メールで見かけた経験のある方も多いであろう「幸甚」という言葉。馴染みのある言葉である一方、その意味や正しい使い方を理解していないという方も多いかと思います。
本記事では「幸甚」の意味、正しい使い方、置き換えられる他の言葉などを紹介します。
幸甚の意味・読み方
幸甚とは「こうじん」と読み、「非常に幸いなこと」「この上ない幸せ」という意味の言葉です。「幸」は運がよくて恵まれ、満足できる状態・幸せを、「甚」は程度の甚(はなは)だしい様を表します。メールの末尾に「~いただければ幸甚に存じます」という表現で用いられることが多いです。 以下では、実際に幸甚を使った言葉の意味、使い方を説明していきます。
「幸甚」を使うシーンは?
ここでは、「幸甚」を使うシーンを解説します。
主に使用する相手は目上の方
「幸甚」はかしこまった敬語であることから、目上の方、自分より立場が上の方に対して使います。また、社内では使わず、主に社外の方に向けて使用します。
例えば、メールの返信が1週間以内に欲しいという依頼をする場合、目上の方や立場が上の方が相手であれば、「ご多忙のところ恐れ入りますが、1週間以内に返信をいただければ幸甚でございます」のように用います。
自分と同等の立場の方、または目下の方に対して、このようなメールを送ると仰々しい印象になりますので、「ご多忙のところ恐れ入りますが、1週間以内に返信いただければ幸いです」とした方が良いでしょう。
贈り物をするとき
ビジネス上で目上の方に何か贈り物をするときに、「受け取ってもらえたら嬉しい」という意味で使います。ビジネス以外でも大学でお世話になった教授が退職されるときなどに使うこともできます。
<例文>
- 「お気に召して頂ければ幸甚に存じます」
- 「ご笑納いただければ幸甚です」
- 「ご受容いただけると、幸甚でございます」
「幸甚」の使い方・例文
ここでは、「幸甚」の使い方や例文を紹介します。
「幸甚に存じます」
もともとは手紙で使われてきましたが、最近ではビジネスメールでも使われることが多くなっています。基本的に目上の方に使い、親しい間柄の方に使うと仰々しい印象を与えてしまいます。
■相手の配慮や心遣いに感謝を伝えるとき
「~していただき幸甚に存じます」という形で使い、「~してくれて大変ありがたく思います」という意味になります。
<例文>
- 「今後とも変わらぬご愛顧を賜れば幸甚に存じます」
- 「このような素晴らしい会にお呼びいただき幸甚に存じます」
■自分の依頼や要望を伝えるとき
<例文>
- 「~していただければ幸甚に存じます」
- 「~してくだされば幸甚に存じます」
- 「ご多忙のところ恐れ入りますが、ご返信いただければ幸甚に存じます」
- 「ご出席くだされば幸甚に存じます」
「幸甚の至りです」
「幸甚の至りです」は「こうじんのいたりです」と読み、「これ以上ない幸せ」という意味になり、感謝の気持ちを存分に表すときに使います。主に手紙やビジネスメールで使い、会話の中で使用することはないでしょう。
目上の方に対して敬意を示し相手を立てる表現で、自分と同等の立場や目下の方には使いません。また、社内より社外で使うことが多い言葉です。
<例文>
- 「お招きいただき幸甚の至りです」
- 「〇〇様とお会いできたことは幸甚の至りでございます」
- 「弊社セミナーに出席いただき幸甚の至りでございます」
幸甚を使うときに注意したいポイント
ビジネスシーンで使うと、相手に対してより丁寧に、より敬う様を表せる「幸甚」という言葉ですが、使うときには注意したいポイントがいくつかあります。
以下にあげるポイントを把握し、気をつけて使用しましょう。
相手が目上であっても親しい間柄
幸甚は目上の方、自分より立場が上の方に使うと説明しましたが、その方との関係性にも注意が必要です。
目上の方であっても親しい間柄であった場合、幸甚を使うことによって、よそよそしい・大袈裟と思われることもあると言えるでしょう。その場合は、「幸い」「光栄」などに置き換えると良いでしょう。また、相手によっては幸甚を使う方が喜ばれる場合もあります。
まずは、相手との関係性を考え、幸甚を使うか、もしくは他の言葉に置き換えるかを判断するようにしましょう。
多用や乱用
幸甚は「幸福の最高表現である」ということを踏まえ、多用・乱用は避けましょう。
ビジネスレターやメールを送る際、丁寧な表現を心掛けるあまり、何度も幸甚を使用してしまうことがあります。しかし、これでは相手に対してしつこい印象を与えてしまったり、わざとらしいと思われたりしてしまいます。ひとつの文章の中で1回使う程度に収めると良いでしょう。
また、メールのやりとりをするたびに使うのも大袈裟になります。ここぞという場面で使うことを心掛けましょう。幸甚は一般的には文末に使われ、文章を締める役割をすることも併せて覚えておきましょう。
幸甚の前には一言記載
幸甚は曖昧な表現でもあるため、いつまでにどうして欲しいのかなど、具体的な一言を付け加えることが大切です。
例えば、「返信いただければ幸甚でございます」という文章の場合、「返信して欲しいけど、なくても構わない」といった意味に受け取られてしまう可能性があります。
必ず返信が欲しいという場合には、「何卒返信いただければ幸甚です」や「〇月〇日までに返信を頂ければ幸甚でございます」などのように、具体的な依頼内容を幸甚の前に付け加えましょう。
幸甚の言い換え表現
「幸甚」は主に目上の方、自分より立場が上の方に使うことを説明しましたが、自分と同等の立場の方や目下の方に使うときは、どのような表現が良いのでしょうか。
次に、幸甚の言い換えについて説明します。相手によって適した表現を使い分けられるようにしておきましょう。
幸いです
「~してくれると嬉しいです」という意味合いで使う場合は、「~していただければ幸いです」が用いられます。
<例文>
- 返信いただければ幸いです。
- 気に入っていただけると幸いに存じます。
親しい間柄の方、同等の立場の方、目下の方に対しては「幸い」という表現を使う方がより自然になります。
非常にありがたいです
相手からの行為に感謝する場合は、「非常にありがたいです」「ありがたく存じます」を用い、「嬉しいです」「助かります」という意味で使います。
<例文>
- 非常にありがたい言葉を頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。
- 結構な品をお送りいただき、ありがたく存じます。
- 困っているところを助けて頂き、ありがたく存じます。
光栄です
光栄の意味は「人に認められたり、褒められたりして名誉に思うこと」で、自分が嬉しく思ったときや、ありがたく思ったときに使います。目上、目下、どんな立場の方にも使えますが、主に目上の方に対して使います。
<例文>
- この度はこのような素晴らしい賞を頂き、光栄に存じます。
- お褒めにあずかり光栄に存じます。
- 過分なお言葉を受け、身に余る光栄です。
幸甚の意味や使い方を正しく理解しよう
「幸甚」は日常の会話や文章で使うことはないので、ビジネス文章に縁がない方には、馴染みがない言葉でしょう。
目上の方や立場が上の方への感謝の気持ちを伝えるときや、依頼をするときに「幸甚」を使うことによって、より丁寧なワンランク上の文章になります。
相手の立場、使うときのポイントを正しく理解し、「幸甚」を使ってみましょう。それにより、ビジネスマンとしてのステップアップにもつながることでしょう。