日本国内におけるPC版『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の競技シーンは、激動の時代を迎えました。
2020年12月、2年10カ月にわたって開催された国内リーグ「PUBG JAPAN SERIES」(以下、PJS)が終了。2021年からは、「世界で勝てる日本チームの輩出を目指す」という方針のもと、PUBG JAPANの主催する国内大会「PUBG JAPAN CHALLENGE」(以下、PJC)が、新たにスタートします。
今回は、国内シーンが大きな転換期を迎えるなか、数多くの国際大会に挑む日本のトップチームの1つ「DetonatioN Gaming White」(以下、DGW)で、チーム最年少の20歳という若さでありながら、オーダー(指揮官)を務めるMachao選手にインタビュー。日本代表チームとして、シーンを背負って戦うMachao選手の、これまでと今、そして、今後について語っていただきました。
出場可能な18歳になって間もなくPJSへ
――まず最初に、Machaoさんのゲームとの出会いやゲーム歴について教えてください。
Machao選手(以下、Machao):小学生のころは、PSPの『モンスターハンター』シリーズを、兄と一緒によく遊んでいました。中学生になると、進学校に行くための塾に通っていて、あまりゲームは触っていなかったんです。ただ、高校受験が早い時期に終わったので、そのときにWii Uのアクションシューティングゲーム『Splatoon(スプラトゥーン)』を始めました。
『Splatoon』で勝つために上手い人の動画を見るようになったのですが、たまたま『Splatoon』で有名なプレイヤーのたいじさんが『PUBG』を配信しているのを見たんです。それでおもしろそうだなと思って、『PUBG』もプレイするようになりました。
――『PUBG』の選手として活動を始めたきっかけを教えてください。
Machao:2017年の夏、プロゲーミングチーム「DeToNator」の4人が招待されたドイツの大会(※)があって、その大会で競技シーンに興味を持ち、自分もチームに入ってみたいと思うようになりました。それから、アマチュアチーム「Albatross」に加入して、「PUBG Friday Match」という初期のスクリムで、たまたま良い成績を残せたのが活動の始まりです。
当時、「Albatross」には2チームあって、僕が所属していたのは「Albatross cresc.」というチーム。仕事の都合や年齢制限(18歳未満)で公式大会に出られないメンバーが集まっていて、今DGWのアナリストをしているNicopも同じチームのメンバーでした。
※2017年8月23日~26日、ドイツで開催されるゲームの見本市「Gamescom」内で実施された招待大会「GAMESCOM PUBG INVITATIONAL」のこと。
――その後、公式大会に出られる年齢になって、すぐPJSに出場したんですね。
Machao:18歳になった2週間後に、PaR(リーグ入れ替え戦)へ出場した記憶があります。最初は「BLUE BEES cresc.」として出場しました。その次に「Galactic」というチームでPaRに出てたのですが、ギリギリ突破できず。FA(フリーエージェント)になったタイミングで、「DetonatioN Gaming」に入りました。
DGW加入後、優勝からの急降下を味わった裏側で
――「DetonatioN Gaming」に加入したのは、どういった経緯でしたか?
Machao:Nicopに「MachaoさんとSSeeSさんは、絶対に同じチームに入った方がいい」と言われたんです。現チームメイトのSSeeSはNicopとも交流があったので、その話が「DetonatioN Gaming」に入るきっかけになりました。
――DGWに加入した直後のPJS Season3では、見事優勝を果たしています。
Machao:正直、Season3の優勝は実力より上振れた結果だと思っています。しかも、次のSeason4 Phase1では降格ギリギリの順位。メンバーから外されてもおかしくなかったほど、自分のパフォーマンスはイマイチでした。そのときは、ものすごく悔しい思いをしましたね。
今だから話せる話ですが、実際そのときに自分をメンバーから外すかどうかという話も挙がっていたみたいで。でも、そこでチームリーダーのMelofoさんが「まだ若くて経験が少ない選手だから、様子を見てもいいんじゃないか」と言ってくれたそうです。自分としては覚悟していたんですが、おかげでDGWに残ることができました。
――NicopさんやMelofoさんの言葉があって、今のDGWにつながっているんですね。
Machao:そうですね。特にあのときメンバーから外さず、信じてくれたことは本当に感謝しています。自分のなかでは、人一倍努力しようと思うきっかけになった出来事でした。
――MachaoさんがDGWのオーダーを任されたのはいつからですか?
