ソフトバンクは2月4日、2021年3月期 第3四半期 決算説明会を開催しました。それによれば今期も増収増益。また、宮内社長は、報道陣の質問に回答する形で「料金値下げの影響」「楽天モバイルについて」「孫正義会長について」「PayPay上場について」も言及しました。
決算は増収増益、デジタル化と巣ごもり需要が後押し
2020年度第3四半期の累計 連結業績は、売上高が3兆8,070億円(前年同期比1,891億円増)、営業利益は8,416億円(同465億円増)でした。宮内社長は「コロナ禍でも+5%の増収、+6%の増益となりました。ヤフー・法人が業績を牽引しています。心配していたコンシューマ事業もQ1~Q3の累計で見れば少し伸びています」と評価します。
プラス要因となったのが、デジタル化と巣ごもり需要。法人のテレワーク関連のビジネスが予想を上回る利益貢献だったほか、巣ごもり需要でヤフーのeコマースや子会社が成長しました。これにより、2020年度の通期予想も上方修正し、売上高は5兆1,000億円(期初予想+2,000億円)、営業利益は9,700億円(同+500億円)としています。
宮内社長は「アナリストの方々は、これまでも『モバイルのコンシューマ事業は今後、利益が減っていくのではないか。ソフトバンクは大丈夫なのか』と心配されてきましたが、Beyond Carrier戦略がリアルに進展しており、通信事業以外の領域(ヤフー、法人、コンテンツサービスなど)が成長ドライバーとして機能するようになりました」とアピールしました。
料金値下げの影響は?
質疑応答には、宮内社長が対応しました。料金プランの値下げによる来期の影響を聞かれると「いろいろとシミュレーションしています。コンシューマ事業のモバイル通信料は少し落ちると思います。コスト効率化を進め、またヤフーや法人などの事業を活性化することで調整していきたい。なんとか減益にはならないようにしていきます。まぁ、それは宮川新社長が、これから重い責任を持ってやっていきます」と答えます。
楽天モバイルへ転職したソフトバンク元社員が、5G技術の機密情報を持ち出していたとされる件についてコメントを求められると「はっきり言って、あってはならない話。営業秘密が不正な手段によって持ち出されたという重要な事案です。当社の営業秘密が楽天モバイルに利用されることがないように、民事訴訟を提起することになっています。4Gおよび5Gの基地局の情報って、僕らが20年前からずっとやってきたノウハウなんです。どこに基地局を建てるか、とか大変な仕事なんです。これはちょっとね、許されることではないと思ってます。いま捜査当局がきちっと調べているので、実際にどんな状況かは分かりませんけど、そういう対応をしていきたい」と会社の対応を伝えます。
楽天モバイルの新料金プランについては「0円という、でかい新聞広告を目にしました。一生懸命、がんばられているなと思います。それなりの大きなインパクトはありますが、総務省さんが5年前にMVNO事業者向けの施策に取り組んだときにも、我々はソフトバンクとワイモバイルで対抗して顧客数を減らすことなく、どんどん増やしていきました。今回は4Gと5Gにも対応した、新しいワイモバイルの料金プランを出しています。これで相当、対応できると考えています」と話します。
そして「我々は、販売チャネルという大きなインフラも持っている。価格だけの勝負じゃないんですね。ネットワーク品質もあります。我々の4G LTEなら99%、どこでもつながります。温泉でもゴルフ場でもスキー場でも。ネットワークは、例えば96%から99%まで、わずか3%増やすために何兆という規模のお金がかかる事業です。ネットワーク品質は、きめ細かなクオリティが問われる。いま(楽天モバイルは)ずっと0円でやっているわけでしょ。本来ならね、もっとたくさんお客さんがいくべきと思うんだけど、そこまでいかないのはやっぱり……。我々のカスタマーは品質に対するこだわりが強いですね」と自信をのぞかせました。
さらに「もう1点、これから5Gのネットワークが出てきます。今後発売される端末、すべて5G端末です。この5Gにどこまで投資してエリアを広げられるか。各社その競争なんです。端末をそろえること、お客さんのサポート、コンテンツサービス、色んな総合力だと思っています。楽天さんも頑張っていただいて良いと思うんですが、それに決して負けないで我々も対抗していけると考えています」と説明しました。
PayPay上場も近い?
経営にタッチしていない孫正義会長は、いまソフトバンクにとってどんな役割を果たしているのか、という質問には「昔から新しい事業に行ったら、『あとは宮ちゃんやっといて』なんていうパターンが多かったんですが、日常のオペレーションをやっていない社外重役として、月1回の役員会などで『ユーザー視点で、その考えかたはおかしいんじゃないか』とズバっと言っていただける、それは役員にとって非常に大きなプラスだと感じています」と宮内社長。孫正義会長はいま、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)を通じてグローバルなユニコーン企業に巨額の投資を繰り返しています。宮内社長は、PayPayが成功したのはPaytm(ペイティーエム、SVFの投資先)の力を借りたおかげ、とも説明しました。
「ソフトバンクとヤフー、それにPaytmのエンジニアの3者がうまくインキュベーションできたからPayPayは成功したんです」と話すとともに、今後もSVFが投資するユニコーン企業とシナジーを出していければ、と意気込みます。
そんなPayPayについて宮内社長は「いまはまだ大きな赤字です」としつつも、ある証券会社からは『株式を公開したらこんなにでかいですよ』と提案を受けたことを明かしました。報道陣から「もし上場したら1,000億円を超えるユニコーン企業になるか」と聞かれると、「そんなレベルではありません。そりゃ提案だから営業の売り込みもあるから、どうか知りませんよ、でも僕はもう1個ヤフーをつくるくらいの価値があると思っています」と自信を見せます。
そのうえで「ソフトバンクにはネットワークがあり、営業力があり、ヤフーやLINEのトラフィックがある。これらは、フィンテック企業がロケットスタートするためのアセットとして活きてくるんです」と解説しました。
さらに報道陣から「いつごろ、上場できそうか」と尋ねられると「アメリカ市場だったら、いつでも上場できるんじゃないですか。黒字じゃないと株式を公開できないのは、日本くらいでしょう。……すみません、ちょっと言い過ぎたかな」と苦笑いするひと幕も。
「要するに顧客数なんです。顧客数がこれだけの勢いで伸びるということは、大変なパワーなんです。1人の顧客を獲得するのには膨大なコストがかかりますが、獲得してしまえば黒字転換はやりやすい。中国のアリババだって、利益が出だしたのはほんの4、5年前です。それまで、ずっと真っ赤っかだった。大事なのは、恐れずに顧客数を伸ばすこと」と説明していました。