2021年、新作2部作を連続上演する、TBS開局70周年記念 舞台「『刀剣乱舞』-大坂冬の陣- / -大坂夏の陣- Supported by くら寿司」。『刀ステ』と呼ばれる同シリーズは、名立たる刀剣が戦士へと姿を変えた“刀剣男士”を率い、歴史を守るために戦う刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原案に舞台化し、圧倒的な人気を博している。

最新公演である2021年の2公演はシリーズ最大規模となり、360°の回転ステージであるIHIステージアラウンド東京で現在上演中だ(大坂冬の陣:1月10日~3月28日、大坂夏の陣:4月~6月)。今回は、舞台「『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」で新たに一期一振を演じることとなった本田礼生にインタビュー。『刀ステ』シリーズの魅力や、演劇への思いについても語ってもらった。

  • 「舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- 」に出演する本田礼生

    本田礼生 撮影:宮田浩史

■時代を牽引する『刀ステ』に初参加

――今回本田さんは一期一振役として舞台『刀剣乱舞』に初参加となりますが、出演が決まった時の感想はいかがでしたか?

長く続くシリーズの10作目ということは、きっとこれまで応援してくださっているファンの方と一緒に作りあげている部分があると思うんです。そこに新しく入るので、頑張らないといけないことがたくさんあって、楽しみ半分、不安半分というのが率直な感想でした。

――これまでにもそういう感覚はあったんですか? たとえばミュージカル『テニスの王子様』に出演された時とか。

『テニミュ』は3rdシーズンで青学(せいがく)8代目・ 菊丸を演じたんですけど、一緒に応援してくださってる方々と作り上げていく部分と、引き継がないといけない部分、新しく提供しないといけない部分があり、似た感覚だったと思います。

――『テニミュ』は若手俳優の方の登竜門と言われていますが、『刀ステ』は俳優のみなさんにとってはどういう存在なんですか?

今、人気の2.5次元作品がいろいろたくさんあって、どれも面白くてクオリティが高いのですが、その中でも舞台『刀剣乱舞』という作品は、ひとつの時代を牽引してくれている作品だと思います。関わっている知り合いも多いので、身近にも感じていました。

――「自分も出たい」といった思いはありましたか?

僕は、「これに出たい」という希望があんまりないんです。ありがたいことにずっと途切れずに舞台に立たせていただいていて、SNSも更新しないくらいに、その時やっている作品にのめり込んでしまって。「舞台『刀剣乱舞』をはじめ、みんなも頑張っているし、僕も頑張らないと」という感覚でした。

――今回は座長という立場ですが、一期一振はどんな活躍をしますか? ネタバレにならない範囲でぜひ…。

脚本も担当されている演出の末満(健一)さんが、「刀剣男士に起こる葛藤は描き尽くした。同じことはやりたくない」とおっしゃっていました。一期一振の葛藤は新しいもので、今回登場するのは豊臣秀頼であって、秀吉ではないというところがキーだと思います。一期一振は秀吉の刀なんだけど、物語に関わってくるのは秀頼で……というのが見所だと思っています。これ以上はちょっと言えません(笑)。

――ありがとうございます。役作りとしては、どういう点を心がけていますか?

僕は2.5次元のキャラクターを演じるにあたって、第一印象がとても大事だと思っていて、舞台上に初めて登場した時のビジュアルとボイスの印象に重きを置いているんです。自分がキャラクターから受けた印象に近いものを、最初にお客さんに感じてほしいです。もう1つ心がけていることとしては、舞台『刀剣乱舞』は人間ドラマが魅力だと思っているので、末満さんの脚本の中で一期一振として葛藤を生きる、ということ。その2点をもって、あまり凝り固まらずに、スッと役に入ることができました。

■演劇がピンチの時代に考えること

――続投されているキャストの方もいらっしゃいますが、先輩方の頼もしさは感じていますか?

