Brave Softwareは1月19日 (米国時間)、Webブラウザ「Brave」のバージョン1.19をリリース、IPFS (InterPlanetary File System)のサポートを追加した。
BraveはIPFSについて「Webをより高速かつオープンにするようにデザインされたP2P (ピアツーピア)ハイパーメディアプロトコル」と説明している。現在のWebで広く使用されているHTTPがコンテンツをホストするロケーションを指定するのに対して、IPFSは分散型のネットワークにおいてCID (Content identifier) が付与されたコンテンツを扱う。
例えば、映画を視聴するのに、特定の映画館を指定するのがHTTP。特定の映画作品を指定するのがIPFSである。映画館を指定したら、見たい映画が上映されていても休館日には見られない。興行成績が悪かったら映画館の判断で見たかった作品の上映が突然打ち切りになってしまう可能性も。でも、映画作品を指定して探すなら、別の映画館で見たり、または配信サービスを利用するなど目的を満たす選択肢が広がる。
ロケーションを指定するHTTPの場合、ホストするサーバーに障害が起きるとコンテンツを利用できなくなる。限られたロケーションでホストされているため、環境によってはアクセスの増加でレスポンスが悪化する。DDoSのようなリソースに過剰な負荷をかける攻撃の影響も受けやすい。また、サーバーの管理者の管理下にあるため、管理者がコンテンツへのアクセスを禁止または制限したり、改ざんも可能という問題もある。
IPFSは、暗号ハッシュ化によるコンテンツハッシュをCIDとして利用する。P2Pネットワーク上で動作するのでオリジナルのコンテンツへのアクセスが困難になっても、同じCIDのデータを持つ他の場所からの取得が可能になる。1カ所に負荷が集中する問題も回避でき、コンテンツへのアクセスの遮断や制限、改ざんも難しくする。
「タイのWikipediaの一部、トルコの10万以上のブロックされたWebサイト、中国のCOVID-19関連の重要な情報へのアクセスなど、世界のWebユーザーがアクセスできない制限されたコンテンツがあります。BraveブラウザのIPFS接続を通じて、インターネット接続があれば誰でも重要な情報にアクセスできるようになります」とIPFSのプロジェクトリードであるMolly Mackinlay氏。
バージョン1.19以上のBraveブラウザでは、以下のようなipfs://から始まるURIを入力するだけでIPFSからコンテンツにアクセスできる。
ipfs://bafybeiemxf5abjwjbikoz4mc3a3dla6ual3jsgpdr4cjr3oz3evfyavhwq/wiki/VincentvanGogh.html
デフォルトでBraveはパブリックHTTPゲートウエイを通じてリクエストされたURIをロードし、インフォバーでIPFSノードを用いるかユーザーに尋ねる。ローカルノードを利用すると、Braveはgo-ipfsをダウンロードし、IPFSのP2Pネットワーク上からコンテンツをロードする。