2001年の販売から20年目を迎え、累計販売本数150億本を突破したキリン 氷結シリーズ。「みずみずしい果汁感とスッキリした爽快感」にこだわって商品開発を続けてきたメガブランドが2020年10月にリリースしたのは、甘くない飲み口の「キリン 氷結無糖 レモン」だ。糖類や甘味料不使用で甘くなく、レモンの爽快な味わいが楽しめるという。

12月31日時点の着地は当初計画の約2.8倍である183万ケース(250ml×24本換算)と快進撃を続ける「キリン 氷結無糖 レモン」だが、どんな消費者に受け入れられているのか。

開発に至った背景や味のこだわりをキリンビール マーケティング本部でブランドマネージャーを務める間木 研吾氏に伺った。

宅飲みにシフトしたwithコロナ時代、食中に飲むチューハイとして開発

レモンチューハイやレモンサワーの人気が高まって久しいが、一方でビール類を好んで飲む層は、これらのアルコールを敬遠する傾向があるという。キリンが独自に行った調査によると、その理由として大半が「ジュースっぽさ」や「食事に合わない」とする甘い飲み口を挙げたという。

この障壁をクリアすれば、RTD(缶チューハイや缶カクテルなど、買ってすぐに飲めるお酒)がビールを飲用する人達の選択肢にも入ってくる。そこで新たに開発されたのが甘くない「キリン 氷結無糖 レモン」だった。

  • キリンビール マーケティング本部 マーケティング部 RTD類カテゴリー戦略担当 キリン 氷結 ブランドマネージャー 間木 研吾氏

これまで外で定常的に飲酒をしていた人が、緊急事態宣言を機に宅飲みにシフトしたwithコロナ時代。間木氏はニーズの変化について、「お酒の消費者のボリュームゾーンは40~50代。この世代はお酒を飲み始めた頃に『キリン 氷結』が発売開始されるなど、身近にRTDがある世代なんです」と話す。

20年10月に行われた酒税法改正の影響も後押ししたという。前出の調査では、新ジャンルの増税を機に税率の変動がないRTDへのユーザー流入も確認できていたそう。「甘すぎるのは嫌だけど、缶チューハイは飲みたい。こうした甘くないものを求める人達に向けて開発したのが、今回の『キリン 氷結無糖 レモン』でした」。

「糖類を使わない」というと、同ブランドでは「キリン 氷結 ZERO」のラインナップもある。しかし、こちらは甘味があり、カロリーゼロの健康意識の高まりに応える商品なのに対し、無糖レモンは食事の時に飲むアルコールとしてすっきり飲めるチューハイを目指した。

「キリン 氷結」ブランドが大切にしていること

特に氷結ブランドが大切にしてきたのは、果実のみずみずしいおいしさだ。開発にあたり、重要視したのはおいしさの両立だと間木氏は語る。

「ただ甘くない、味が薄いというだけのおいしくないチューハイを作っても意味がありません。氷結は果実のおいしさや爽やかさが支持されてきました。そういうブランドから出す無糖だからこそ、ユーザーの期待に応えられるよう、糖類や甘味料を使わず果実味がしっかり感じられるバランスにこだわりました」。

また、「キリン 氷結無糖 レモン」は7%と4%、2種類のアルコール度数がある。同じ商品なのになぜ複数の度数があるのか、それにはこんな理由があった。

「購入する時に、最初の選択の分岐となるのが"アルコール度数"です。度数のラインナップがないと、ユーザーの気分にマッチするものが減ってしまい販売機会の損失に繋がります。しっかりと飲み応えを感じたい人には7%、軽やかに飲みたい人には4%と飲用シーンに合わせて選べるようにしました」。7%はクセのないウオッカにレモンをひと搾りしたような爽快感、4%は果実感をスッキリと楽しみたい人におすすめだという。

