「踏襲」という言葉はポジティブな意味合いでも、ネガティブな意味合いでも使用する言葉です。

本記事では踏襲の詳しい意味や読み方、正しい使い方と例文を紹介。語源や「真似する」「継承」などの類語、対義語に英語表現もまとめました。

  • 「踏襲」の正しい意味を知りましょう

踏襲とは? 意味や読み方を解説

踏襲とは「前例にならう」という意味の言葉です。「前任者のやり方を踏襲する」というように、前の人のやり方と同じように進めていくときに使います。

読み方は「とうしゅう」です。「踏」という字は「踏む」と読まれるため、「ふしゅう」や「ふんしゅう」と読み間違えることが多いので注意しましょう。

踏襲の語源・由来

踏襲の語源は「足跡をそのままなぞって行くこと」です。

「踏」という漢字は「トントンと足踏みをする」や「地面を踏みつける」という意味がありますが、沓の代用字として「重なり合う」という意味でも使われます。踏襲の場合は、沓の「重なり合う」というイメージが強いです。

「襲」という漢字は襲撃などの「襲う」というイメージが強いですが、本来は「重ねる」という意味があります。踏襲と熟語になると、襲も踏と同じく「重ねる」という意味になります。

ビジネスシーンにおける踏襲の使い方と例文

会社や業界には多かれ少なかれ慣習的に行われている仕事があるため、「それを継承する」という意味で踏襲が使われます。

以下では踏襲という熟語の使い方について、例文を挙げて具体的に紹介します。

「踏襲する」

「踏襲する」は「今までの部署の方針を踏襲する」のような使い方ができます。この場合、踏襲するのは前からずっとその部署にあった決まり事や仕組み(ルール)です。

踏襲するものは目に見えないものも含まれ、そのような明文化されていないルールも暗黙のうちに踏襲するルールに含まれます。

なお「踏襲」という言葉は、前例を尊敬して真似ていきたいというときにも、前例を弊害として改革を望むときも使える言葉です。

ポジティブな意味で使用する際には、「失敗しないように、過去にうまくいったときのやり方を踏襲しよう」などのように表現します。

ネガティブな意味で使用する際には、「失敗を恐れて前例を踏襲してばかりでは、イノベーションは起こせない」などとなります。

「前例踏襲」

「前例踏襲」は、例えば前のモデルと同じ作り方や見た目のときに「前例踏襲でこの形になった」のように使います。「先の例に従う」という意味で幅広く使われる言葉です。

「踏襲する」も「前例に倣う」「前例をまねる」などのように前例が含まれますが、「前例踏襲」と四字熟語にすることで、より前例が強調されます。

踏襲の類語・言い換え表現

「踏襲」の類語を紹介します。いずれも今までの手順や決まり事に倣って同じようにする、といった意味合いがあります。

真似する

「真似(まね)する」は、他の人や物に似せること、同じようなことを言ったりしたりすること、といった意味があります。

「資料作成が上手な先輩の真似をして、資料のクオリティーアップを図る」などのように使用します。

継承

「継承」は踏襲の類義語で、「受け継ぐ」という意味があります。ビジネスシーンの例文としては「事業を継承する」となります。

継承は伝統芸能の世界で使われることが多く、「前代の身分や財産などを受け継ぐ」という意味もあります。

倣う

「倣う(ならう)」は「習う」と同じ語源で、「すでにあるやり方(例)を真似る」という意味があります。ビジネスシーンの例文としては「前例に倣う」となります。

「模倣」という熟語で使われるように、すでに実例のあるやり方を手本として真似るという意味です。

準拠

「準拠(じゅんきょ)」とは「あるものをよりどころとしてそれに従うこと」という意味です。ビジネスシーンでは「規格に準拠する」と使われます。

「あるもの」をよりどころ(根拠)とするため、「あるもの」は標準や規格など第三者が納得しうる、公共のものであることが多いです。

保守

「保守(ほしゅ)」とは「今まで続いてきた状態(こと)を維持し続けること」を意味します。保守を使うビジネスシーンは大きく2つに分かれます。

ひとつは「保守点検をする」というようにシステムやインフラが正常に稼働し続けるようにする行動を指します。もうひとつは「課長は保守派だ」というように、伝統的な社会秩序を重視して今まで通りの立場や見解を維持し続けようとする立場や行動を指します。

  • 踏襲の類語や対義語を知って、理解を深めましょう

踏襲の対義語

「これまでの手順ややり方に従うこと」を意味する踏襲とは反対の意味で、「変えること」の意味がある言葉が対義語になります。

革新

「革新」には「それまでになかった技術やシステムを作り、今までの制度ややり方を一変させる」という意味があります。踏襲の類義語である「保守」の対義語として使われます。

順応

「順応」は「新しい環境や境遇に合わせて変化すること」を意味します。環境や境遇の変化に考え方や行動を合わせて変えられることを「順応性が高い」と表現します。

人は生活環境に応じて自分の気持ちや体の機能、行動を適合させていきます。この適合を「感覚的順応」と「社会的順応」といい、踏襲と対立する意味で使う場合は社会的順応に相当します。

改正

「改正」は踏襲の対義語のひとつです。ビジネスシーンでは主に規則・規約・法令などに関して使われることが多く、不適当な部分や不備な点を改めるという意味が強いです。

踏襲の場合は、善しあしは別にして前例を真似ていくという意味があります。一方、改正の場合は前例の中でも悪い部分や不足している点を改修するイメージが強い言葉です。

刷新

刷新とは完全に新しいものに変えるという意味がありますが、この言葉を使う場合、現状に弊害が多く悪い状態にあることが前提です。

つまり、刷新は弊害を取り去って新しいものに変えるという意味です。「人事を刷新する」というように使われます。

踏襲の英語表現

踏襲を英語で表現すると「follow」や「hand over」となります。

followは「従来のやり方をそのまま引き継ぐ」という意味合いで使われ、「従う」というイメージが強くあります。「前任者の仕事の進め方を踏襲します」の英語表現は「I follow the way my predecessor did.」になります。

一方で、hand overは「引き継ぐ」「引き渡す」という意味合いで使われ、多くの場合、責任や権力を譲るときに使います。「彼が私の業務を踏襲します」の英語表現は「I will hand over this work to him.」になります。

踏襲(とうしゅう)とは前人のやり方を受け継ぐ、継続するという意味の言葉

踏襲はポジティブな意味もネガティブな意味も持っている熟語であり、ビジネスシーンでも多用されます。

「踏襲する」という言葉の意味をよく理解し、活用していきましょう。