この記事では「アウフヘーベン」という言葉の意味と、使い方を解説しています。「アウフヘーベン」は哲学用語ですが、さまざまなビジネスシーンでも使用できる考え方です。意味を正しく理解して、ビジネスシーンで活かせるようになりましょう。
アウフヘーベンの意味
アウフヘーベンとは、ドイツの哲学者が用いた「弁証法」の基本的な考え方の一つです。「弁証法」とは、対立した意見について議論する過程において思考を深め、より高次の段階へと進んでいく思考法を指します。対立する二者をどちらも否定せずにかけ合わせて統合し、一つの解として昇華させる過程を「アウフヘーベン」と呼ぶのです。
アウフヘーベンの語源
アウフヘーベンの言語はドイツ語の「aufheben」で、「上へ持ち上げる、拾い上げる」という意味があります。aufが「上の方へ」、hebenが「持ち上げる」の意味です。
aufhebenは他にもさまざまな意味を持っており、「高める」「保存する」「解消する」「撤廃する」などの意味もあります。
アウフヘーベンは、二つの相反する二者を統合し、より高度な結論へ高めて保持することによって両者の対立が解消するという過程を示しています。アウフヘーベンの考え方は、aufhebenの原語が持つすべての意味を含む概念であると言えます。
アウフヘーベンの日本語訳
アウフヘーベンの日本語訳は「止揚」です。「しよう」と読みます。思想の対立をいったん止め、互いの考えの要素の一部を保持したままより高い次元へと引き上げ、新たな一つの概念にするという哲学の用語です。
日本語訳には「揚棄(ようき)」という言葉もあります。対立をより高次の段階へ引き上げ、新たなより優れた思想にした後、元の思想の概念は捨てるという意味が含まれています。
「アウフヘーベンする」の意味
「アウフヘーベンする」とは「対立する考え方や物事からより高い次元の答えを導き出す」「議論を深めることでさらに良くする」「見方を変えて解決策につなげる」という行為を指します。つまり「対立する二者を超越した結論を導く」という意味になります。
弁証法の「アウフヘーベン」とは
弁証法では、元の意見=T(テーゼ)に、反対意見=A(アンチテーゼ)が出た後、TとAを合わせた新しい意見=S(ジンテーゼ)が生まれますが、TとAを合わせることを「アウフヘーベン」と言います。
対立する意見があり、両者を否定せずに議論を深めていくことによって、新たな意見につなげることがポイントになります。
ビジネスシーンでのアウフヘーベンの使い方と例文
アウフヘーベンは、ビジネスで活かすには最適の考え方です。ビジネスには、矛盾した現実と理想、異なる意見や立場の間に立って解決すべき問題が多くあります。さまざまな課題を切り捨てることなく高度化していくことは、ビジネス上不可欠です。
ビジネスシーンでのアウフヘーベンの使い方や例文などを知り、正しく使い分けられるようになりましょう。
■身近な問題を解決するケース
身近な問題を解決するアウフヘーベンの例を紹介します。
「仕事が終わったら、早く帰って英気を養うことが仕事の質を向上させる」
「仕事外の飲み会などで社員同士の交流を図ることは、仕事を円滑に進めるために必要だ」
このような対立する2つの意見があったとします。
この場合、「仕事を円滑に進めるために、仕事の後の飲み会は必要であるが、頻度については社員の負担にならない程度に考慮すべき」といった解決策があります。
どちらの意見も否定せずに、より効果的な解決策を導くために、アウフヘーベンを使用します。
■ビジネスにおける矛盾を調整するケース
ビジネスにおける矛盾を調整する有名なアウフヘーベンの例を紹介します。
「自動車は環境に有害である。これからの時代は生産を抑制すべきだ」
「自動車は移動手段として、なくてはならないものだ。これからも普及を進めるべきだ」
この矛盾する意見の解決策として生まれたのが、環境に優しいハイブリッドカーです。矛盾を調整して、今までにない新しい解決策を生み出したアウフヘーベンの例です。
■ビジネスにおける議論を深めるケース
アウフヘーベンでは最初に対立する意見があります。どちらか良い方を選択するのではなく、議論を深め、より高度なアイデアにつなげていきます。
「日本ではパンが流行している」
「お米の売上を伸ばしたい」
この2つの意見がある場合、パンが流行しているという意見を採用すればお米の売上を伸ばす行動にはつながりません。一方で、お米の売上を伸ばす意見のみを選択した場合、現実を無視してやみくもに行動する結果となります。
議論によって、「米粉を使ったパンを普及させましょう」という結論を導き出すことができれば、現状を踏まえた行動で売上を伸ばすことが可能となります。
ビジネスシーンでアウフヘーベンを正しく使えるようになろう
これまで、アウフヘーベンの意味や使い方をご紹介してきました。
アウフヘーベンは、矛盾する問題を高い次元で生かす結論を導き出します。正しい意味を理解して、アウフヘーベンをビジネスに活かしましょう。