まっきーさん(荒牧慶彦)やヒデさん(佐々木喜英)は、僕たちより1つ上のビジョンが見えていて、頼もしいです。僕は初めて一期一振を演じるので、芝居も一歩一歩修正しながらすり合わせているのですが、先輩方はこの修正作業が終わっているんです。今回、全員が初めてIHIステージアラウンド東京という客席が360°回転する劇場に挑むことになって、未知のものと対峙している感覚がある中で、先輩方が安定してくださっているので、安心します。

――これまでステアラの作品は観たことがあったんですか?

『髑髏城の七人 Season花』を観ました! 役者なので、裏のことを考えるくせがあって「こういうところがいいな」とか、「今後やることがあったら意識しよう」とか考えながら観ていたんですが、まさかそれがステアラで生かせるとは思ってなかったです(笑)。ステアラって、普通の劇場に当てはまらないような大きさで、奥行きもすごいし、視界も開けている。となると、役者にとっては「埋めないといけない空間が多い」ということなんです。今までとは違う空間支配の感覚を持って立たなければいけないと思っています。でも、シンプルに楽しみです。

――佐々木さんは舞台「鬼滅の刃」で鬼舞辻無惨、本田さんは冨岡義勇役で共演されていたと思いますが、今回は全然違う関係性になりそうですね。

『鬼滅』では、裏でお話することが多くて、「また一緒にやりたいですね」と言っていたんです。ミュージカル『テニスの王子様』の大先輩でもありますが、実は最初にご挨拶させていただいたのはもっともっと昔で、憧れの方なので、僕の中では「ヒデ様」と呼ぶような存在です! 人柄も素敵な方で、ご一緒させていただくのが嬉しくて、舞台上で絡むのも楽しみです。

――これまでに一期一振を演じていた廣瀬大介さんを意識することはありますか?

廣瀬さんとは不思議なご縁がありまして、他の作品で廣瀬さんがキャラクターボイスをされている役(『A3!』斑鳩三角)を舞台で演じ、今回は廣瀬さんが演じていた役を演じるということで、なんだか安心感がありました。心の拠り所でもありますし、ご連絡もさせていただきまして、アドバイスもいただきました。意識はしすぎずに、「引き継ぐ」という気持ちで稽古に臨んでいます。

――最後に、2020年の振り返りと、2021年はどんな年にしたいかも教えてください。

2020年は、いろいろありましたね……。でも役者としては、2020年が人生で1番いい年でした。毎年、いい年を更新できているので、2021年も「最高だった」と言えるように頑張りたいですが、今、演劇は本当にピンチだと思うんです。「人を集めたらダメ」「近づいたらダメ」という状況で、演劇をやるのはすごく矛盾していること。それでも、今の時代だからこそやる意味があるのがエンタメの本質だと思っています。演劇がピンチな状況で演劇をできる機会があるなんて、こんな光栄なことはないです。僕は演劇に生かしてもらっているので、恩返しと言ったら重くなっちゃうんですけど、少しでも盛り上がるきっかけに関われたらと思っています。

この作品が成功することが力になり、2021年は演劇界がさらに盛り上がっていく一因になればいいな。もちろん、どんなに対策を徹底してもどうしようもないことはあって、いつ自分たちの公演が中止になってもおかしくないという状況は変わりません。でも、それでも気持ちが下がらないくらい、みんなで盛り上がっていけたらいいなと思います。

――熱い思いが伝わってきますね。

「(笑)」ってつけといてください!(照れて) でも、ふとした時にすごくいろいろ考えます。僕ができることは芝居しかないので、今舞台に立てるのは本当に光栄です。

■本田礼生
1992年10月28日愛媛県出身。2012年の舞台デビュー以来、様々な作品で活躍。主な出演作にミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン(15年~16年)、Live Performance Stage『チア男子!!』(16年)、THE CONVOY SHOW(17年~)、『Fate/Grand Order THE STAGE』シリーズ(17年~)、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ(18年~)、舞台「鬼滅の刃」シリーズ(20年~)、ドラマ『KING OF DANCE』(20年)など。