本記事では、「往々にして」という言葉の意味や読み方、語源、敬語表現などを紹介します。
豊富な例文とともに正しい使い方や誤用も見ていきましょう。類語、対義語や英語表現についてもまとめました。
「往々にして」の意味と読み方とは
「往々にして(往往にして)」という言葉は「物事が起こる回数が多い傾向にある」という意味です。
ただ人によって、物事がとても頻繁に起こるという状態を指す場合もあれば、物事がたまに起こるという状態を指す場合もあります。意味の幅が広いため、使う人やその場の状況、ニュアンスによって意味をくみ取っていくことが重要になります。
「往々にして」の読み方
「往々にして」の読み方は「おうおうにして」です。「往」という漢字が「住」に似ているため、「じゅうじゅうにして」と間違って読まれるケースが見られますので注意しましょう。
「往々にして」の使い方と例文
例文を参考に、「往々にして」の使い方のイメージをとらえましょう。
「往々にして」は、「往々にしてある」「往々にして○○する」といった形で使われることが多いです。
- ギャンブルに手を出し始めると、首が回らなくなることが往々にしてある
- 未経験歓迎と記載されていても、実際は経験者しか採用してないことは往々にしてあります
- ミスをすることは、誰にでも往々にしてあるものだ
- こういった事象に陥ることは往々にしてあるでしょう
- 具体的な目標を定めないまま走らせたプロジェクトは、往々にして頓挫する
- 計画がないままに動き出すと、往々にして途中で挫折します
- 誰しも、焦っているときは往々にして判断を間違うものだ
「往々にして」の注意点
「往々にして」を使用するときに気を付けたい点を確認しましょう。
「往々にしてよくある」は二重表現であり誤用
「往々にして」を使う際に、「往々にしてよくある」といった使い方をしているケースが見受けられます。
しかし、「往々にして」という言葉自体が「物事が起こる回数が多い傾向にある」という意味を持つため、そこにさらに「よく」という言葉を足してしまうと、頻度を表す言葉が重複している形となり、いわゆる二重表現にあたります。使う場合はどちらか一方にするよう注意してください。
ポジティブなことにはあまり使わない
「往々にして」は、ネガティブな事柄を表現したい場合のみ使うことがポイントです。
ポジティブな事柄を表現する際に使っても間違いではありませんが、「往々にして」はネガティブな事柄を表現する際に多く使われる言葉であるため、ネガティブな意味合いを持つ言葉としてのイメージがあります。
【好ましくない例】
- 努力した人は往々にして成功する
- 苦労した人は往々にして報われる
「往々にしてある」の敬語表現は「往々にしてあります」など
「往々にしてある」の敬語表現は「往々にしてあります」が基本です。ただし、ビジネスシーンにおいて上司などの目上の人や取引先に対しては、語尾の表現などをより丁寧に変えた方がいいでしょう。
例として「往々にしてございます」または「往々にしてございました」といったような表現が挙げられます。
「往々にして」の類語・言い換え表現
「往々にして」は意味の幅が広く、いくつかの言い換えが可能です。そのため、状況に応じて言い方を変える必要もあります。「往々にして」をさまざまなシーンで使えるように、類語とその意味も覚えておきましょう。
しばしば
「しばしば」は「度々(たびたび)」などと同じ意味を持ち、物事の起きる回数が多いことを指します。「往々にして」も物事の起きる回数が多いことを指す場合があるため、「しばしば」に置き換えて表現することが可能です。
例えば、「情報は間違っていることが往々にしてある」は「情報は間違っていることがしばしばある」と言い換えられます。
ややもすれば・ややもすると
「ややもすれば」「ややもすると」は、物事がとかくそうなりがちであるさまを指す言葉で、「なにかと」「なにかにつけて」といった意味合いを持ちます。日常会話などでよく使われるような表現ではないですが、往々にしての言い換え表現として使えるケースもあるので、併せて覚えておくといいかもしれません。
得てして(えてして)
