16歳で映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』(16)にエキストラとして参加した際、女優の広瀬すずの目に留まったことをきっかけに芸能界入りした俳優の鈴鹿央士(21)。映画初出演作『蜜蜂と遠雷』(19)で新人賞を総なめにし、ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』や『MIU404』など話題作への出演も注目を集めた。デビューしてすぐに俳優としての才能を開花させた鈴鹿が、シリーズ累計600万部を突破した人気漫画『ホリミヤ』の実写化で主演。本作の撮影裏話や鈴鹿流の役作りについて話を聞いた。
『ホリミヤ』で鈴鹿が演じた宮村伊澄は、クラスではいつもひとりぼっちの地味でネクラな男子、学校の外ではピアスだらけのバンドマンのような謎の男、そんな2つの顔を持つ男子高生。クラスメイトの堀京子(久保田紗友)との出会いをきっかけに色づいていく青春の日々を表現した。
さまざまな顔を見せる宮村を丁寧に演じた鈴鹿は、「堀さんに対する宮村くん、石川くん(鈴木仁)に対する宮村くん、学校にいるときの宮村くん、学校の外にいるときの宮村くんなど、誰と一緒にいるのか、どこにいるのかで宮村くんは全然違う。でも人間が変わるかというとそこまでではないと思ったので、程よい具合で変えるように気をつけました」と意識したことを明かした。
そして、「人と場所によって変わるというのは共通点なのかなと思います」と宮村と自身の共通点を説明。「苦手な人がいると静かになったり、楽しい人がいると楽しくなったり。宮村くんの学校の中と外ほどのギャップはないですが、岡山弁で話しているときと標準語で話しているときで口調やペースが変わったりします」と語った。
教室でひとりぼっちで過ごすオーラ0の宮村も見事に表現しているが、「そうしているほうが実は楽なんです。大学でもそんな感じでした」と明かし、「ただ、自分が演じた宮村を見て哀愁が足りないなと。哀愁はにじみ出てくるものだと思うので、まだまだだなと思いました」と振り返った。
特に苦労したことを尋ねると、「ずっと苦労しているし、難しいなと思っているので、全部ですね。自分に自信がないタイプなので、OKが出るまではずっと不安で、『どうしよう』って心配になるんです」と告白。
「最初はそんなに考えていなかった気がしますが、『決算! 忠臣蔵』あたりから、『大丈夫かな?』と思いながら演じるようになりました。俳優さんはよく『自分の作品に満足できない』とおっしゃいますが、こういうことかと。完成した作品を見ると『もっとこうできたな』と思ってしまうもので、現場ではそのときできるベストを考え抜くしかないと考えるようになりました」と自身の中での変化を明かした。
不安を抱きながら今できるベストを模索し続けるというのは、精神的に疲れ切ってしまうのではないかと思ったが、「僕の中では考えているほうが楽」とのこと。「今のところ、迷いながら演じるタイプです」と分析した。
ただ、『MIU404』で共演した綾野剛の言葉で少し自信がついたという。「『央士に託したよ』と言われたシーンがあったのですが、僕の中では完全燃焼できず、剛さんに『完全燃焼できなかったんですよね』と話したら、『心が映っていて最高だったよ。映像の力を信じて!』と言ってくださって、『かっこいいな』と。そのあと『ホリミヤ』の撮影があり、やっぱり『どうしよう』となってしまいましたが、綾野さんのおかげで少し自信がつき、強くなれたと思います」とうれしそうに話した。
自分の演技に満足できず常に模索しているということは、それだけ成長し続けられるということだろう。鈴鹿は「満足する気配がない。まだまだです。無限大ですね」と笑った。