クラウド会計ソフトなどを提供しているfreeeは1月18日、確定申告の電子申告をスマホアプリで可能にするサービス「電子申告アプリ」をリリースした。○×形式の質問に回答し、マイナンバーカードをかざすだけという手軽さで、freeeで書類作成から申告までをサポートする。
リリースに合わせて実施されたオンライン「おうちでサクッと確定申告」発表会では、国税庁職員らも登壇し、新型コロナウイルス感染拡大を防止するためにも自宅からの確定申告を推奨した。
スマホで確定申告を提出まで完結
freeeCEOの佐々木大輔氏は、昨年は全国で2,240万人が確定申告が実施されており、多くの人にとって重要な申告であると説明。さらに今年は特別控除が変更になっており、電子申告をすることで特別控除をより大きく受けることができることが目玉になっているという。
これは、青色申告を電子申告で行った場合、特別控除額が55万円から65万円に増額されるというもの。佐々木氏は「言い方を変えれば、紙で申告される方は10万円損するということになり、非常に重要な変更点」と解説した。また、持続化給付金や50万円以上のGoToキャンペーンの返金が課税対象になるなど、今年ならではの変更点もあるという。
こういった変更点があると聞いてしまうと「相談員・税理士に相談したい」という気持ちになる人もいるだろう。そうでなくとも、「書き方や書類がわからない」「仕訳が難しい」「誤りがないか確認したい」「e-Taxが不安」といった理由で税務署や相談窓口を利用する人も多いのではないだろうか。
昨年までは、確定申告の時期には税務署に行列ができてしまうことが毎年の風物詩のようになってしまっており、2020年は約500万人の人が税務署や臨時相談窓口に訪れている。しかしながら、新型コロナウイルスが猛威を振るう現在、行列などの密な状況を避けることは社会課題となる。freeeの調査によると、自宅から確定申告をしたいという人は78%にものぼり、社会情勢の影響もあってか大きなニーズがあるという。
AIによる自動仕訳で申告書類を作成
自宅で確定申告をするために必要なこととして、まず必要となるのは申告書類の作成だが、これについてはこれまでfreeeで提供してきたAIによる自動仕訳が役立つという。
クレジットカードや銀行のオンライン明細から自動で仕訳を行ったり、領収書をスマホで撮影し、その内容を自動で判断して仕訳できるため、自動で帳簿作成ができる。さらに、申告書類の作成は○×の質問に答えていくだけででき、約3分ほどで完了するという。作成にはPCのブラウザだけでなく、スマホから作成することができる。
相談・疑問に対して解説動画などでサポート
相談や疑問に対しては、税理士などによる解説動画を毎週配信していくほか、ライブ配信で税理士が質問などに回答するオンラインセミナーの実施も予定している。そのほか、チャットやメールなどによるサポートや、無料で利用できる電子申告開始ナビも提供していくという。
スマホで申告!
申告については、「仕訳の登録を終える」「確定申告書を作る」「提出する」という3つのステップが必要になる。
freeeではこれまで、PCから提出できるものを提供してきたが、スマートフォンからも提出ができるアプリを今年からリリース。これは日本の民間企業では初めての試みとなる。ICカードの読み取り機能が備わっているスマートフォンであれば利用可能で、PCによる提出には必要になるカードリーダーは不要。スマートフォンのみで提出が完結するため、より手軽になった形だ。
佐々木氏は「2021年のテーマとして、自宅で確定申告をするというのが当たり前の年にしたい。自宅から確定申告をする人が1人でも増えるように、相談カウンターで人と人との接触を減らせるようにサービスを提供していきたい」と語った。
国税庁職員が解説する税制改正
続いて、国税庁個人課税課課長補佐の今井慶一郎氏と、情報技術室システム研究官の中島文彦氏から「税制改正による控除の説明」と「チャットボット税務職員ふたば」についての紹介も行われた。
まず、税制改正のポイントについて今井氏より解説された。今年から、給与所得控除および公的年金等控除の控除額が10万円引き下げられ、基礎控除の控除額が10万円引き上げられている。これにより、給与所得者においては負担額は変わらないが、事業収入者ににおいては基礎控除分、控除が増える計算になる。
また、給与所得控除の改正も実施されており、給与収入が850万円を超える場合の控除額が195万円に引き下げられるほか、23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等を有する場合には負担増が生じない、所得金額調整控除の措置も取られているという。
また、今年から公的年金収入が1,000万円を超える場合の控除額に上限を設けたり、公的年金等以外の所得金額が1,000万円を超える場合の控除額の引き下げたりといった公的年金等控除の改正も実施されている。
そして、基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられることに加え、合計所得金額が2,400万円を超える場合には控除額が引き下げられ、2,500万円を超える場合には控除が廃止。さらに、青色申告特別控除の適用要件に「電子帳簿保存」または「e-Taxによる電子申告」が追加され、ひとり親に対する税制上の措置「ひとり親控除」が創設されているという。
続いて、中島氏から国税庁が提供するチャットボットについて案内が行われた。これまでは、税務相談がしたい場合には税務署に問い合わせるか、国税庁のホームページにある「タックスアンサー」で調べるという方法がとられていた。これに加え、昨年度からチャットボットによる相談受付も開始している。
チャットボットでは、よくある質問から回答を導きだせるほか、フリーワードで入力したりしたものをAIによる判断で必要な回答を表示できるようになっている。今井氏は「このコロナ禍において重要なのは非対面、非接触ということ。ぜひおうちでサクッと確定申告を進めていただきたい」と締めくくった。
このほか、イベントでは「昨年までは税務署に行って申告していたが、今年は電子申告に挑戦したい」という、沖縄県・石垣島でダイビングインストラクターをしている女性に話を聞く場面もあった。
確定申告の電子申告をスマホアプリでできるfreeeの新サービス「電子申告アプリ」は現在、無料で提供されている。