年が明け、新しい生活をスタートさせる若者に向け、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、働く姿勢について自身の思いを語ります。

  • 経営者が若者に贈る言葉

2021年を迎え、決意新たに抱負を掲げる方も多いでしょう。2020年は、新型コロナウイルスの影響の色濃い1年でした。2021年も、その影響は続くことが予想されます。そんな中でも、新年から、あるいは新年度から、新しい生活をスタートさせる方がいます。そんな方々に向けて、私が私の会社の現役社員の方々、社員だった方々に贈った言葉をご紹介したいと思います。

餞(はなむけ)の言葉に代えて

入社後、期間浅く会社を去る人、そこそこ長く居て去る人がいます。甘やかな差し障りのない言葉を並べるのが、社会の恒例かもしれません。しかし今日は、60過ぎの経営者の独断と偏見の戯言ですが、少々刺激的な本音を申し上げます。

だれかを批判したいわけではありません。私たちの組織のありように問題があることが前提でのお話とご理解ください。

「自ら選んだ場所で、与えられた仕事で咲く」

会社を去る理由は、人によって様々でしょう。しかし、考えてほしい。数年で去る人。自分を甘やかして生きていてはいけない。立ち向かうべきだと思う。

与えられた場所で咲く、という言葉があります。現状から逃げ回っても、そうそう適職なんて見つかりません。

日本の少々古い職位の専門用語で、「総合職」と「一般職」という区分があります。私がいう「仕事のプロを目指す人」とは、この総合職のことです。時間で作業する前提の一般職とは区別されるべきです。

では、仕事のプロはどのような人のことをいうのでしょうか。

労働分配率と自分の人件費/粗利の功績倍率を考える

「労働分配率」という言葉をご存知でしょうか。労働分配率とは、事業の粗利のうち、人件費に分配される割合のことです。

では、人件費とはなんでしょうか。人件費とは、支給される給料だけのことではありません。給料以外に、法定福利費や福利厚生費、教育費、通勤交通費、求人募集費も含みます。実際に振り込まれる給料の外掛けで0.5倍は、加算されると思います。つまり、受け取る給料の3倍は稼がないと、会社に利益として貢献できていないということです。

「会社に貢献している」と胸を100%張れる領域は、給与の4倍。しかし、ちょっとこれは理想が高か過ぎますね。

会社の利益に貢献しないということは、あなたは、給料泥棒である可能性が高いのです。早く辞めていくということは、給料泥棒のままで食い逃げしたことになるのです。その事実を胸に、自戒の念を持って次の仕事、会社を選んで欲しいのです。

あなたは、あなたが稼ぐ粗利の総額を知っていますか? 売上ではありません。私たち会計事務所の仕事では、外注やデータインプットする原価がかかっています。売上を上げるための営業費、みなさんの組織を管理するための間接サービスの人件費もかかります。

だから、「給与の3倍稼ぐのが一人前」と企業社会一般では言われています。

働き方改革として、ブラック企業駆逐や在宅勤務推進、フレックスタイム制などの働きやすい制度が生まれました。仕事が嫌になれば、早いうちにジョブホッピング。しかし、それで本当に仕事のプロになれるのでしょうか。

ご自身の胸に手を当てて考えてください。真の仕事のプロになりたくないですか? 楽をして、気に入らないなら辞めて逃げ回って。それで本当に良いのでしょうか。ほとんどの中小企業の経営者は、このことを本当に残念に思っています。その中の1人が、まさに私です。

仕事のプロになるために、世間から騙されてはいけない

みなさんは騙されています。世の中から甘やかされています。厳しい責任ある働き方を自らに課すべきだと思います。

日本人は働きすぎだとよく言われていますが、欧米を含むエグゼクティブやそれを目指す人は、みんなハードワーカーです。夜昼なく働きます。それでも、ブラックな仕事だと文句は言いませんし、ハードワークを嫌うことはありません。なぜなら、それが自分のためだからです。

日本人は、決して働きすぎではありません。時間で働く作業ならともかく、プロとしての職業人になるためなら、トレーニング=修行は必須です。

表面だけの楽をした仕事で、他の人に比して、頭角を現せるのでしょうか? 技能が身につくのでしょうか? 芸術なら別です。センスという差別化がありますから。私たちの仕事は、技能なのです。つまり、経験値であり場数です。

人並みの楽な仕事の仕方では、プロフェッショナルにはなれません。人との差別化もできません。野球でもサッカーでも相撲でも、修行しないで一流になった人がいるのでしょうか。そんな人はいない。一流とは、周りより差別化された人のことです。そのためには、ど真剣な場数が必要です。

私は、「会社のためにでなく、自分のために働くように」と常々話してきました。次の会社に行くときに、給料が今の倍になって引き抜かれるような人材になれと。

私が知る一流の人は、和食や寿司の職人でも、シェフでも、ヘアデザイナーでも、弁護士でも、大工でも、ブラックとも呼ばれる仕事をこなして一流になっています。例外はないです。

その中で、人一倍働き、頭角を現し、信頼を勝ち得た者が、責任ある仕事を任され、良い顧客を任され、役割を得て一流と呼ばれる仕事の領域に入ることができるのです。

なぜブラックな労働環境で一流になれたか? それは、その仕事に憧れたし、その仕事が好きだったのだと思います。辛いとは思わなかったのです。

自分を甘やかして、幸福など訪れることはありません。世間や時流に騙されてはいけません。ど真剣に生きて、働く。自分の目の前の仕事に、プライドと愛情を持つ。これこそ一生の宝。それができたら、あなたはすでに半分は成功者です。

私は税理士の資格はありますが、税理士としての職人の適性はないと、若いときに自分で判断しました。だから、会計事務所の経営者という生き方を選んだのです。ここは私の適職です。私の持ち場です。なぜなら、私のような志向の人は、昔はほとんどいなかったからです。だから私のポジションは、天職だと思います。

組織や社会に、ずっとおんぶのままで、給料泥棒で、一生を生きていたいですか。価値ある人生を送りませんか? そのために、今の仕事に対する立ち向かい方で理想の人生を勝ち取れますか?

いつも不平を抱き、逃げ回っても、人生は打開されない。逃げ回るのはやめて、覚悟と決意を持ってご自身のキャリアを積み重ねてください。