KinKi Kidsの堂本光一が作・構成・演出・主演・監督を務める『Endless SHOCK』スクリーン版(2月1日〜18日)が現在全国で上映されている。同作はジャニー喜多川作・構成・演出、堂本主演のミュージカル『MILLENNIUM SHOCK』として2000年に開幕したシリーズで、2005年より堂本自身が脚本や演出にも参加し、内容を刷新しながら上演している。ニューヨーク・ブロードウェイを舞台に、ショーへの信念を持ち続けるコウイチ(堂本光一)とカンパニーの姿を描き、主演の堂本のほか、上田竜也、梅田彩佳、越岡裕貴、松崎祐介、石川直、寺西拓人、高田翔、椿泰我、松井奏、前田美波里が出演する。
開幕時よりチケット全日程即日完売を続け、日本演劇界におけるミュージカル単独主演記録1位を更新していた同作だが、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の上演は2月26日をもって公演中断を余儀なくされ、ニューノーマルな状況下で新たな『SHOCK』を構想していた堂本は、9・10月に梅田芸術劇場にて『Endless SHOCK』の3年後の世界を描いたスピンオフ作品『Endless SHOCK -Eternal-』の初上演を成功させ、7月には『SHOCK』シリーズを20年にわたって牽引してきた功績で堂本が第四十五回菊田一夫 演劇大賞を受賞した。『Endless SHOCK-Eternal-』は本年の2月4日から帝国劇場でも上演され、映画では本編、舞台ではスピンオフを楽しめるという新しい試みとなっている。
今回は映画『Endless SHOCK』で作・構成・演出・主演・監督を務めた堂本にインタビュー。新たな試みについての意図や、コロナ禍でエンターテインメントを届けることについての思いなどの話を聞いた。
■てピンチから生まれてくることも多い
——今回『Endless SHOCK』を映画館で上映しようと思ったきっかけをお聞かせください。
去年大阪で公演をやっている時に、来年帝国劇場でまた2~3月の公演があるけど、本編をやることはできないだろうなと思ってて。大阪公演は『Endless SHOCK -Eternal-』という感染対策を施した公演をやってたんですけど、本編はできないだろうなと思っていました。何かもう一つ面白いことができないかなと考えた時に、『Endless SHOCK -Eternal-』はスピンオフなので、本編をご覧になってない方がどうやって楽しめるかなという時に、同じ時期に映画館で上映していただくと、相互に楽しめるかなと思ったのがきかっけですね。
——『SHOCK』で「Show must go on」というテーマを体現されてきた堂本さんにとって、昨年の上演の中断や、『Endless SHOCK -Eternal-』の上演などこの1年の歩みを振り返り、改めて感じたこと、気づいたことなどはありましたか?
色々な打撃を受けたのはエンタメ業界だけではなく、世界中みんなが同じです。自分としては『Endless SHOCK -Eternal-』も、コロナがなかったら作ろうとも思っていなかったもの。「こういう状況だからこうなっちゃった」というのはすごく嫌で、この状況だからこそ生まれるものがあるだろうとやっている感覚です。アクセルばっかり踏んでても危ないので、周りをよく見て、その時の状況に対応しながら動いていく必要があると思います。
——コロナ禍に見舞われた演劇界について、思うことはありましたか? たとえば自分が盛り上げていきたいという思いなどは?
自分が盛り上げたいというよりは、やっぱり、今、何ができるかということを考えます。それはある意味、今までになかったことが生まれる瞬間だと思うんですよ。歴史を振り返ると、エンターテインメントでもダンスにしても、何にしたってピンチから生まれてくることも多いんだと思います。今まで考えもしなかったようなことが生まれるチャンスに変えていかないといけないよな、と。演劇に関して言えば、海外作品は契約上厳しいものがあるのかもしれないし、舞台も劇場へ足を運んでいただいてなんぼというものですが、特に配信という形は、コロナが収束しても残ってもいいコンテンツなんじゃないのかなと思ったりします。
もちろん作品によるかもしれないし、それによって劇場に足を運ぶ人が少なくなるというご意見もあるでしょうけど、今だからこそ生まれたものが後々続いていったり、それがさらに進化して残っていったりということも、十分あり得ることだと思うので、自分としてはあまり後ろ向きにならず、今この状況をしっかり捉えていきたいなと思います。
——そんな今、もしジャニーさんが生きていたら、どんな言葉をかけてほしいと感じますか?
特にないので……ゆっくりお休みください、と思います(笑)。散々働いてきた人だし、誰よりも責任を負って生きてきた人なので、「もう、黙っててくれるかな?」と(笑)。
——実際、何かご意見があるとは思いますか……?
