現在の日本国内で軽自動車が占める率は大昔とは比べ物にならない。乗用車全体で一番売れているのはトヨタだが、その後ろにはホンダ、ダイハツ、スズキといった軽自動車メーカーが続いている。もはや軽自動車は単なる安グルマではなく、ミリ波レーダーやカメラを用いた最新の安全性能を備えている。若い頃にしか乗ったことがない人が最新の軽自動車のハンドルを握ると、その充実した装備に驚くはずだ。
現在の人気は高い車高と後席スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンで、長きにわたりホンダ「N-BOX」が首位を独走、それを追うスズキ「スペーシア」とダイハツ「タント」が順位を入れ替えながらトップ3を形成している。今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2020年12月の新車販売における人気車種トップ15を紹介しよう。
2020年軽自動車人気車種、12月トップ15
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 13,427 |
2 | スズキ | スペーシア | 10,747 |
3 | ダイハツ | タント | 9,574 |
4 | ダイハツ | ムーヴ | 8,733 |
5 | 日産 | ルークス | 7,987 |
6 | スズキ | ハスラー | 6,614 |
7 | ダイハツ | ミラ | 5,747 |
8 | ダイハツ | タフト | 5,424 |
9 | スズキ | ワゴンR | 4,833 |
10 | スズキ | アルト | 4,824 |
11 | 日産 | デイズ | 4,329 |
12 | ホンダ | N-WGN | 3,889 |
13 | スズキ | ジムニー | 3,801 |
14 | 三菱 | eK | 2,340 |
15 | ホンダ | N-ONE | 2,303 |
※通称名については同一車名のものを合算して集計(アルト、ミラ、ムーヴ、タント、eK、プレオ、N-BOX、デイズ、ピクシスなど) 例)デイズルークスはデイズとして、2020年3月発売のルークスについてはルークスとして集計
■1位:ホンダ「N-BOX」
今やホンダの稼ぎ頭である「N-BOX」が首位を堅持。軽自動車全体の販売台数ではスズキとダイハツが競っているが、ブランド別では6年連続でNo.1に輝く人気を誇っている。
「N-BOX」にも採用されたホンダ独自の特許技術が「センタータンクレイアウト」。一般的には後席や荷室下にある燃料タンクを前席フロア下に設定したもので、室内スペースの拡大や低重心化、操縦安定性の向上、ボディ剛性の強化など、数多くのメリットをもたらす。こういった小技だけではなく、最新の安全支援システムの搭載やロングセラーという実績、モータースポーツでも活躍するホンダ・ブランドによる安心感が多くのユーザーに『買って間違いない』という大きな信頼感を与えているはずだ。
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■2位:スズキ「スペーシア」
数多くの優れた軽自動車を生み出してきたスズキによるスーパーハイトワゴンが「スペーシア」。"ザ・かぞくの乗りもの"というメインテーマが示す通り、子育て世代のニーズをよく考えた設計になっている。
ライバル同様、広大な室内スペースや使い勝手の良さはもちろん、2020年8月のマイナーチェンジでは全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)」などの運転支援機能や予防安全技術も拡充された。ベースモデルは角の取れたエクステリアだが、スポーティでシャープな印象の「スペーシア カスタム」や、SUV風に仕立てた「スペーシア ギア」という派生モデルも持つことで、より多くのユーザー層を取り込んでいる。
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■3位:ダイハツ「タント」
今や圧倒的人気のスーパーハイトワゴンの元祖と言えるモデルがダイハツの「タント」。もちろんライバル勢に負けるわけにはいかず、4代目となったモデルはトヨタ「TNGA」のダイハツ版である「DNGA」の導入で車体性能が大きく引き上げられた。
「タント」の自慢は前後ドアをピラーレスにした大開口「ミラクルオープンドア」。運転席のロングスライドも組み合わせた「ミラクルウォークスルーパッケージ」という仕掛けも加え、乗り降りや室内移動がしやすいものになっている。安全のための先進機能も充実し、ライバル「スペーシア」同様のカスタムモデルもラインナップされている。
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■4位:ダイハツ「ムーヴ」
トップ3のスーパーハイトワゴン勢に続くのは、長い歴史を持つダイハツのトールワゴン「ムーヴ」。
変わった仕掛けは持たないが、車格や排気量に制約がある軽自動車枠の中で、高速巡行を含めた動力性能や居住性、安全装備などのトータルバランスを追求した完成度の高いスモール・ベーシックだ。ダイハツの技術を結集した硬派な上級モデル「ムーヴ カスタム」のほか、ワーゲンバスを彷彿させるロー&ロングなボディと2トーンカラーが特長的な「ムーヴ キャンバス」もなかなかの人気だ。
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■5位:日産「ルークス」
2020年3月にスーパーハイトワゴンの激戦区に名乗りを上げたのが日産の「ルークス」。
内容は日産車の証である「Vモーショングリル」に恥じないもので、自慢の「プロパイロット」をはじめとした高度なドライビングサポートのほか、ミニバン「セレナ」で好評だった「ハンズフリーオートスライドドア」や「スマートシンプルハイブリッド」などの独自技術を数多く採用。2020年度のグッドデザイン賞や2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー K CAR オブ・ザ・イヤー」も受賞した。
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ホンダ「N-BOX」が首位を死守するも、スズキ、ダイハツの商品力の高さも魅力
12月もトップの座を守ったホンダ「N-BOX」だが、総販売台数で1、2位を争うスズキ、ダイハツもこれを猛追し、その差をじわりと詰めてきている。「N-BOX」は12月末にマイナーチェンジでテコ入れをしたが、これが1月以降の販売台数にどう表れるかが気になるところだ。
トップ15までの順位変動は少なかったが、SUV対決ではスズキの名門「ハスラー」がダイハツの新型「タフト」を引き離している。上位を占めるのはスーパーハイトワゴン勢だが、4位につけているダイハツのトールワゴン「ムーブ」にも注目したい。スーパーハイトワゴンほどの広大な室内スペースは持たないものの、競合の「ワゴンR」や「N-WGN」を大きく引き離している。
「ムーヴ」はダイハツが1995年のデビューから大切にしてきたブランドで、乗用車としてのトータルバランスにこだわった“通好み”のモデルだ。ダイハツの最新技術でさらに煮詰められた「ムーヴ カスタム」のほか、ファミリー志向の強いスーパーハイトワゴン勢と違い、若い未婚女性をターゲットとした「ムーヴ キャンバス」という洒落たモデルの人気もシリーズ全体の販売台数を後押ししている。
「N-BOX」は何年もトップに君臨しているが、ホンダはこのお化けモデル頼りになっている状況でもある。対するスズキやダイハツはこれと渡り合えるスーパーハイトワゴンを持つだけでなく、先の「ハスラー」や「ムーヴ キャンバス」のように、スマッシュヒットを放つユニークなモデルを生む商品企画力が魅力と言えるだろう。