半導体デバイスに関する世界最大級の国際会議「International Electron Device Meeting(第66回電子デバイス国際会議:IEDM 2020)」がバーチャル会議形式で1月末まで開催された。今回のメインテーマは「Innovative Devices for a Better Future(より良い将来のための革新的デバイス)」であった。
基調講演としては、以下の3件のライブイベントが実施された。
- 将来に向けたロジック微細化(ベルギーimec CMOS技術担当SVPのSir Samavedam氏)
- 継続した微細化と先端コンピューティングシステムの実現に必要なメモリ技術革新(Micron Technologyプロセス開発担当SVPのNaga Chandrasekara氏)
- 半導体とAIと量子コンピューティングの共生(Samsung Advanced Institute of Technology所長のS.W.Huwang氏)
また、チュートリアル(教育的な講義)は、以下の6件のテーマで行われた。
- 量子コンピューティング(Leti)
- 最先端パッケージング(Intel)
- メモリ中心のコンピューティングシステム(ETH)
- イメージングデバイスとシステム(ソニー)
- 3nm以降のCMOS要素技術(imec)
- STT/SoT MRAM(磁気メモリ)技術とその応用(東北大学)
さらにショートコース(特定テーマのセミナ)は以下の2テーマに、IBMやTSMCなどから14件の講演が行われた。
- 次世代コンピューティング革命を実現するためのデバイス技術の新たな動向
- コンピュータ向けメモリ
加えて、次世代テーマに関する招待講演で構成されたフォーカスセッションでは、「5Gおよびその先の移動通信を可能にする技術」、「次世代インターコネクト(多層配線)技術」、「ワイドバンドギャップ技術を用いたIC設計」、「超低温エレクトロニクスのためのデバイス技術」、「エネルギーハーベスティング(環境発電)とワイヤレス送電」、「次世代設計・技術同時最適化」が取り上げられた。
このほか一般講演として、世界中から応募された580件の論文の中から採択率40%で選ばれた231件が発表された。ベルギーの独立系半導体ナノテク研究機関imecが27件(うち招待講演6件)の発表を行っており、先端半導体研究開発で世界を先導する存在感を示した。
3D DRAM目指した研究成果を発表したimec
IEDM 2020では、従来型メモリに代わるSTT-MRAM(スピン注入型磁気抵抗メモリ)、強誘電体メモリ、相転移メモリ、抵抗変化メモリといった次世代メモリならびにその応用に関する多くの一般講演が行われ、マイコンやMPU、SoCに低容量の次世代メモリを組み込む内容が目立った。
imecは、従来のDRAMの改良手法として、オフ電流が低いことで知られるIGZO-TFTを2つ実装し、ストレージコンデンサを使用しない新しいセルアーキテクチャとなる2T0C(2トランジスタ/0コンデンサ)を発表した。読み取りトランジスタの寄生容量がストレージとして機能するというもので、その結果、DRAMセルは3×10-19A/μmの低いオフ電流のおかげで、400秒より長い保持時間を示し、メモリのリフレッシュレートと消費電力を削減することが可能だという。
また、IGZO-TFTは、BEOL(多層配線)工程で作製されるため、セルの専有面積を減らせるほか、個々のセルを垂直に積層できるため、低電力で高密度のモノリシック3次元(3D)-DRAMメモリの実現につながると期待されるとしている。
この結果は、300mmウェハ上で最適化されたIGZOトランジスタ(ゲート長45nm)を用いて得られたという。
imecのプログラムディレクターであるGouri Sankar氏は、「保持時間が長いことに加えて、IGZO-TFTベースのDRAMセルは、現在のDRAMテクノロジーに比べて大きな利点がある。Siとは異なり、IGZO-TFTトランジスタは比較的低温で製造できるため、BEOLプロセスと互換性があり、メモリダイのフットプリントが削減される。さらに、BEOLで個々のDRAMセルをスタックできるので、3D-DRAMアーキテクチャが可能になる。これにより、いわゆるDRAMメモリの微細化の壁を取り壊すのに役立ち、DRAMメモリがクラウドコンピューティングや人工知能などの要求の厳しいアプリケーションで重要な役割を果たし続けることを可能にするだろう」と述べている。