突然ですが「版図」という言葉はご存知でしょうか? 歴史小説や大河ドラマなどで目にしたことがあるという方も少なくないかもしれません。ぱっと見ただけでは読み方のわからない難読漢字のひとつですが、会話の中で取り入れるだけで知性がアピールできる言葉ですよ。今回は「版図」の読み方や意味、使い方をご紹介します。
版図とは?
版図とは「国の領土、領域」という意味の言葉です。「はんと」と読みます。主に戦国時代など領土を戦いで奪い合っていた頃に使われる言葉なので、現代で耳にすることは少ないかもしれません。しかし、歴史小説や時代劇などで頻繁に登場します。戦国時代、大名の領土はそのまま地位を影響力の強さをあらわしていました。そのため版図という言葉は「勢力範囲」という意味でも使われます。
版図の「版」は「板」という意味や、「印刷に用いるために彫った板」「印刷すること」などを指す言葉です。さらに「文字を書くための木の札」という意味もあります。木の札は昔人々の住居をあらわす戸籍簿としても使われていたため、転じて「戸籍」という意味もあります。版図の「版」はこの「戸籍」という意味です。「はん」「ばん」と読みます。
「図」は「ず」と読みます。「ものの状態やかたちを描いたもの」や「点・線などがある待って構成しているかたち」「物事の様子」などという意味を持っています。他にも意味はありますが、「版図」では「物事を書き表したもの」という意味で使われています。「地図」の「図」と同じ用法だとおさえましょう。
つまり「版図」とは「戸籍(版)をあらわしたもの(図)」です。漢字の意味を照らし合わせれば、今まで聞いたことがなかった言葉も簡単に覚えることができます。
版図の使い方
次に、版図の使い方をご紹介します。 版図は主に「版図を広げる」や「版図を拡大する」のように使われています。「版図」自体が物事の面積を示す言葉なので、このように広さにちなんだ言葉とあわせて使われています。海外の王や戦国武将など、歴史に関する場面で使われることが多い言葉です。
図を「と」と読む言葉
「版」も「図」も簡単な漢字ですが、「版図」となるとすぐ「はんと」と読める方は多くありません。「はんず」などと間違えてしまうこともあります。このときもっとも間違えやすいのが「図」の読み方です。
しかし、「図」を「と」と読む言葉は身の回りにたくさんあります。「図」が「と」と読むことを頭にいれることができれば、「版図」も間違えずに読むことができそうですね。次に「図」を「と」と読むみなさんにとって身近な言葉をご紹介します。
図書
まずはじめにご紹介するのが「図書」です。「図」を「と」と読むと聞いたときに最初に思い浮かぶ言葉かもしれません。ご存知の通り、「書籍、本」という意味の言葉です。ひとくちに本といっても「書籍」「書物」「図書」とさまざまな言葉があります。
どれも同じ意味ですが、実は広告やコードの有無、役割などで厳密には分けられています。中でも図書は「知識を得るために作られた本」という意味合いが強いようです。そのため学校にあるのは「図書室」と呼ばれているのですね。余談ではありますが、覚えておくと雑学として自慢できるかもしれません。
意図
次にご紹介するのが「意図」という言葉です。「いと」と読み、意味は「何かをしようとするもくろみ、思惑」のことを指します。「目的を持ってわざとそうすること」を「意図的」ともいいます。「相手の意図がわからない」や「意図的にわかりやすく書いている」などのように使います。
壮図
「壮図」という言葉はご存知でしょうか。「そうと」と読みます。「立派で規模の大きな計画」という意味です。「壮大」な「書き記したもの」と覚えておくといいでしょう。「あの壮図には君も必要不可欠だろう」のように使います。
このように読み方の難しい言葉でも同じ読みをする言葉を集めてみると、頭の中で簡単にイメージすることができ、間違いを防ぐことができます。さらに似ている読み方をする言葉の意味を一つひとつ確かめることでさらなる語彙力アップをはかることができるでしょう。
版図の類義語・英語表現
次に、版図の類義語と英語表現をご紹介します。類義語を知ることで一つの言葉を豊かに言い換えることができるようになります。また、英語表現もおさえておくことで海外の本を読むときやドラマ、映画を見るときに役立つでしょう。
版図の類義語
版図の類義語は「勢力範囲」や「縄張り」「支配圏」や「テリトリー」が挙げられます。「領土」や「島」も類義語のひとつです。その人の勢力の及ぶ範囲という意味をあらわす言葉や、おさめている土地という意味を持っています。現代では「版図」を使うシーンはなかなかないので、「領土」や「勢力図」と言い換えると周りの人にも伝わりやすいかもしれません。
版図の英語表現
次に、版図の英語表現をご紹介します。版図を英語に訳すと「territory」となります。「テリトリー」として日本でも使われている言葉なので、覚えやすいですね。「He conquers territory.」といえば「彼は版図を拡大する」となります。
「版図」を使った例文
次に、版図を使った例文をご紹介します。なかなか会話の中で使う機会は少ない言葉ですが、歴史ドラマのあらすじを紹介するときなどに取り入れるとかっこいいですよ。小説を読んだり、映画を見たりするときにも役立つでしょう。
「その戦いで版図を日本中に広げることとなった」
版図は主に武将などの勢力範囲を描写するときに使われています。歴史ものの小説では「版図を〇〇まで広げることとなった」という文章を目にすることができるでしょう。例文では、その人の領土が日本全体まで広がった、つまり日本を統一したという意味をあらわしています。
「新たな国を版図に加える」
版図は主に「版図を広げる」「版図を拡大する」のように使われます。しかし、戦いなどを通して国をまるまる一つ勢力に加えることになった場合はこの例文のように「版図に加える」という言葉を使うこともできます。
「この時代の最大版図を築き上げた王である」
この例文のように、「最大版図」という言葉を目にすることもあるかもしれません。これは言葉の通り「もっとも広い勢力圏」という意味です。今回の例文では、その王が時代の中で一番大きな権力を手にしたことがわかります。
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「版図」は「はんと」と読み、「領土・勢力圏」という意味を持つ言葉です。言葉の性質上現代ではあまり使われませんが、歴史をモチーフにした小説やドラマなどに出てくることもあるでしょう。なかなかぱっと一度で読むことはできない言葉ですが「図書」や「意図」など同じように読む言葉をあわせて知ることで覚えやすくなります。
歴史小説のように壮大なものではなくても、会社の派閥争いや家庭内での強さをあらわすときに「版図」という言葉をさらりと混ぜるとユニークでいいですね。漢字の意味や類義語なども使って、さらに語彙力を高めていきましょう。