本などで「篤志家」という言葉を見かけた時に、読み方が分からなかったり、意味の見当がつかなかったりした経験はないでしょうか。「篤志家」という言葉は頻繁に会話に登場するようなものではないため、意味を知らないまま過ごす人も多いでしょう。
本記事では例文も交えながら「篤志家」の意味や使い方を解説していきます。ビジネスシーンで「篤志家」という言葉に出会った時に、意味が分からず会話に入れなかったり、間違った受け答えをしてしまったりすることがないよう、意味や使い方を理解しましょう。
篤志家の意味
「篤志家」とは「社会奉仕や公共の福祉などを熱心に実行したり支援したりする人」という意味の言葉です。読み方は「とくしか」。また「篤志」は「志(こころざし)が篤(あつ)いこと」で、特に社会奉仕や慈善活動に熱心であることの意味で使われます。
篤志家の語源
「篤志家」は難しい漢字を使っていたり、「志が篤い」のように熟語と意味の漢字の順が逆であったりするため、中国語由来と勘違いされることもありますが、実はそうではありません。
「篤」は「とく」という読み方のため、「竺(とく)」という字に通じると考えられ、「竺」の持つ「人情にあつい」や「誠実」といった意味でも使われるようになりました。そして、「人情にあつい」や「志にあつい」では「篤い」が使われます。
篤志家とボランティアの違い
「篤志家」と「ボランティア」では、社会活動や慈善活動を行っている点では共通しています。あえて相違点を挙げるとすれば、「篤志家」は、慈善活動に熱心である人全般を指して使われるのに対し、「ボランティア」は無料奉仕活動に対して使われるという点でしょう。
なお、英語の「ボランティア」には有償の活動も含まれますが、日本においては無償の社会奉仕活動を指して使われます。
英単語の「volunteer(ボランティア)」の日本語訳に「篤志家」も含まれるので、両者は同じ意味を持ち合わせていると理解できます。
篤志家の例文
「篤志家」は、ビジネスシーンや小説の中でしばしば目にする言葉です。
例えば、「『あしながおじさん』の主人公は、篤志家のおかげで学校に進めた」や、「災害で壊滅的な被害を受けた地域に、篤志家たちが多額の寄付をした」などで「篤志家」が使われます。
「篤志家」は見返りを期待しないので、どちらの例文も「お金を貸した」のではなく「寄付をしている」という点に注目しておきましょう。
また、被害地域に赴いて片付けに汗を流している人たちは、「篤志家」とは表現されない点も注意が必要です。
篤志家の類語
「篤志家」には、類似の意味を表現できる類語があります。
ただし、意味が重なる部分においては、言い換えて使うこともできますが、意味が重ならない部分で言い換えを行ってしまうと違和感のある文章になるので、注意が必要です。
状況によって適切な言葉を使って表現するためにも、「篤志家」の意味と使い方に加え、類語の意味と使い方も習得しましょう。
慈善家
「慈善家」とは「恵まれない人や被害者に経済的援助をする人」という意味で、「じぜんか」と読みます。「慈善家」は、あくまでも自発的に援助を行っている人に使われる言葉です。
「慈善家の支援により、遺児の進学資金が提供された」でも「篤志家の支援により」としてもほぼ同義になります。
博愛主義者
「博愛主義者」とは、「人種や国家、宗教などに囚われず、広く愛し合うべきであると主張する人」という意味で、「はくあいしゅぎ」と読みます。
ただし、「博愛主義」は思想のひとつであり、実際に身体を動かしたり寄付をしたりする行動が伴うとは限りません。
「博愛主義者であるAくんは、国籍に関係なく、困窮者の支援に乗り出した」を、「篤志家であるAくんは」に言い換えた文章では、ニュアンスが異なります。
愛他主義者
「愛他主義者」とは「あいたしゅぎしゃ」と読み、「他人の幸福や利益を第一の目的として行動する人」という意味で使われます。また、「利他主義者(りたしゅぎしゃ)」も同義の言葉です。
例えば、「Aさんは愛他主義者のようで、我々の成功をまるで自分のことのように喜んでくれる」という文章を作成できます。
なお、「愛他主義者」は「篤志家」の類語ですがそのまま言い換えた場合、異なる意味の文章になるので注意が必要です。
篤志家の英語表現
「篤志家」の英語表現となり得る単語の意味と使い方を紹介します。
a philanthropist
「篤志家」の直訳は「philanthropist」です。この単語は「博愛主義者」「慈善家」とも訳されます。
<例>
- She is known as a philanthropist who helps many people.
彼女は多くの人々を支える篤志家として知られる
a benefactor
「篤志家」は「benefactor」を使って表現することもできますが、「benefactor」を日本語に直訳すると「寄付する人」や「寄進者」という意味になります。
<例>
- Many benefactors sent essential items off to an orphanage.
多くの篤志家が、孤児院に必須物資を送付した。
an almsgiver
「篤志家」は「almsgiver」という単語で表現することもできますが、「almsgiver」の直訳は「施しをする人」あるいは「慈善家」になります。
<例>
- He is an almsgiver.
彼は篤志家である。
***
「篤志家」の意味やビジネスシーンを含む使い方や類語による言い換えなど、理解できたでしょうか。
「篤志家」という言葉を理解してビジネス会話や日常会話を進めていけるように、語源や例文などを利用し、確実に意味と使い方を覚えておきましょう。