達観とは本質をしっかりと見通し、常に落ち着いている心情を意味する日本語です。仏教用語でもあり哲学的な意味も強い言葉です。この記事では、達観の使い方と似た言葉との違い、さらに英語での表現について、例文も交えて分かりやすく解説します。
達観の意味
「達観」には2つの意味があります。1つは「全体の情報をよく見通し広く大きな視野を持つこと」、もう1つは「真理や道理を悟り何事にも動じない状態」です。
そのため「達観している人」と言えば、落ち着いている、冷静であると言う印象を受けます。
しかし、前後の文脈によっては、上から目線である、感情が良くわからない、冷たい、などネガティブな表現として使われることもあるため注意が必要です。
達観の使い方と例文
「達観」という言葉には、さまざまな使い方があります。正しい意味を理解して使わなければ、相手に思わぬ誤解を与えてしまう可能性もあります。
実際の例文を参考に使い方を覚え、正しく使えるようにしておきましょう。
達観する
達観の使い方として代表的なものが「達観する」という表現です。
例としては「人生を達観する」や「時勢を達観する」などです。 何が起きるかわからない人生や時勢に対して、「真理や道理を悟り何事にも動じない状態」になっている様を表現しています。
達観した考え
達観した考えとは、「広い視野を持った考え」という意味になります。将来までを見据えて物事を捉え、全体を把握できる考え方に対して使われます。
「達観した考えを用いて、大切なことを決めるべきだ」とか「一つの意見に偏らずに、もっと達観した考え方で捉えよう」といった使い方をします。
達観の境地
「達観の境地」とは、何事にも動じない「ある段階に達した心境」に達していることを意味します。
「さまざまな苦難を越えて達観の境地に達した」「若くても達観の境地に至る人もいる」など、些細なことでは動じない方などに使うことが多いです。
達観視する
「達観視する」は、達観した視野という意味で先を見通している様を表現します。
達観すると似ていますが、「視」という漢字が使われているため「視野」という意味合いが強くなっています。そのため「彼は若くして将来を達観視している」「先生は世界情勢を達観視した考え方を持っている」というように、先を見据えた表現となります。
達観と類語とそのニュアンスの違い
「達観」には、似た意味を持つ言葉がいくつかありますが、使用できる場面やニュアンスには違いがあります。
ここからは、達観に似た言葉としてよく使われる「俯瞰(ふかん)」と「諦観(ていかん)」について解説していきます。
達観と俯瞰の違い
「俯瞰」には「高いところから物事や情勢を見下ろす、全体を上から見下ろす」という意味があります。
「達観」にも物事や情勢を広い視野で見る意味があるため、似ていると思われがちですが、俯瞰と達観では、その視点が違います。
達観が全体を広い視野で見通し、何事にも動じない心境に至る「主観的視点」であるのに対し、俯瞰は「客観的」な立場や視点で見ることを意味します。
達観と諦観の違い
「諦観」とは、物事などを入念によく見て、本質をはっきりと見極めることにより、その事態を察することを意味しています。
諦観の「諦」には「諦める(あきらめる)」という漢字が使われていますが、これは仏教用語としての「見極めて察した上で、執着を捨てる」を意味しています。
つまり、達観が何事にも動じない心境であることに対し、諦観は「物事の因果の道理を見た上で執着を捨てる」ことになります。
決して「断念する」という意味ではないことに注意が必要です。
達観の対義語
ここからは、「達観」の反対の意味を持つ言葉を紹介します。
「達観した人間になりたい」「達観するにはどうしたら良いのか」などと、良い意味で捉えられることも多い「達観」の対義語についてそれぞれ解説します。
執着
「執着」とは「しゅうちゃく」「しゅうじゃく」と読み、ある一つの物事や人、場所から離れられないことや心の状態を意味しています。
仏教では、物事にひどく拘ってしまう「執着」は人間の悩みの原因とされています。そのため執着は仏教用語では悪い意味として使われる言葉です。
例文としては「彼はお金への執着がすごい」や「いつまでも過去の失敗に執着する」といった使い方をします。
固執
「固執」とは「こしつ」と読み、自分の意見、態度や考えなどを変えず、頑なに譲らないことを意味します。
否定的な意味で使われることが多い言葉ですが、肯定的な文章の中に使うこともあります。しかし、非常に強い表現なので、意固地な印象を与えやすいでしょう。
例文としては「会議では沢山意見が出たものの、彼は自分の意見に固執し続けた」や「研究を成し遂げた裏には、並大抵ではない固執する日々があった」といった使い方をします。
拘泥
「拘泥」は「こうでい」と読み、他に選択肢があるにも拘らず、物事に囚われて、必要以上に気にすることを意味します。
一つの事にこだわり過ぎて周りが見えなくなるほどの状態を表すため、ネガティブな意味を持つ言葉です。
例文としては、「誰にだってミスは起こるから、拘泥しないようにしましょう」や「小さなことに拘泥するのは良くない」といった使い方をします。
達観を示す英語表現とは
「達観」は英訳すると「Perspective」や、「Take a long view(長い目で見る)」となります。
例文としては「Take a long view my career.(自分の経歴を達観する)」などになりますが、全体を見渡す意味合いが強い表現です。
一方のPerspectiveには、「達観」の意味により近い「哲学的な」という意味があります。
達観の英語表現の使い方を知り、英会話に活用しましょう。
be philosophical
「達観」だけではなく、「達観している」「達観する」という言葉を表す英語は「be philosophical」となります。
先に紹介したTake a long viewの視点よりも、より「哲学的な」視点で達観しているニュアンスが強くなる表現です。
例文としては、「He is philosophical person」とすれば、「彼は達観した方である」もしくは「理性的な方である」という意味になります。
certain detachment
達観を英語にする言葉には「certain detachment」もあります。「detachment」は達観の類語で紹介した「超然」という意味です。
この表現は、周囲の意見や環境に動じない強い心を持つことを表すため、「達観した状態にある」とか「無関心な状態にある」というように訳すことができます。
例文としては「always have a certain detachment(いつも達観した状態にある)」などが挙げられます。
達観の意味や使い方を理解しよう
「達観」という言葉を、なんとなく知っている状態で意味を間違えて使ってしまうと、相手に失礼になってしまう場合があります。
例えば、「達観して見える」や「達観した性格だ」という言葉を良い意味で使ったとしても、人によって受け止め方が違う場合もあり得ます。相手によっては「冷めている」もしくは「つまらない」と言われたと誤解される可能性もあることを念頭に置くことが大切です。
達観の意味や使い方を正しく理解して、ビジネスや日常会話に役立てましょう。