年収850万円は高所得者の部類に入るため、贅沢な生活ができるとイメージする方が多いと思います。ただ、実際はここから税金や社会保険料などが引かれていくため、毎月の手取り額がいくらになるかをイメージしにくいかもしれません。

そこで本記事では、年収850万円の方の一般的な手取り額や給与所得者全体における割合、貯金額、生活レベルなどについて紹介します。

  • 年収850万円の手取りはどのくらい? 

    年収850万円の手取り額や税金、給与所得者全体における割合、生活レベルを紹介します

年収850万円の割合

まずは、個人で年収850万円を稼ぐ人の割合について考えてみましょう。

国税庁による「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると年収「800万円超900万円以下」という分布に属するのは、給与所得者5,245万人のうち男女合わせて約145万人です。割合にすると2.8%です。

年収800万超でみると9.2%となっています。800万円超900万円以下の細かな内訳は不明ですが、少なくとも年収850万は全給与所得者中の上位10%以内に属することになります。

同調査によると、年間を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は433万円(男性532万円、女性293万円)となっています。このデータから見ても、年収850万円という収入は、現代日本においてかなり収入が多い方に分類されることがわかるでしょう。

世帯年収850万円の割合

続いて、世帯年収における年収850万円の割合についても確認していきましょう。厚生労働省による「2019年 国民生活基礎調査」の「各世帯の所得等の状況」によると、2018年の世帯年収「800万円以上900万円未満」の分布は4.9%です。世帯年収が900万円以上の世帯の割合は16.1%となっています。

「各種世帯の所得等の状況」によると2018年1月1日から12月31日までの1年間の全世帯平均所得は552.3万円となっています。全世帯平均の数字には高齢者世帯(312.6万円)も含まれていますが、最も所得の多い「児童のいる世帯」でも745.9万円となっており、世帯年収850万円はこの金額を100万円以上上回っています。

年収850万円の手取り

手取り額はボーナスの有無や扶養家族の人数などによっても異なりますが、大まかに計算すると、年収850万円の場合、毎月の手取り額は約45万円となります。年間では約540万円となります。

年収850万円の税金

一般的な会社員は、年収から以下の税金が引かれます。

  • 所得税
  • 住民税
  • 厚生年金保険料
  • 健康保険料
  • 雇用保険料
  • 介護保険料(40歳以上限定)

このうち、所得税は収入によって税率や控除割合が変わります。所得税は累進課税のため、所得額が上がるほど段階的に税率は高くなります。以下に一覧をまとめました。

【所得税率】

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

年収850万は「695万円超900万円以下」に該当するため、税率は23%です。

  • 年収850万円台の人生設計

    年収850万の手取りや税金を紹介しました

年収850万円の生活レベル

ここからは年収850万円の生活水準について掘り下げていきます。

年収850万円の貯金額

年収850万円の場合、毎月どのくらいの貯金ができるのが理想なのでしょうか。貯金についても考え方は人によって異なりますが、一つの目安となるのが「手取り月収の20%」です。

前述の通り、年収850万円の場合毎月の手取りは約45万円ですので、その20%である9万円以上が理想的な貯金額となります。

年収850万円の家賃

家賃については立地や家族の人数などによってもかなり開きがあります。同じ広さや構成の部屋であっても都心と地方では価格に何倍もの差が出るケースもありますので、一概にいくらが適正価格であるとは断言できません。

しかし、年収をベースにどのくらいの家賃が適正なのかを考えると、年収の25%、または手取り月収の30%が目安となります。

年収850万円の25%は約212万円で、これを12カ月で割ると毎月17~18万円です。手取りベースの場合、45万円の30%で13~14万円となります。手取り金額はボーナスの有無などによっても異なりますので、年収850万円ならば、適正な家賃は13~18万円であると言えます。

年収850万円の住宅ローン

現代日本の平均年収を大きく上回る年収850万円であれば、住宅ローンも特に問題なく利用することができるでしょう。そのため、住宅は賃貸ではなく、一軒家やマンションの購入を考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで気になるのが、どのくらいの額までローンを組むことができるのかという点です。

住宅ローンを組む際に一つの目安となるのが「年収の5倍」という数字です。年収850万円の5倍は4250万円です。この額のローンであれば無理なく返済することができるでしょう。

同様に、借り入れ可能な限界額は、一般的に「年収の約10倍」と言われているため、総額8000万円以上のローンを組むことができる可能性もあります。

しかし、当然ながら借入額が多くなると毎月の返済額が大きくなったり、返済期間が長くなったりしてしまいます。いくら収入が多くてもローンの返済負担が大きくなると生活を圧迫することになりますので注意が必要です。

年収850万円の教育費

教育費のうち、特に負担が大きいのが学費です。文部科学省による「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によると、私立大学の場合大学入学1年目に必要な費用の平均は約136万円となっています。2年目以降も授業料などで100万円以上が必要となってくるため、4年制大学になれば卒業までに500万円近くかかる計算になります。

年間100万円という額は年収850万円の場合、手取りの2割にも満たない額ですので問題なく支払えるでしょう。もちろん、大学の学費は学校や学部などによっても大きく異なります。学資保険や場合によっては奨学金なども活用することで、子供を希望の進路へと進ませることができるでしょう。

  • 年収850万円台の生活水準

    年収850万円の生活レベルを紹介しました

年収850万円の人生設計

最後に年収850万円の方の将来設計について考えていきましょう。

世帯収入を増やすには

世帯収入を増やすのであれば、共働きがもっとも手っ取り早い方法です。子供の手がかかるうちはどちらかが仕事をセーブして、ある程度の年齢になったらフルタイムに復帰して世帯収入を増やすという方法もあります。

特に老後の貯金に不安を感じているのであれば、ある程度の年齢になってからでも世帯収入を増やすことを考えてみましょう。

老後に必要な貯金額

老後に必要な貯金額にもさまざまな考え方があります。年収850万円であれば毎月10万円単位での貯金も問題なくできるかと思いますので、年間で120万円以上の貯蓄もみえてきます。

たとえば、40歳で年収850万円に到達し、毎月10万円貯金することができれば、それまでの貯金がゼロであったとしても、60~65歳の定年までに2,000万円以上の貯蓄することができます。


年収850万円は現代日本の給与所得者の中でもかなり上位の収入にあたります。そのため、ある程度ゆとりを持った生活を送れるでしょう。

しかし、長い人生について考えるのであれば、しっかりとした将来設計は欠かせません。今回ご紹介したポイントを踏まえて将来のことをしっかり考えてみましょう。