「もっと声色を明るくして」と上司に言われた経験がある方もいるでしょう。しかし、その「声色」という熟語について、正しい意味や読み方を把握している方は少ないのではないでしょうか。
実は「声色」には読み方が何通りかあり、意味や使い方もそれによって変わってきます。本記事では、さまざまな場面で「声色」という言葉を正しく使えるように意味や例文も紹介していきます。
「声色」の意味とは
「声色」の基本的な意味とは、「声の音色・セリフや声の調子を真似る芸」のことを指しています。読み方はそのまま読むと「こえいろ」ですが、この読み方は誤りであり、「こわいろ」と読むのが一般的です。読み方に関しては後ほどくわしく解説するので、使い分けられるようにしておきましょう。
「声色」の由来
かつては、セリフの声や口調を真似る意味で使われていました。元禄時代から、歌舞伎役者などの声や口調を真似る芸が発展していき、幕末には寄席芸にまで発展しました。始めは芸を指している言葉でしたが、その意味から口調や声の様子を表すようになっていきました。
「声色」の使い分け
「声色」は他の言葉との文脈からどのような意味なのかを判断する必要があります。ただ、芸の意味で使われることは現代においては少なくなってきているので、基本的には声の調子や様子・雰囲気という意味で解釈していいでしょう。
「声色」には3つの読み方がある
実は「声色」には3つの読み方があり、それぞれ意味も異なってきます。普通に読むのであれば「こわいろ」がメジャーですが、他の意味で使いたいときや、使われた際に正しく読めるようにしておきましょう。ただ、文面で読み方や意味の使い分けをしたい際にはとても難しくなります。その際は、他の文脈も一緒に見ることで判断していく必要があります。
「こわいろ」
一般的に高い頻度で使われる読み方です。「声の調子や声の音色・誰かのセリフや声を真似ること」を意味しています。
「せいしょく」
「せいしょく」と読む場合には、「ものを言うときの声や顔色・様子や態度・音楽と女性の魅力に関する楽しみ」を意味します。声色との使い分けが難しいですが、声だけではなく、様子や顔色なども示すので「こわいろ」よりも幅広い範囲での表現方法であると言えます。
「しょうしき」
「しょうしき」と読むシーンは非常に少ないですが、「仏語・感覚の対象となるもの(五感など)・六境のこと」を意味します。仏教用語で、専門的な言葉なので日常で使われるシーンはほぼないでしょう。六境というのは、人間の感覚や認識のよりどころとなる目や耳、鼻、舌、身、意に対応するそれらの対象の領域を示しています。つまり、色や声、香りなどのことです。
「声色」の類義語
「声色」の類義語として挙げられるのは、「こわいろ」「せいしょく」と読んだ場合の意味に近いものが多いです。つまり、声の様子やトーンといった意味を指す言葉が類義語として存在しています。
「声調(せいちょう)」は、「言語において意味の区別に使うための音の高低のパターン」のことを指します。これは、健康や気分によって変わるものであり、日々変わる可能性があります。「今日の収録の声調は最高でした」というように、その日の声の調子について表現したいときに使います。
「声つき(こわつき)」は、「声の様子や声の具合」を意味しています。これは生まれつきで先天的な特徴を示しています。「彼女の声つきは母親譲りのものです」といったように使い、遺伝的なものを表します。
「口調(くちょう)」は、「言葉の調子・文句の言い回し」を意味しており、「こわいろ」と読んだときの意味に最も近い単語です。「優しい口調で慰められた」を「優しい声色で慰められた」と言い換えても違和感がありません。
「語勢(ごせい)」は、「話している言葉の勢い」を意味し力強かったり、荒々しかったりする場合に使われることが多い言葉です。「語勢を強めて詰め寄った」などと使い、「強い声色で詰め寄った」とすると声の迫力が欠けるような印象を受けます。
「声色」の英語表現
「声色」を英語で表現する場合には、意味ごとに使い分ける必要があります。「声の調子や音色・様子」などを示す場合と、「声真似をする・セリフを真似る」といった意味で使いたい場合に分けて解説していきます。
「声の調子や音色・様子」という意味で使いたい場合には、「tone」という単語を使うのがいいでしょう。例えば、悲しい様子の声と表現するのであれば「a sad tone」というように形容詞と一緒に使うことで、どんな様子の声なのかを表現することができます。また、「a tone of voice」とすることで、より調子や音色について言及しているニュアンスになります。
「声真似をする・セリフを真似る」といった意味で使いたい場合には「mimic」という言葉を使うのがいいでしょう。「mimic」は、「真似る・口真似する・模倣する」といった意味をもちます。声色を使うのがうまいと表現したい場合には、「be good at mimicry」と組み立てるのが適切です。
また、誰かの声真似をしている場合には「voice」と組み合わせて使うのもいいでしょう。「mimic somebody’s voice」とすることで、誰かの声色を使っている・物まねしている様子を表現することができます。
「声色」を使った例文
では、「声色」を使う際にはどのような言葉と組み合わせるのが適切なのでしょうか。読み方ごとに使い方が変わってくるので、どの読み方で使うのが正しいものなのかも紹介しながら、解説していきます。
「声色を変える」
「こわいろ」と読むのが適切な例文です。「声色を変える」というのは、厳しい雰囲気の声や、優しい雰囲気の声などいろんな雰囲気の声を使うことを指します。声の調子を変えながら話すことを、表現したいときに使います。「あの子は人によって声色を変える」のように使うことができます。
「怖い声色」
こちらも「こわいろ」と読むのが適切な例です。声の調子が怖い感じがするといった様子を表現していて、「怖い」の部分を入れ替えるだけでいろいろな表現方法ができます。例えば「優しい声色」や「不安になる声色」などどんな印象を受けたのかによって、入れ替えて使ってみるのがいいでしょう。
「声色を改める」
この場合は「せいしょく」と読むことが適切です。「せいしょく」は声の調子や雰囲気だけでなく、その人の表情や様子まで指しているので幅広い範囲で雰囲気のことを表現したいときには「せいしょく」という読み方を使うのがいいでしょう。「声色(せいしょく)を和らげる」など、態度や行動を示す言葉と使うのが一般的です。
また、音楽や女性の魅力を楽しんでいるような意味で使いたい場合には「声色(せいしょく)にふける」のように使うのが適切です。
「声色を聴く」
この場合には「しょうしき」と読むのが適切でしょう。仏教用語を示す「声色(しょうしき)」なので、あまり使うシーンはないかもしれませんが、もしこの読み方の意味で使いたいときにはお経に似た意味で使うのがいいでしょう。また、この意味は文学作品で使われることもあるので、その際は周りの文脈から判断しましょう。
「声色」を読み方ごとに使い分けよう
「声色」には3つの意味があり、読み方ごとに意味が異なります。それにともなって使い方も分かれてきます。ただ、基本的には「こわいろ」と読むことが多いので、それ以外も意味や使い方に関しては軽く理解しておくくらいで事足りるでしょう。
文章になった場合には、その前後の文脈から推測して、読み方ごとに意味を解釈する必要があるでしょう。