Machao:DGWに入った当初からですね。僕自身は、アマチュアチームのころからずっとオーダーをやっていたので、もともとオーダー枠として呼ばれた経緯もあったと思います。
オーダーは、良くも悪くもチームをすべて動かせてしまう立場。戦績を大きく左右させる存在なので、以前は負けたときに責任を重く受け止めすぎていました。なので、負けても責任を感じすぎないように、自分のメンタルを守る心構えをするように変えていったんです。
そうしたら、Season4が終わったあとの「Predator League」で優勝できたんですよ。しかも、僕らはシード権を持っていなかったので、オープン予選から出ての優勝でした。
さらに、そのあとの「PWI 2019」では、海外招待チームが活躍するなか、優勝の「Gen.G」に続く総合2位を取ることができて、それも自信につながりました。メンタルの持ちかた1つで、こんなに人って変わるんだと思いましたね。
1日10時間、チームの強さを裏付ける4人での練習量
――DGWは1年半以上、メンバーチェンジをせずに挑んでいます。Machaoさんから見て、DGWはどのようなチームだと感じますか?
Machao:DGWは、単なるチームメイトよりも、一歩踏み込んだところまで仲が良いチームだと感じます。しかも、メンバー全員の目標が高い位置かつ近いところにある。モチベーションも高く、だからこそ、ここまで一緒にやってこられたのかなと思います。
――チームの目標はメンバー同士で話し合っているのでしょうか?
Machao:話し合いもしますが、常に自分たちが目指すのは、目の前の大会における1位なんです。だから、現実的には程遠かったとしても、国際大会でも目指すのは1位。これはチームのなかで、暗黙の了解になっています。Melofoさんが目標を高く持つ人なので、良い意味で引っ張られていると思いますね。
僕がDGWに加入してすぐSeason3で優勝したときは、国際大会に出場できること自体に満足していた自分もいたんです。でも、実際に国際大会に向けて、チーム練習の予定を組んでいる段階で「あ、本当に勝つ気なんだ」と感じて。そこで改めて、プロとしての意識を持たせてもらったように思います。
――DGWは国内チームのなかでも特に、かなりの練習をしているイメージがあります。最近の練習スケジュールを教えていただけますか?
Machao:どこまでを練習と捉えるかにもよりますが、メンバー4人そろってプレイしているチーム練習の時間は、おそらく国内では頭ひとつ抜けて多いと思います。
最近はずっと大会が続いているので、必ずしも決まったスケジュールではないのですが、基本的に平日は、14時から17時半ごろまで韓国スクリムを4試合。そこから休憩を挟んで、19時から23時ごろまで、直近は国際大会に出ているので海外スクリムを5試合。さらに休憩を挟んで、チームの4人でランクマッチを回すなどしてから、だいたい深夜1時~2時くらいに解散します。
なので、スクリムだけで約7~8時間。ランクマッチを入れたら、1日10時間くらいはずっとチームで通話をつないでいる状態ですね。
――チームでの練習量が、DGWの強さを裏付けているように思えます。
Machao:そのレベルで練習しているからこそ、国内大会で負けたときの悔しさは計り知れないものがあります。結果が出なかったときは本当につらいですが、それでもやらずに負ける後悔よりはマシなので。
また、国内にあるPUBG部門のなかで、DGWは最も環境の整っているチームだと思います。フルタイムで選手活動に専念できる環境も、チームのサポートのおかげ。なので、それに応えなければなりません。
――そう考えると、日本で最もプレッシャーを抱えているチームとも言えるかもしれませんね。
Machao:Season5 Phase1もSeason6 Phase1も、最終試合で順位を抜かされてしまって、国際大会を逃したときの絶望感はすごかったです。努力って正しい方向にしないと報われないものだと思うので、自分たちがしている努力の方向が正しいのか、わからなくなったときもありました。