2021年は、平成仮面ライダーシリーズ第2作『仮面ライダーアギト』(2001年)の放送開始からちょうど「20年」を迎える節目の年である。
劇場映画『仮面ライダーJ』(1994年)以来、ひさびさの"復活"を果たした『仮面ライダークウガ』(2000年)は、子どもから大人まで幅広い年齢層から好評をもって受け入れられ、これを受けた"シリーズ第2弾"として『仮面ライダーアギト』が企画された。
「仮面ライダー誕生30年記念作品」と銘打たれた本作では、それまでのシリーズになかった試みとして、立場や性格がまったく異なる3人の"仮面ライダー"(アギト、G3、ギルス)それぞれを均等のウエイトで描き、彼らを中心に数多くのキャラクターが複雑に絡み合う"群像劇"のスタイルを採用している。
3人の仮面ライダーをはじめとする個性豊かなキャラクターたちの動きや、人間を襲う怪物"アンノウン"の恐怖、そして各回のストーリーに織り交ぜられたミステリアスな"謎"や"秘密"などが視聴者の心をつかみ、『仮面ライダーアギト』は高い人気を獲得。同時期のスーパー戦隊シリーズ『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年)とともに「イケメンヒーロー」ブームを巻き起こした。
放送開始20年を祝し、マイナビニュースでは『仮面ライダーアギト』で津上翔一を演じた賀集利樹にインタビューを敢行。俳優デビュー作となった本作への思いや、撮影にまつわる裏話の数々、そして「仮面ライダー」を愛する多くのファンへの感謝の気持ちを語ってもらった。
――『仮面ライダーアギト』は『仮面ライダークウガ』に続く平成仮面ライダーシリーズの第2弾ですが、賀集さんがオーディションを受けられたとき『クウガ』のことはご存じでしたか。
知っていましたよ。僕が関西から東京に出てきたのは2000年の夏ごろですが、事務所の社長が『クウガ』を観ていたことがきっかけで、入ったばかりの僕に次の「仮面ライダー」のオーディションを受けさせよう、と思ったそうなんです。東京に来て演技のレッスンを始めたばかりでしたが、初のオーディションで主役に選んでいただいたことになります。絶対に役を取るぞと意気込んでいたわけでもなく、構えることなく素のままで臨んだことが、翔一のイメージに合っていたのかな……なんて、今は思っています。
――翔一の髪型や衣装も、戦士というよりは普通の青年といったイメージがありましたね。
髪型は普段からあのままでした。事務所に入る前、サーファー向けの雑誌でモデルをしていたので、ずっとあんな感じだったんです。翔一が着ている服については、衣装さんと一緒に撮影所近くのお店で「こういうのにしましょう」という感じで選んでいました。時期によって翔一の衣装は変化していますが、だいたいはそのたびに探してきたもので、アウトドアブランドのフリースとか、動きやすくて楽な感じの服を選んでいました。
――G3(G3-X)/氷川誠役の要潤さん、ギルス/葦原涼役の友井雄亮さんと、仮面ライダーが3人登場することは事前にわかっていましたか。
最初は知らなかったんです。役が決まって、東映撮影所にご挨拶に行ったら、そこで仮面ライダーが3人だということがわかりました(笑)。僕と要は初期からちょこちょこ一緒になることがありましたけど、友井はわりと単独での芝居が多かったですよね。ギルスは孤独なライダーでしたから、過酷な境遇に置かれることがあって、かわいそうでした。ストーリー上で同じ場面に"変身前"の3人がそろうことって、そんなにないんですよね。いつ、どんな形で3人が集まったり、すれ違ったりするのか、その回の台本をもらって読んでみないとわからない。その点は、テレビを観ている方たちと同じ感覚で毎回の撮影をこなしていました。
――翔一を演じるにあたって、どのようなところに気をつけられましたか。
翔一は過去の記憶を失っていながら、それをあまり気にせずに生きているって設定でしたから、考えれば考えるほど難しかったですよ。記憶喪失っていうと、どうしても"重い"イメージをしてしまうんです。そんな状況で日常を過ごしていたら、絶対大変だろうと思うから、どことなく暗い雰囲気を持たせてみようと考えました。そうしたら「記憶喪失だけど、気にしないで明るく演じて」と指示されて、それがぜんぜん納得できなくて……。明るい青年と、記憶喪失に接点が見えなくて、自分の中でリンクしないんです。
そんな感じで始まったものですから、最初のころずっと違和感が残っていたんです。でも、何話か撮影をこなしていくうちに「もう翔一が記憶喪失だってことは気にせず、とにかく明るくやればいいんだ」と、自分の中で吹っ切ったところがありましたね。翔一が居候している美杉家のみなさんがアットホームな雰囲気を作ってくれたので、美杉先生(演:升毅)、真魚ちゃん(演:秋山莉奈)、太一(演:田辺季正)に助けてもらった感じです。