年末になると、会社員を対象にした「年末調整」が行われます。一方、年が明けて2月中旬から始まるのが「確定申告」です。年末調整は会社員ならほぼ全員が対象となりますが、それと比べると、確定申告はさほどなじみがないものでしょう。

しかし、会社員であっても確定申告が必要なケースがあります。たとえば、年末調整では適用されない控除を申告する場合や、年末調整で申告し忘れた控除があった場合などです。特に、年末調整で控除を申告し忘れると、その分所得税が高くなる可能性があるので、確定申告で取り戻したいところです。本稿では、会社員でも確定申告するのはどのような時かまとめました。

  • 確定申告で取り戻せる控除は何?

年末調整とは

年末調整とは、1年間で本来支払うべき所得税と、毎月の給与や賞与から天引きされた所得税額を比べ、年間の所得が確定した年末に、その差額を調整するものです。毎月の給与から引かれている所得税は、「仮定の年収」に基づき計算されています。そのため、税金を多く納めている場合は還付金としてお金を返し、不足している場合は徴収金や追徴金として追加で納めてもらうのです。

こうした年末調整は、自営業の人が行う確定申告を会社が代わりに行います。給与所得が1カ所からしかない場合は、年末調整にて所得税額が確定するため、原則的に、確定申告の必要はありません。

ただし、会社員で給与所得が1カ所からしかなくても、確定申告しなくてはいけないケースや、した方が良いケースがあります。それは、どのような場合でしょうか。

会社員でも確定申告するケース

会社員でも自分で確定申告しなければいけないのは、主たる給与収入が2,000万円を超える場合や、副業などで給与所得以外の所得合計が年間20万円を超える場合などです。

一方、確定申告した方が良いのは、年末調整では適用されない控除を申告したい時などです。以下のような控除は、必ずしも申告の義務はありませんが、確定申告することで税金が戻る可能性があります。

<医療費控除>
医療費がたくさんかかった時に申告する「医療費控除」は、意外にも年末調整では行うことができません。医療費控除とは、自分もしくは生計をともにする家族の1年間(1月1日~12月31日)の医療費が10万円を超えた場合、確定申告により適用される控除です。所得によっては、年間の医療費が10万円に満たない場合あっても、医療費控除が受けられる場合があります。

<住宅借入金等特別控除(1年目のみ)>
住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン減税は、2年目から年末調整で手続きできますが、1年目だけは確定申告をする必要があります。住宅ローン減税は、ローンを利用して自宅の新築や購入、増改築などを行った場合に受けられます。

<雑損控除>
災害や盗難、または横領などによって資産に損害を受けた場合、雑損控除として一定金額の控除を受けることができます。雑損控除を受けるには、要件を満たしている必要があります。心当たりがあれば、国税庁ホームページにて詳細を確認しましょう。

<寄附金控除>
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに「特定寄附金」を支出した場合、所得控除を受けることができます。

近年話題となっている「ふるさと納税」も、寄附金控除のひとつです。ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付をすると、寄付額に応じた金額を所得税や住民税からそれぞれ控除できる制度です。そのうえ、実質的な自己負担額は2,000円で、寄付した地域の特産品などをお礼品として受け取ることができます。なお、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用している場合、確定申告の必要はありません。

このほか、年度の途中で退職し、年末までに再就職しない人も確定申告が必要です。また、退職所得を受け取る時、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人も、確定申告をしましょう。これらの場合、多くは税金が戻る可能性があります。

年末調整で申告漏れがあれば確定申告を

このほか、「年末調整で申告し忘れた!」という控除がある場合、実は、確定申告で取り戻すことができます。年末調整では、14種類ある所得控除のうち、前述の医療費控除と雑損控除、寄附金控除の3つ以外は申告できます。しかし、控除がたくさんあると、会社の提出期限までに書類を出せなかった、もしくは、後から控除の申告漏れに気づいた……なんてことが起こり得ます。

たとえば、

・生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書が見当たらず提出できなかった
・(給与天引き以外で)国民年金保険料や国民健康保険料などの社会保険料、iDeCo(個人型確定拠出型年金)の保険料を支払っているのに、保険料控除申告書に記入しなかった
・配偶者特別控除や扶養控除の申告を忘れた

などのケースが考えられます。このような申告漏れが生じても、勤務先に申し出れば「再年末調整処理」をしてもらえますが、期限は翌年の1月末までのうえ、手間のかかる作業を会社に再度お願いすることになってしまいます。そこで、年末調整で申告できなかった分は、自分で確定申告して取り戻しましょう。確定申告では、14種類の所得控除の全てを申告することができるからです。

年末調整で申告し忘れた場合は、翌年1月に配布される源泉徴収票をもとに行います。つまり、源泉徴収票に反映されていない分を、自分で確定申告することで取り戻すのです。

確定申告の期限は、例年3月15日までとなりますので、その日までに確定申告すればいいことになります。ただし、納め過ぎた税金を取り戻す「還付申告」は、この日が期限ではありません。還付申告の受付は、その翌年の1月1日から5年間です。つまり、控除を申告するだけなら、2025年12月31日までに行えばいいのです。

自分に当てはまる控除を確認しよう

会社員にとっては縁遠いイメージの確定申告。しかし、確定申告でしか適用されない控除があったり、年末調整のし忘れを取り戻せたりと、意外と利用する機会が多いかもしれません。

年末調整が終わってしまっても、「そういえば、申告していない控除があるかも」と思い立った人は、よく調べてみましょう。思いのほか税金が返ってくるかもしれません。