「感謝の念に堪えません」とは、相手に対して深い感謝の気持ちを持っているときに、その気持ちを伝えるための言い回しです。
「深い感謝」をあらわすようなシーンはそう頻繁にはない人が多く、使う機会はそう多くはないため、いざ使おうとしても適切に使えているか心配になる人も多いでしょう。また、少し硬い言い回しですので、もう少し柔らかい表現で言い換える方が適切な場合もあります。
この記事では、「感謝の念に堪えません」の意味や成り立ち、使い方や例文などを紹介していきます。あわせて言い換え可能な類似表現や英語表現についてもご紹介。シーンに合わせた言葉遣いをしたいと考えている人にも役立つ内容です。
「感謝の念に堪えません」の意味とは
「感謝の念に堪えません」は「感謝の気持ちを抑えきれません」や「感謝の気持ちでいっぱいです」という意味で用いられます。読み方は「かんしゃのねんにたえません」。
「念」には「いちずに思いを込める」「思い詰めた考えや気持ち、思い」などの意味があり、「感謝の念」は「感謝の気持ち」「感謝の思い」という意味で用いられています。
「堪える」には「感情などを抑えて外に表わさない」という意味があることから、「堪えません」の意味するところは「感情を抑えきれません」という内容です。
目上の人に使える敬語表現
「ません」は、丁寧語や謙譲語として用いられる「ます」の否定形です。「感謝の念に堪えません」の場合は自分の感情が主体となっているため、謙譲語表現と言えます。自分がへりくだっている敬語表現であることから、目上の人に対して使用しても差し支えありません。
間違いやすい漢字
「感謝の念に堪えません」に使われている「堪えません」は、同音異義語と誤って使用しまいがちです。下記の2種類は間違いやすいので注意してください。
- 絶える : 途切れる、止まる
- 耐える : 影響を受けずに持ちこたえる
言葉の成り立ちをしっかりと理解した上で、正しく使っていきましょう。
「感謝の念に堪えません」の使い方と例文
「感謝の念に堪えません」は日常会話で使うことはあまりありません。メールや手紙、改まった挨拶などで感謝を伝えたいときに使われることが多い言葉です。
以下では、「感謝の念に堪えません」の具体的な使用シーンを紹介していきます。
年賀状や手紙で感謝の気持ちを伝える
昨年はご指導を賜り、感謝の念に堪えません。
いつもお世話になっている取引先や上司に年賀状やお礼状を出す場合には、日頃の感謝の気持ちを伝えたいものです。
「感謝の念に堪えません」を用いることで、いつも指導してもらっていることやお世話になっていることに対する深い感謝の気持ちを伝えられます。
退職や異動の挨拶
○月○日をもって××部へ異動する運びとなりました。
△△様には常日頃より何かとご指導いただき、感謝の念に堪えません。
「感謝の念に堪えません」は硬い言い回しですので、口頭での会話で用いる機会は少ないかもしれませんが、改まった挨拶をする機会には使われることは多いです。
異動や退職などで同僚や取引先へ挨拶する場合に用いることで、これまでの感謝の気持ちを伝えられます。
感謝状や表彰状の一文
誠心誠意を尽くし多大な貢献をされたこと、感謝の念に堪えません。勤続○年を迎えるにあたり、ここに深く感謝の意を表します。
「感謝の念に堪えません」は感謝状を贈る場合や勤続表彰をする場合などに、表彰状のフレーズとして用いられる言葉のひとつ。
相手の功績に対して深い感謝の気持ちを伝えられます。
「感謝の念に堪えません」の言い換え表現・類語
「感謝の念に堪えません」は改まったシーンで用いられることが多い言い回しであり、日常会話では使いにくいかもしれません。
そこで、「感謝の念に堪えません」と似た意味を持つ、言い換えできる表現を紹介します。
感謝申し上げます、お礼申し上げます
多大なるご支援をいただいたこと、深くお礼申し上げます。
このたびは弊社サービスをご利用いただき感謝申し上げます。
「感謝申し上げます」や「お礼申し上げます」は、いずれも「感謝の気持ちを伝えさせていただきます」という意味の言い回しです。
口語表現としてもよく使われることであり、日常会話などでお礼の気持ちを伝える際に使えます。「感謝の念に堪えません」のカジュアルな言い回しとして、言い換え可能な表現です。
深謝いたします、拝謝いたします
平素はご愛顧いただき深謝いたします。
温かいお言葉をいただき拝謝いたします。
「深謝」とは「心から感謝すること」「拝謝」とは「心からの感謝をへりくだっていうこと」を意味する言葉です。いずれも日常会話で頻繁に使う言い回しでなく、メールやビジネス文書などで使われます。
「感謝の念に堪えません」と同じような意味であり、言い換え可能な表現のひとつです。
誠にありがとうございます
お忙しい中お時間を割いていただき、誠にありがとうございました。
「誠にありがとうございます」も深い感謝の気持ちをあらわす言葉であり、「感謝の念に堪えません」の言い換え表現のひとつです。
ストレートに謝意を示せることから、ビジネスシーンはもちろん日常会話でも使われます。
「感謝の念に堪えません」の英語表現
「感謝の念に堪えません」は英語にも類似表現がいくつもあります。代表例を紹介していきますので、見ていきましょう。
I can't thank you enough.
Thank you very much. I can’t thank you enough though.
本当にありがとうございます。感謝の念に堪えません。
「I can't thank you enough」には、「君にはいくら感謝してもしきれない」や「感謝のしようもございません」などの意味があります。
深い感謝の気持ちをあらわす言い回しであることから、「感謝の念に堪えません」の英語表現と言っていいでしょう。
I offer my appreciation
I offer my profound appreciation for your kindness.
皆様のご親切、感謝の念に堪えません。
「offer」には「申し出る」「appreciation」には「感謝」という意味があります。
「I offer my appreciation」は「感謝申し上げます」という意味となり、「感謝の念に堪えません」の英語表現として使用して差し支えありません。
My heart was overflowing with gratitude.
My heart was overflowing with gratitude for your friendship.
あなた方の友情、感謝の念に堪えません。
「overflow」は「あふれる、いっぱいである」「gratitude」は「感謝」をあらわす英単語です。
「My heart was overflowing with gratitude」は「私の心は感謝の気持ちでいっぱいだった」という意味であり、「感謝の念に堪えません」の英語表現として使えます。
I wish to express my appreciation.
I wish to express my appreciation for your help and support.
あなたに手助けいただいたこと、感謝の念に堪えません。
「express」には「表現する」という意味があります。
「I wish to express my appreciation」を直訳すると「感謝の気持ちをあらわしたい」であり、「感謝の念に堪えません」の英語表現のひとつです。
「感謝の念に堪えません」をビジネスシーンで使ってみよう
「感謝の念に堪えません」は、改まったシーンで深い感謝の気持ちを伝えたいときに使われる言い回しです。敬語表現ですので、目上の人や取引先に対して使っても差し支えありません。ただし漢字を間違えやすいため注意しましょう。
年賀状や手紙で感謝の気持ちを伝える場合や、異動や転職の挨拶など、改まったシーンでよく使われます。少し硬い言い回しですので、シーンに合わせて「感謝申し上げます」などの類義語に言い換えながら、使い分けていきましょう。感謝の気持ちをあらわす表現ですので、同じ意味の英語表現も多いです。
「感謝の念に堪えません」は普段から使うことは少ないですが、節目の挨拶で使うのにふさわしい言葉。大人の言葉遣いとして、ぜひ覚えておきましょう。