前回、いきなり在宅勤務になり戸惑う新入社員について書きました。新型コロナウイルスが浮き彫りにしたもう一つのことが、「変化に対応できる人」と「変化に対応できない人」の2極化ではないでしょうか。
「在宅勤務では上司と部下の良い関係を築くことができない」は本当か
ある日突然始まった在宅勤務。これまでの常識が通用しない環境の中で、どのような動きをとることができたのかが今後のビジネス人生を大きく左右するといっても過言ではありません。世の上司・マネージャーの皆さまにも変革の時がやってきました。
昨年、私のもとに最も多く寄せられた相談の一つが、テレワーク下での部下の仕事の管理についてです。これまでは同じオフィスの中で顔を見合わせ当たり前にできていたコミュニケーションがとれなくなったときに、どのようにすればいいか分からないという話をたくさん聞きました。
たしかに、在宅勤務下であればこれまで通りのコミュニケーションは難しいです。例えば同じオフィスにいれば、部下がちょっと悩んでいたり、つまずいていたりする姿を見つけ「大丈夫?」と声をかけ手を差し伸べることができます。
ところが、離れた場所にいると、こうした困っている、苦しんでいる、しんどい、つらいといったシグナルが見えづらくなってしまいます。部下自身も「わざわざ連絡するのも気が引ける」と遠慮をしてしまえば、救済措置をとることができなくなります。
「だから、在宅勤務では上司と部下の良い関係を築くことができない」
というのですが、本当にそうでしょうか? そこまで問題が見えているのであれば、それに対処する方法を考えるべきなのではないでしょうか。
例えば、部下の顔を見られないことが気になるのであれば毎日15分でいいので1on1のビデオミーティングを行う。「目的のない雑談」をするタイミングがないのであれば、週に一度チームで雑談のための時間を設ける。弊社では、"ワイガヤ"と名付け、金曜日の終業前に行っていました。
実際に顔を見合わすことができなくても、このような取り組みを通じて今の部下の仕事の状況を把握し、表情や言葉などからマインド状態を探ることはできるはずです。もし創意工夫を重ねても分からないというのであればそれはツールのせいではなく、上司自身の観察力の問題ではないでしょうか。
このような環境の変化に対して、人は3種類に分かれます。
- 努力をする人
- 愚痴を言う人
- ただただ不安になる人。
現状に満足できないのであれば、変わるしかありません。ところが過去に固執してこれまでのやり方を捨てられないと、うまくいかないまま文句を言うだけの人になってしまうかもしれません。
部下がサボらないように見張るだけの上司はもういらない
今、緊急事態宣言の再発令で、対応を迫られている企業もたくさんあると思います。私は2020年の緊急事態宣言からこれまでの10カ月間を通して、一つ感じたことがあります。それが、「今後マネージャーは不要になるのではないか」ということです。
冒頭で、部下の管理についての質問が寄せられたという話をしましたが、そもそも「部下を管理する」ということは上司の本質的な目的ではありません。
上司、管理者の二大任務は「業績向上」と「部下の指導育成」です。部下の仕事を管理する、というのはこうした目的のための手段の一つです。しかし、いつしか管理をすることこそが目的だと勘違いをしてしまうことがあります。
先ほどの例では、困っている部下に手を差し伸べられないという話をしましたが、同じくらい多く「在宅勤務だと部下がサボるかもしれない」という声もありました。
「部下がサボらないように見張る」ことが自分の役割だと誤解をしている上司は一定数います。このような考えのままでは、在宅勤務で離れた場所で仕事をすることになったときに、「何をすればいいか分からない」「在宅勤務では仕事にならない」と困ってしまうか、「部下がサボらない仕組みを作らなければ!」と躍起になるかのどちらかです。
正社員神話が崩れ、企業が人材を雇用しない流れが加速すれば、部下の見張り役としてのマネージャーはこれから淘汰されるでしょう。
一方で、リーダーの重要性はますます強くなります。「個」の時代が加速する中、専門性を持ったプロフェッショナルを束ねる人の存在はより一層大事になります。
これからのリーダーというのは、社歴が長いとか、年齢を重ねているからと選ばれるものではありません。先頭に立ってメンバー全員を同じ方向に導くことができる人。その役割を担えるのであれば、新入社員だって立派なリーダーになることができます。
時代は、優れたリーダーを求めています。年齢も、性別も、過去の経歴も関係ない。私は、「面白い時代がくるぞ!」とワクワクしています。皆様はどうですか?