1,290~1,620MHz、GPUの消費電力を示す「GPU Subsystem Power」は80~125Wと幅があり、「第3世代Max-Qテクノロジ」への対応も製品によって異なる。

つまり、GeForce RTX 3000シリーズ搭載ノートであっても、メーカーによって設計は大きく異なり、性能には差があるということ。なお、第3世代Max-Qテクノロジとは薄型ノート向けの技術で高度な電力管理の「Dynamic Boost 2.0」や動作音管理の「WhisperMode 2.0」といった機能が盛り込まれている。

これらを踏まえた上で、「TUF Dash F15 FX516PR」のスペックをチェックしていこう。ゲーミングPCの心臓部と言えるGPUは「GeForce RTX 3070 Max-Q」で、ブーストクロックは1,290MHz、GPU Subsystem Powerは85Wに設定されていた。

  • NVIDIAコントロールパネルのシステム情報を見るとブーストクロックは1,290MHz、GPU Subsystem Power(最大グラフィックスパワー)は85Wに設定

ノートPC向けGeForce RTX 3070のフルパワー仕様ではないが、最薄部19.9mmの薄さ、約2.1kgとハイエンドなゲーミングPCとしては薄型、軽量を実現している。公称バッテリー駆動時間も最大12.6時間と非常に長く、モバイルでの利用にも十分耐えられる。

ホワイトを基調としたシンプルなデザインで、よい意味でゲーミングPCらしい派手さがないため、プライベートではバリバリのゲーム用、外では長時間のバッテリー駆動を活かして仕事や学業で利用するといった使い分けもしやすい(モバイルノートとしては大きいが)。アメリカ軍の物資調達に使われる「MIL-STD規格」を満たすタフなボディとなっており、安心して持ち歩けるのも心強い。

  • シンプルなデザインなので利用場所を選ばないのは利点と言える

  • 同スペックでブラックカラーもラインナップ

また、Resizable BARにいち早く対応しているのも見逃せない。CPUとビデオカードのVRAM間は従来256MB単位でデータをやり取りしていたが、Resizable BARはその制限をなくしたもの。CPUからVRAMへ効率よくアクセスできるため、フレームレートが向上するゲームがある。AMDではSmart Access Memoryと呼ばれているものだ。

  • NVIDIAコントロールパネルのシステム情報でResizable BARに対応しているのがわかる

そのほかのスペックも見ていこう。CPUは、開発コードネーム“Tiger Lake”のIntel第11世代Coreプロセッサ「Core i7-11370H」を搭載。4コア8スレッドで動作クロックは最大4.8GHz(TurboBoost時)だ。TDP 35Wの省電力ながら、高クロック動作が可能なのほか、PCI Express 4.0に対応しているのも特徴。実際、GeForce RTX 3070とはPCI Express 4.0で接続されている。

  • CPU-Zでの表示。4コア8スレッドで最大4.8GHz動作。TDPは35Wだ

  • GPU-Zで確認するとGPUがPCI Express 4.0で接続されているのがわかる

メモリはDDR4-3200が16GBと高速大容量。ストレージはPCI Express 3.0接続のNVMe SSDが1TBと十分だ。

  • CrystalDiskInfoでの表示。型番を見る限り、SK HynixのNVMe SSDのようだ

  • CrystalDiskMark 8.0.1(NVMe SSD設定)の結果。シーケンシャルリード、ライトとも3,000MB/秒以上とPCI Express 3.0接続としてはハイエンドクラスと言える

ディスプレイはサイズが15.6型で解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。リフレッシュレートは240Hzとかなりの高速駆動だ。1秒間に最大240コマもの滑らかな描画が可能なので、FPSやTPSのシビアな戦いにも十分対応できる。また、sRGBカバー率100%と色の再現性も高い。

  • ディスプレイは15.6型のフルHD

  • パネルのタイプは公表されていないが、横から見ても若干黄色く感じる程度で発色は良好だ

  • リフレッシュレートは240Hzと非常に高い

インタフェースは左側面にギガビットイーサ、HDMI出力、USB 3.2 Gen1×1、Thunderbolt 4(Type-C)×1、ヘッドセット端子、右側面にUSB 3.2 Gen1×2を備えている。無線はWi-Fi 6とBluetooth 5.1に対応だ。Thunderbolt 4を備えているため、Type-C経由の充電(100WまでのUSB PD)にも対応する。

  • ACアダプタは200Wと大出力ということもあり、サイズは大きめ

  • 左側面は左からギガビットイーサ、HDMI出力、USB 3.2 Gen1×1、Thunderbolt 4(Type-C)×1、ヘッドセット端子

  • 右側面はUSB 3.2 Gen1×2

キーボードの詳細なスペックは公表されていないが、クセのない配列で使いやすい。キーピッチは筆者の実測で約19mmと十分なサイズが確保されており、キーストロークもしっかりとしたクリック感があり、使い心地は上々だ。ゲームの移動によく使われる「W」「A」「S」「D」の4キーは半透明のキーキャップが採用されており、判別しやすいのも便利。ゲーミングPCらしくグリーンLEDも内蔵されている。発光色は変更できないが、発光パターンの変更は可能だ。

  • クセのない配列で使いやすいキーボード。音量やマイクのオン/オフボタンが独立して用意されているのも便利だ

  • 「W」「A」「S」「D」キーはキーキャップが半透明だ

  • グリーンLEDが内蔵されている