一般消費財メーカー大手のP&Gはこのほど、これまで推し進めてきた環境への取り組みや今後の計画などを発表する「P&G環境サステナビリティオンライン発表会」を開催した。ゲストには、松岡修造さん、杉浦太陽さん、辻希美さんが登壇。発表会冒頭では、P&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長が開会の挨拶に続けて、同社の環境サステナビリティへの取り組みが紹介された。
P&Gの環境サステナビリティへの取り組みとは
P&Gでは長期的に取り組むべき重要な課題を世界共通のビジョン「Ambition2030」を掲げている。「Ambition2030」では、「製品ブランド」「サプライチェーン」「社会」「社員」の4つの分野にフォーカスを当てており、企業や顧客への価値を生み出しながら環境と社会にプラスになる取り組みを行っているという。
世界規模の活動としては、海洋プラスチックごみから容器を製造する世界初の試みや、再生プラスチックを無色化、無臭化、不純物除去し、高品質再生ポリプロピレンにするピュアリサイクル・テクノロジーが実践され、技術特許を取得している。
日本における取り組みでは、小売店などと協力し使用済みボトル等を消費者から資源として直接回収できる仕組みを構築し、消費者の意識改革を促している。回収した資源は、東京オリンピックの表彰台に生まれ変わるなど、再生資源として活用されている。加えて、再生プラスチックでフェイスシールドを作り寄付するなどの取り組みも行った。
消費者の反応としては非常に良いものがあったとし、"サステナビリティの観点から、ソリューションを提供してくれるものを買いたい"という消費者は8割にものぼったという。ブランドとしても、そのような消費者の声に応えて責任ある商品を提供するため、海洋プラスチックごみを再生したボトルでの商品販売、衣類用洗剤「ジェルボール」を使用することによる資源節約・節水への貢献など、さまざまな取り組みを実践していく。
また、製造拠点ついて、滋賀工場においては、水の再循環システムを構築することにより2019年以降、排水ゼロ実現。消費エネルギーに関しても、100%再生可能エネルギーへの移行を進めている。温暖化ガス排出の削減や、国内の3つの工場からの埋め立て地に送られるような廃棄物についてもゼロを達成しているという。
さらに、サステナビリティを達成するため、ゲームタイプのセルフ・ラーニング・プログラムを導入するなど、社員教育にも力を注いでいく。
そして今後の取り組みでは、社会に対してポジティブな貢献をしていくと宣言。脱炭素に向け、2025年までに再生可能エネルギー100%にするとし、消費者も直接参加できるスキームを活用してサステナブルな意識を啓発していくほか、製品ブランドを通して「責任ある消費」へのさらなる提案を続けていくとした。
2021年1月からは、単一素材の詰め替え容器を開発やアルミを使ったリサイクル可能なボトルなどを導入、これによりヴァージン・プラスチックを使ったボトルを世界で3億ボトルも削減できる。2021年秋には日本のヘアケア商品で導入していきたいとした。また、世界で初めて使用済み紙おむつの回収するシステムやカミソリ刃の回収なども日本で開始していくという。
ベセラ社長は、「P&Gは世界を変える力、未来を変える力をグローバルなスケールで、そしてテクノロジーを用いながら、これまでのパートナーシップと経験も活用して、ポジティブな影響を与えていきたい」と締めくくった。
ワークショップで学ぶ、環境サステナビリティ
発表会の後半には、ゲストとして元プロテニスプレイヤーでスポーツ解説者の松岡修造さんと、俳優の杉浦太陽さん&タレントの辻希美さん夫妻が登壇。環境サステナビリティについてのワークショップを展開した。
松岡さんは「環境について、少しでも想いを伝えられたら」と意気込んで登場。まずは、P&Gの環境サステナビリティにこれまでの携わってきた松岡さんが進行役となり、杉浦・辻夫妻がクイズで学んでいった。夫妻も「ダイビングをしていて清掃ボランティアなどにも参加しているので、ぜひ学んでいきたい」(杉浦)、「子どもの学校でも環境についての授業がある。子どもと一緒に学んでいるところ」(辻)と、興味深々。2人に"サステナ夫婦"になってもらうべく、問題が出された。
「Q1. 『サステナビリティ』とは、『持続可能性』ことである」「Q2. 『3R』は『リデュース・リユース・リラックス』である』という問題には、松岡さんの勢いに戸惑いながらも2人は正解(Q1は〇、Q2は×でリラックスではなくリサイクル)。
続いての問題、「Q3. 日本は1人あたりの使い捨てプラスチックごみ排出量が世界で5位以下である(2018年時点)」では、そうであってほしいと願いを込めて2人とも〇を選択。しかしながら、実際はアメリカに次いで世界第2位となっており×。日本人1人あたり32㎏/年で、世界全体で90億トンものプラスチックごみが生まれ、そのうちリサイクルされたのはわずか9%しかないという。「スーパーとかにある(リサイクルごみの)分別エリアを見ていても、人口の割には少ないと思う」(辻)、「2位はショック。今後、みんなで努力すれば変わるかも。自分も意識を変えたい」(杉浦)と、その実態に衝撃を受けていた。
次のワークショップではステージ上に、ヘアケア商品「パンテーン」のアルミボトル、カミソリ「ジレット」の替え刃、衣類用洗剤「アリエール」のジェルボールが用意された。そしてこれらの商品が、環境サステナビリティに関連しているかどうかを、2人には仕分けてもらった。2人は大いに悩みながらも、「ジレット」「アリエール」を関連するとして〇、「パンテーン」を関連しないとして×と選択した。ところが正解はすべて〇で、3製品とも環境サステナビリティに配慮されているものだという。
「アリエール」や「ボールド」で採用されているジェルボールは、配合されている水の量を85%ほど抑えることでコンパクト化し、パッケージのプラスチック使用量を削減。輸送も効率化されたことで二酸化炭素排出量の削減にもつながっている。ジェルボールはまとめ洗いにも最適なので、洗濯回数を減らし節水や節電にもつながっているという。
また「ジレット」は、現在5カ国で実施されている替え刃リサイクルプログラムを日本でも今年3月から開始。Webサイトから申し込むことで、回収ボックスが自宅に届き、使えなくなった替え刃やカミソリ本体をリサイクルできるようになるという。
「パンテーン」のアルミボトルは、ヨーロッパで先行発売されているもので、プラスチックから再利用可能なアルミボトルを採用。詰め替えのリフィルも、モノマテリアル(単一素材)に変えることでプラスチックの使用量削減を進めているという。
この結果に、辻さんは「努力して考えている結果を、生活する中で(消費者として)受け止めていきたい」、杉浦さんは「居心地のいい地球を守りたい、という欲にシフトチェンジできていると感じました」と感嘆していた。
そのほか、工場で採用している再生可能エネルギーによって発生する蒸気や温水が清掃や殺菌、空調、シャワーなどに活用されていることや、空き容器を再利用して「フェイスシールド」が作られていることなどが出題された。問題を通して「子どもたちは親を真似ていくから、親がしっかりしないと」と感じたという辻さん。「習慣になると子どももやると思うので、これが当たり前になる社会に進んでほしい」と、杉浦さんも同調した。
最後に、ゲストの3人は環境サステナビリティについての抱負を書くことに。杉浦さん・辻さん夫妻は「子供たちの未来のために! 環境サステナビリティについて"家族"で話し合おう!」と書き、興味を持つ、知ることから始めたい、と語った。松岡さんは「心の環境 持続する造(ぞう)」と書にしたため「深く考えすぎると難しくなってしまう。心の声にしたがって、自然に共有していくことが大事ですね」とコメントし、会を締めくくった。