「ご多用のところ」は、「ご多用のところ恐れ入りますが」などのように、日常生活やビジネスシーンでよく使われる言い回しです。
この記事では、「ご多用のところ」の意味や成り立ちを解説した上で、「ご多用のところ」の正しい使い方・例文を紹介します。また、類語・言い換え表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「ご多用のところ」の意味とは?
「ご多用のところ」とは、「お忙しい中」「お忙しいのに」などを意味する言葉です。成り立ちとしては、接頭辞の「ご」忙しいことをあらわす「多用」上述した内容を条件として文を続ける場合に用いられる「ところ」の組み合わせています。ビジネスシーンなどでクッション言葉として使いやすいので、覚えておきましょう。
頼みごとをする時や感謝の気持ちを伝える時に使う
「ご多用のところ」は、頼みごとや感謝の気持ちを伝える前に、クッション言葉として冒頭に述べることが多い言い回しです。文章や会話の初頭で相手を配慮する「ご多用のところ」を挟むことで、相手を気遣いながら自分の希望を伝えられます。
結婚式などお祝いの席で使うのにふさわしい言葉
結婚式の挨拶などでも、相手をねぎらう言葉として「ご多用のところありがとうございます」などの言い回しが用いられることがあります。似た意味を持つ言葉に「ご多忙のところ」がありますが、「忙」は「心(りっしんべん)を亡くす」と書くため、お祝いで使うにはふさわしくありません。
そのため、お祝いの席では「ご多用のところ」を使うのがいいでしょう。
「ご多用中のところ」は間違い
「ご多用のところ」と間違いやすい言い回しのひとつに、「ご多用中のところ」があります。「中」も「ところ」も、「ご多用」である状況を指す言葉であり、それぞれ「ご多用の中」「ご多用のところ」として使用できる言葉です。
一緒に使うと同じ意味を重ねて使うことになってしまいますので、どちらか片方のみを使うようにしましょう。
「ご多用のところ」の後ろに続く言葉は?
「ご多用のところ」の後ろに続けて使われることが多い言葉はいくつかあります。どのような言葉とともに使うとスムーズな言い回しになるのか、見ていきましょう。
恐れ入りますが・大変恐れ入りますが
「恐れ入る」とは「相手に迷惑をかけることに対して、申し訳なく思う」ことを意味する言葉です。「ご多用のところ(大変)恐れ入りますが」と表現することで「忙しいのに迷惑をかけて(大変)申し訳ありませんが」という気持ちを伝えられます。
クッション言葉として代表的な言い回しのひとつですので、覚えておきましょう。
ありがとうございます
「ありがとう」は、感謝の気持ちを伝える時に使われる言葉。「ご多用のところありがとうございます」は、「忙しいのにありがとう」という気持ちを伝えたい時の敬語表現です。会議やパーティー、結婚式などへの出席のお礼を伝えたい時は、この言い回しを用いるといいでしょう。
恐縮です
「恐縮」とは、「相手に迷惑をかけたり、相手から親切にしてもらったりして申し訳なく思うこと」を意味する言葉です。「ご多用のところ恐縮です」には、「忙しいのに申し訳ない」「忙しいのにありがとう」などという気持ちを敬語表現で伝えられます。
とは存じますが
「存じる」は「存ずる」の活用形のひとつ。「存ずる」は、「知る」や「思う」などの謙譲語として使われる表現です。「ご多用のところとは存じますが」には、「忙しいとは知っているけれど」「忙しいと思うけれど」などの意味があり、相手の状況を配慮しつつお願いや依頼をする際に使われます。
お時間を
取引先などに無理を言って時間を割いてもらう場合などによく使われるのが、「お忙しいところお時間をいただき(頂戴し)」などの表現で、文章・口頭ともに使いやすい言い回しです。ビジネスシーンはもちろん、就活で面接官に対しても使える表現ですので、定型句として覚えておくといいでしょう。
「ご多用ところ」の正しい使い方と例文
「ご多用のところ」は、ビジネスでのお願いごとはじめ、よく使われるシーンがいくつかあります。ここでは「ご多用のところ」をよく使用するシーンを紹介していきます。
ビジネスメールで何らかの依頼をする時
ご多用のところ恐れ入りますが、資料にお目通しいただけますようよろしくお願いいたします
ビジネスシーンで、メールやチャット、電話などで相手に何らかの依頼やお願いをする場合に、「ご多用のところ」はよく用いられます。「忙しいところ申し訳ないけれどお願いしたい」という気持ちを伝えられますので、多忙な相手もすんなりと受け入れやすくなります。
感謝の気持ちを伝える時
ご多用のところ多くの皆様にご出席いただきありがとうございました
「ご多用のところ」は、感謝の気持ちを伝えたい場合などに「ありがとう」と組み合わせて、相手の状況を配慮しつつ感謝の気持ちを伝えたい時に用いる言い回しです。忙しい相手がすぐに対応してくれた場合や、会議などに出席してくれた場合などさまざまなシーンで活用できます。
返答を促す時
ご多用のところ恐縮ですが、本日中にご返答いただけますようよろしくお願いいたします。
忙しい相手に連絡して、なかなか返事をもらえないことはありがちです。返答を促すシーンでも、クッション言葉である「ご多用のところ」を用いることで、相手の状況を配慮する言い回しになりますので、表現が柔らかくなります。
冠婚葬祭の挨拶
本日はご多用のところ、私たちのためにお集まりいただき誠にありがとうございました
結婚式などのお祝いごとに予定を空けて参加してもらった場合にも「ご多用のところ」はふさわしい表現です。主催者が最後に挨拶する時などに用いるといいでしょう。
「ご多用のところ」の類語・言い換え表現
「ご多用のところ」には似た意味を持つ類義語がいくつかあるので押さえておきましょう。それぞれの類義語の意味や使うべきシーンなどを紹介していきます。
お忙しいところ
「お忙しいところ」は、「ご多用のところ」と意味に大きな違いはありません。
「お忙しいところ」の方がやや柔らかい表現ですので、会話などで用いる場合には「お忙しいところ」を、仕事の依頼や大勢の前での挨拶などあらたまったシーンでは「ご多用のところ」を使用するのが、よりふさわしい使い方です。
お忙しいところお時間をいただきありがとうございました
ご多忙のところ
「ご多忙のところ」も、言葉の意味自体は「ご多用のところ」と大きな差はありません。しかし、「多忙」という言い回しは結婚式などのおめでたい席では避けた方がいい点に気をつけながら、使い分けていきましょう。
ご多忙のところ恐縮ですが、ご回答をお待ちしております。
「ご多用のところ」を正しく理解して使いこなそう
お願いをしたり感謝の気持ちを伝えたりする時に、クッション言葉である「ご多用のところ」から始めることで、忙しい相手の状況を配慮する気持ちが伝わり、相手にいい印象を与えられます。
「ご多用のところ」という言葉を挟むことで、「あなたが忙しいことは知っていますが」という気持ちが伝わりますので、忙しい相手にも耳を傾けてもらいやすくなるでしょう。
「ご多用のところ」の後に続く言葉には、「恐れ入りますが」「ありがとうございます」などいくつかのパターンがありますので、定型句として覚えておくと、使いやすいです。「ご多忙のところ」や「お忙しいところ」などの類義語もありますが、使用シーンに一番ふさわしい言い回しはどれなのかを比較しながら、シーンに合わせて使い分けていきましょう。