「得てして」は、ある事態になりがちな状況を表現する言葉です。「ややもすれば」と同じ意味で使われます。
「得てして」は「往々にして」に比べて断定的に物事を決めつける強い意味合いが若干薄いです。しかし、両者とも意味にはほとんど違いがないため、実際の会話では決定的な相違点はありません。
「往々にして」と同様に、ネガティブな事柄に対して使われることが多く、類語としては非常に使いやすい言葉の一つです。
間々ある(間間ある/ままある)
「間々ある」は、頻繁ではないが、時々現れる様子を指します。「このような間違いは間々あるものです」などの形で使われます。
時々(時時/ときどき)
「時々」には、その時その時という意味や、稀(まれ)である様子など、複数の意味があります。「曇り時々晴れ」のように、ある時間を置いて繰り返される様子という意味の場合は、「往々にして」の類語といえるでしょう。
「往々にして」の対義語
対義語も併せて覚えておくと、ビジネスシーンで使えるシーンがあります。この機会にぜひ覚えておきましょう。
稀に(まれに)
「稀に」は物事が起きる回数が非常に少ないことを指します。また、意味を強調したい場合は「ごく稀に」などと言うことも可能です。なお、類義語には「珍しく」や「貴重な」、他にも後述の「滅多にない」などがあります。
たまに
「たまに」は「稀に」と同様に、物事が起こる頻度が低いことを表します。ただし、「たまに」は他の表現と比べて、目上の人や取引先の人に対しての敬語として使われることは少ないです。そのため、ビジネスシーンで「たまに」を多用するのはおすすめしません。
滅多にない(めったにない)
「滅多にない」も日常的に使われる言葉です。「なかなか遭遇することがない」というように、物事の起こる回数がとても少ないことを意味します。起こる確率の低い物事を表現する時に「滅多にない」と言うことが可能です。
「往々にして」の語源・由来
語源は諸説がありますが、「往」という字が持つ2つの意味を合わせて「往々にして」という言葉ができたと言われることが多いです。
「往」という字には、目的地に向かってどこかへ行くという意味(例:往復)と、過ぎ去った時間を表すという意味(例:往年)があります。「往」の字を2回連続で使うことで「あの時もこの時も」や「行く先行く先」ということを表します。
「往々にして」の英語表現
近年のビジネスシーンにおいては、言葉の意味や使い方を英語で表現できるようにしておかないといけないケースもあるでしょう。「往々にして」の意味に近い英語表現はいくつかありますが、各表現が指す具体的なニュアンスには違いがありますので注意しましょう。
frequently
「frequently」は日本語に直訳すると「頻繁に」という意味になり、「頻繁な」を意味する形容詞「frequent」の副詞形になります。
主に頻度が多い事柄に使いますが、「frequentcy」というように名詞にすることで、頻度そのものが多い状態を表すことも可能です。また、「frequently」の対義語では「滅多に」を意味する「rarely」があります。
more often than not
「more often than not」は日本語に直訳すると「大抵」、「通例」などです。単に「often」と言うよりも、その事柄の起こる可能性が多いときに使用します。「たいていの場合」という意味で使用する時に使うと良いでしょう。
occasionally
「occasionally」には「たまに」、「時折」などの意味があり、頻度があまり高くない場合に使われます。
sometimes
「sometimes」は日本語では「時には」、「たまに」と直訳します。occasionally同様、「sometimes」も英語では非常に頻繁に使われる言葉ですので覚えておきましょう。
「往々にして」の意味を知り、ビジネスシーンでも正しく使おう
今回の「往々にして」に限ったことではないですが、ビジネスシーンにおいてはきちんと言葉の意味を理解した上で、正しくその言葉を使う必要があります。
誤った言葉の使い方は、仕事のミスにつながったり、思わぬ誤解を招いてしまったりする可能性もありますので注意しましょう。