食事に合わせることを想定しているだけあって、多様な好みとニーズを満たす巧みなバリエーションだ。

無糖の文字を際立たせ、シズル感を訴求したパッケージ

キリン 氷結シリーズといえば、青と銀色をクロスさせ、果実のイラストを目立たせたパッケージデザインが特徴的だが、「キリン 氷結無糖 レモン」従来とは異なるデザインを採用。それにはこんな意図があるという。

「試行錯誤を経て、これまでの氷結シリーズで大事にしたこともあれば変化をさせた部分もあります。テレビCMでは俳優の高橋一生さんが「なんでいままでなかったんだ」とつぶやくように、これまでなかった"無糖"を訴求することを重視しました」。

その結果「人工甘味料不使用」で「すっきり」を直感的に感じてもらえるよう、氷結のロゴの下に大きく"無糖"と文字を配置。真下にはキリッと冷えたグラスのイラストでシズル感を添え、無糖のおいしさを視覚的にアピールした。

果実を全面に配している他社のチューハイやレモンサワーがずらりと並ぶ店頭で見ると、確かに独自の存在感を放つ。消費者の関心をひきつつ手を伸ばしたくなるパッケージといえるだろう。

数字的な裏打ちが、大きな自信になった

「キリン 氷結無糖 レモン」は、こうした市場ニーズにピタリとハマり、冒頭でも述べたとおり当初打ち立てた売上目標を大きく超える成果を達成した。すでに多くのファンを獲得し、手応えも感じているという

では短期で結果を出した要因を、どう分析しているのだろうか。「想像以上に気に入ってもらえており、リピーターとして飲まれている方も多いようですね。飲用者のアンケート結果では"飲むチューハイはこれ1本にします"、"今後もリピートします"といった声もあり、しっかり愛していただけていると実感しています」。

「キリン 氷結」20周年、ユーザーのニーズに寄り添うブランドに

「無糖」でさらに新たなジャンルを開拓する「キリン 氷結」シリーズだが、20周年を迎えたここからどのような戦略を取っていくのだろうか。

「今後もユーザーが飲みたいもの、求めているものに寄り添いたいですね。レモンのチューハイ市場は伸びており、基幹フレーバーとして支持される『キリン 氷結 シチリア産レモン』も好調です。また、フレーバーの幅広さも氷結の特徴です。"今飲みたいもの"にしっかり注力し、これからも氷結らしいみずみずしい果実の美味しさを提案していきます」と間木氏。

また、新型コロナウイルスの影響によって、家で過ごす時間が大幅に増えた現在。家で飲むアルコールの選び方にも変化があったという。間木氏は消費者の意識の変化をこう捉えている。

「スーパーやコンビニなどの店頭で購入する時に"何を飲もうかな"と、飲むお酒の種類を気にする傾向があるようです。これまでお店でアルコールを飲む時は"とりあえず、これ"と頼む人が大半で、お酒の銘柄を指定するわけではありませんでした。自宅でお酒を飲む機会が増えたコロナ禍は、改めて楽しいお酒の時間というものを見つめ直すきっかけになったのかもしれません。購入時にその商品がどんな価値を自分に与えてくれるのかを、より重要視するようになったと感じています」。

消費者行動が変わったなかで圧倒的に支持された「キリン 氷結無糖 レモン」だが、最後に今後掲げる目標について質問をぶつけてみた。

「飲んだ方にリピートいただいている結果となり、予想を超えて味が高く評価されていることは大きな自信になりました。すぐに新しいフレーバーを投下するのはなく、まずはしっかりと育てていきたい。まだ飲んでいない人や、甘くないチューハイを求める人に向けて選んでいただく、手にとっていただくきっかけをこれからどんどん作っていきたいですね」。

ただ無糖というわけではない、豊かな果実味と食事に合うスッキリとした飲み口の両立に挑んだ「キリン 氷結無糖 レモン」。その唯一無比ともいえるおいしいバランスに魅了される人はまだまだ増えていきそうだ。