常々、俺に対しては褒める人じゃなかったので……良くても、「ああ、良かったよ!」(ものまねしながら)って言うだけ! 以上! 逆に光栄だ、みたいな(笑)。一時期は本当に「このコロナ禍で、ジャニーさんだったら、どうしていたかな」と思った時もありましたけど、逆に考えると、この世の中を見なかったのは、ジャニーさんにとって幸せなことだったかもしれないなと考えるようになりました。やっぱり、エンターテインメントが大好きな人だったので……今は、それが思い通りにならない形で進んでいくことの方が多いじゃないですか。本当にファンを大事にする人だったから、ライブを通してファンの皆が喜んでる姿が見られないというのが、ジャニーさんにとって1番つらいことだと思うんです。今、この世の中を見ずに天国にいったのは、ジャニーさんにとっては良かったことなんじゃないかという気持ちがあるからこそ、「静かに寝ててくれ」と思います(笑)。
■それぞれ感じる「○○ must go on」ができれば
——普段は満員の中での公演ですが、今回無観客の帝劇で、16台のカメラとドローンを使っての撮影でした。普段とは違う環境だったと思いますが、その時の堂本さんや共演者の皆さんはどのような気持ちで挑まれたのでしょうか?
2月26日で舞台がストップしたんです。撮影したのはその後でした。20周年だったので、このまま何事もなく終わるのかと思っていた時に、無観客であれば可能ではないかという話にもなったので、「何に使われるかわからんけども、映像を作っとこう」という方向になりました。あの時は皆、突然自分たちの武器を奪われるという気持ちだったんです。千秋楽を迎えて終わると、ロス感はあってもそれ以上に達成感も得られる。でも途中で終わると、急に奪われた感じになってしまう。
演者にしてもスタッフの皆さんにしても「撮影するから来て」という強要はできないと思っていました。本当にお願いベースで撮影を行ったんですが、皆、むしろ喜んでやってくれました。ただ撮影に関しては、当時はコロナに関して今よりもさらにわからないことだらけだったので、時間の制約も厳しくて。本当はもっともっと別カットも撮っていきたかったんですけど、それは難しかったので、制約の中で皆が協力してくれたという思い出があります。
——今回は監督としてもクレジットされていますが、編集で意識したことはありましたか?
過去にBlu-rayを出した時は、編集するにあたって、いかに劇場で見ているかを意識していましたが、今回は1つの映像作品としてどう残そうかというのを意識しました。映像的に嘘をついてる部分も結構あるんですけど、それができるのがいいですよね。ただやっぱり映画館で上映するつもりで撮影していたわけではないので、心残りもたくさんあります。編集中も「あ~、別のカットないかなあ」と思っても、「ないなあ!」ということが多々ありました(笑)。
——最後に、映画を待ち望んでいる人にメッセージをいただければ。映画館で上映されることで、今まで見てなかった方も気軽に観られる機会になるのかなとも思います。
そもそもミュージカルというもの自体が、まだまだ世の中的には敷居が高くて、言ってみればいい値段ですし、「敷居の高い感じがなくなるといいよね」なんて、井上芳雄くんと話してたりもします。『SHOCK』本編で言えば、劇場の構造的にも東京・大阪・博多でしか上演は不可能なので、そういった意味では映画という形で、舞台を観に行くよりも値段は安く、敷居の高さを感じないで観にきていただけるのは、とても良いことです。このコロナ禍で、「映画館に行ってね」と言いにくいという感覚はありますが、同時期に帝国劇場ではスピンオフを上演していますので、今までご覧になったことがない方も、この映画を見て、ストーリーの先がどうなっているんだろうと気になってもらえたら嬉しいです。「Show must go on」という言葉はどんな時代にも当てはまるので、皆さんがそれぞれ感じる「○○ must go on」のようなものができて、伝わるものがあるといいなと思います。
■堂本光一
1979年1月1日生まれ、兵庫県出身。堂本剛とともにKinKi Kidsとして活動し、1997年にCDデビュー。主な出演作としてドラマ『銀狼怪奇ファイル ~2つの頭脳を持つ少年~』(96年)、『ハルモニア この愛の涯て』(98年)、『リモート』(02年)、舞台『SHOCK』シリーズ(00年~)、『ナイツ・テイル-騎士物語-』(18年~)など。ドラマ『リモート』(02年)にて第6回日刊スポーツ・ドラマグランプリ 助演男優賞、第35回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 助演男優賞、舞台『Endless SHOCK』にて第45回菊田一夫演劇賞 大賞(20年)を受賞している。