自動車業界にとっては激動の一年となった2020年だが、年間を通してどんな車が売れたのだろうか?一般社団法人 全国軽自動車協会連合会のデータをもとに、2020年(1~12月)の軽自動車の国内新車売り上げトップ15を紹介しよう。
新型コロナウイルスの感染拡大によって世界が大きく様変わりした2020年。北米や欧州に比べれば日本国内の感染者数や死亡者数は少ないものの、上半期、国内の自動車販売は大打撃を受けた。
第二波が落ち着いてきた9月以降は回復傾向に転じたが、先行きが見えない状況のためか、ミドルサイズ以上の車よりも手頃な価格のコンパクトカーに人気が集まったようだ。また、もともとコンパクトカーの購入を検討していたユーザーが、更にコストパフォーマンスの高い軽自動車に流れたというケースもあっただろう。
2020年軽自動車人気車種、トップ15
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 195,984 |
2 | スズキ | スペーシア | 139,851 |
3 | ダイハツ | タント | 129,680 |
4 | ダイハツ | ムーヴ | 104,133 |
5 | 日産 | デイズ | 87,029 |
6 | スズキ | ハスラー | 80,114 |
7 | ダイハツ | ミラ | 73,462 |
8 | 日産 | ルークス | 72,820 |
10 | ホンダ | N-WGN | 69,353 |
9 | スズキ | ワゴンR | 66,061 |
11 | スズキ | アルト | 63,371 |
12 | ダイハツ | タフト | 42,942 |
13 | スズキ | ジムニー | 38,056 |
14 | 三菱 | eK | 33,200 |
15 | ダイハツ | キャスト | 20,701 |
※通称名については同一車名のものを合算して集計(アルト、ミラ、ムーヴ、タント、eK、プレオ、N-BOX、デイズ、ピクシスなど) 例)デイズルークスはデイズとして、2020年3月発売のルークスについてはルークスとして集計
■1位:ホンダ「N-BOX」
絶対王者のホンダ「N-BOX」。さすがにコロナ禍では、前年の約25万台には届かなかったものの、その人気はまだまだ健在。現在の軽自動車で人気のモデルは広大な室内を売りにした「スーパーハイトワゴン」だが、その中でも「N-BOX」は、ホンダの特許技術である「センタータンクレイアウト」を採用することで、より広々とした車内スペースを実現している。
現行モデルは2代目となるが、大成功を収めた初代モデルの良さはそのままに、使い勝手の良さや各部の質感を高めており、もはや軽自動車のレベルを超えた仕上がり。更に安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車に導入するなど、時代が要求する機能をしっかり備えている。
■2位:スズキ「スペーシア」
ダイハツと軽自動車の総販売台数を長年競ってきたスズキのスーパーハイトワゴンが「スペーシア」。先代モデル「パレット」から、燃費や室内スペース、軽量化などの大幅改良を機に2013年に改名したが、すっかりその名前も定着した。
ライバル同様、子育て世代のファミリーにとって使いやすいことを徹底したパッケージだが、マイルドハイブリッド採用のエンジンはパワーと燃費も両立。シンプルなベーシックモデルの他、大ヒットした「ハスラー」同様のSUVタイプ「スペーシア ギア」や、大型グリルやメッキパーツを多用した「スペーシア カスタム」もシリーズに加えている。
■3位:ダイハツ「タント」
スーパーハイトワゴンのパイオニアとして、後発の「N-BOX」や「スペーシア」に負けられないのが「タント」。
ダイハツ版「TNGA」と言える「DNGA」導入で、ボディからエンジンまで大幅な性能向上を果たし、17種類の予防安全機能「スマートアシスト」も装備。最大の特長は、唯一無二である前後ピラーレスドアの「ミラクルオープンドア」と、前席ロングスライド機構によるウォークスルーによって乗降や室内移動のしやすさを実現している点だろう。こちらもライバル同様、スポーティなエクステリアのカスタム仕様がある。
■4位:ダイハツ「ムーヴ」
「ムーブ」は流行りのスーパーハイトワゴンより控え目な車高に、後席ドアも一般的なヒンジ型を採用したトールワゴン。同社「タント」のようなカラクリ仕掛けはないものの、大人4名乗車でも十分なゆとりと走行安定性を備えるなど、車としてのバランスを重視した正統派だ。
ダイハツは長い歴史を持つこのブランドを大切にしており、より完成度を高めた「ムーヴ カスタム」や、VWバス風のエクステリアと後席スライドドアを持つ「ムーヴ キャンバス」という女性ユーザーに人気のモデルも揃えている。
■5位:日産「デイズ」
「デイズ」「デイズルークス」「ルークス」という日産の軽自動車ラインナップは、現在はトールワゴンの「デイズ」とスーパーハイトワゴンの「ルークス」で仕切り直しに。どちらも日産が誇る運転アシスト「プロパイロット」や、駐車支援や事故防止の安全装備も充実。まだまだ販売台数ではトップ3に及ばないが、R35型「GT-R」を担当したエンジニアも開発に加わっており、その走りの良さは日産のアイデンティティである「Vモーショングリル」に恥じないものだ。
4つの「N」を証明した「N-BOX」は乗用車全体でもNo.1。ライバルの2モデルも好調
2020年は軽自動車の王に君臨している「N-BOX」が約19万5千台を売り上げ、同じスーパーハイトワゴンの「スペーシア」や「タント」を寄せ付けない結果となった。12月はマイナーチェンジ予告で若干台数を減らしたものの、それでも単月でトップを譲ることは一度もなかった。
今や「N-BOX」は日本一売れている車。自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表したデータでは、2020年で一番売れた登録車(小型及び普通乗用車)はトヨタ「ヤリス」の約15万台だが、これを4万5千台以上引き離している。ホンダNシリーズの「N」という文字は“NEW”“NEXT”“NIPPON”“NORIMONO”の頭文字をコンセプトに掲げたものだが、それが有言実行されたと言えるだろう。
また、「N-BOX」だけではなく、2位や3位でも「スペーシア」や「タント」は登録車の「ライズ」、「カローラ」より1万台以上多く売れている。街中でもスーパーハイトワゴン達の多さに気がつくはずだ。
軽自動車は税金を含めた維持費の安さが魅力だが、今やかつての“安い足グルマ”ではなく、内外装の作り込みはもちろん、カメラやセンサーを活用した安全機能や、運転サポートなどの最新性能が導入されている。一昔前の軽自動車しか知らない人は、一度ディーラーに足を運んでみてはいかがだろうか?