RADIO FISH「PERFECT HUMAN」の作編曲をはじめ様々なアーティストに楽曲を提供する、DJ/アーティスト・音楽プロデューサーのJUVENILE(ジュブナイル)。昨年12月に☆Taku Takahashi、TeddyLoid、福山潤、藤森慎吾などのアーティストらを迎えた自身初のセッションアルバム『INTERWEAVE』をリリースした。

その中に収録された「AWESOME」をともに生み出したのが、アーティスト・May'n。これまで「恋しさと せつなさと 心強さと」カバーアレンジや「涙の海を東へ」の作曲など、もともと楽曲制作でも関わりをもっていたふたり。今回は、そんなふたりの交友関係や楽曲誕生秘話など、たっぷり語ってもらった。

  • May'n。『マクロスF』『アクエリオンロゴス』『アズールレーン』など様々な作品の楽曲を担当。2010年から世界ツアーを行い、サンフランシスコ、ロサンゼルス、フランス、ドイツ、韓国、上海、杭州、成都、広州、台湾、香港、マレーシア、シンガポール、インドネシアなどで単独公演を開催している

●元々は世に出ることを想定されていなかった「AWESOME」

――おふたりが制作のなかで一緒にやり取りをされたのは、最初のカバー楽曲のときですか?

May'n 最初はそうです。……あれ? でも会ったのはそれより前だっけ?

JUVENILE 「よろしくお願いします」みたいな挨拶ぐらいはあったと思うよ。「恋しさと せつなさと 心強さと」のカバーのときも、アレンジだけだったのでそんなにやり取りはなく。

May'n そうそう。特にあの曲は「ストリートファイター 30周年日本版テーマソング」としての公式カバーだったので、そのときは密なやり取りはそんなにない状況だったんです。

JUVENILE 今回の『INTERWEAVE』はめちゃくちゃ自由だったけど、あのときはつつがなくといったら変だけど、間違いはしちゃいけないというか。

May'n 逆に今回は、初めてジュブさん(=JUVENILE)と一緒に曲作りをさせてもらえたような感覚があって、同世代のアーティストとしてすごく刺激にもなりました。

  • JUVENILE。手がけてきた楽曲のYouTube総再生数は1億回以上。「From Tokyo To The World」を掲げ、独自のCity Music「JUVENILE World」を発信し続けるDJ・アーティスト

――それ以前にも、お互いの曲を結構聴かれていたんでしょうか?

May'n はい。ジュブさんの作品を最初に認識したのはRADIO FISH。逆に、ジュブさんの存在を知ったあとで「えっ!? あのRADIO FISHの人だったんだ」みたいな感じで認識したんですよ。そのあともOOPARTZとして出された、いろんな曲も聴かせていただいています。

JUVENILE 僕は、結構初期に武道館のDVDをもらったのが最初で。名前だけはその前から知っていたんですけど、ちゃんと曲を聴かせてもらったのは、そのライブDVDが最初でした。今でこそ僕も速いテンポの曲も作るんですけど、最初の印象は「速いし声高いし、うまっ!」みたいなもので。

May'n あはは(笑)。

JUVENILE 今までの自分の音楽遍歴にあまりない音楽をやられていたので、すごく新鮮でしたね。

――今回タッグを組まれた「AWESOME」は、まさにJUVENILEさんのフィールドであるクラブミュージックです。

JUVENILE 元々、そういう系の曲も好きだという話をしていたんですよね。

May'n そう。まず「音楽の好み、めっちゃ合うね」みたいな話で盛り上がっていたんですよ。

JUVENILE それで、ごはんに行ったときに、普段好きな曲とかについての話をする機会がありまして。「今歌っている曲が嫌いとかじゃなくて、もし今やっているのとは違うような曲を歌うなら、どういうのをやる?」みたいな話もしたんですよ。それで、この曲みたいなディスコやファンク調のEDMも結構好きということだったので、やってみようとなって。

May'n ちょうどお互い時間のあるタイミングだったので「一緒に楽しい音楽作ってみようよ」みたいな話から作り始めたのが、「AWESOME」だったんです。だから私は、世にすぐ出るとは思わず(笑)。

JUVENILE アルバムに入れるなんて言ってなかったもんね。

May'n そう。私がDTMも勉強したくて「教えて」って言ったところから、遊びの延長みたいにベースを作っていった曲だから。

――いいですね。純粋なクリエイトの先にできた曲というか。

May'n そうそう。だから本当に「音楽作るって楽しい!」という気持ちがすごく込められているし、やっぱり元々は遊びのつもりだったので (笑)、今までに歌ったことのない感じの曲を作ってみたくて。「珍しい方向のものを見てみたい」という気持ちのなかの制作で、自分的にも新しくて面白いものになりました。

JUVENILE 僕、すごくやりやすかったです。アイデア自体を出すことは結構得意だと思っているんですけど、だからこそ決められないんですよね。「これもいいし、これもいいし……」となっちゃう。

――「どれを選んでも正解なんじゃないか?」と思ってしまいますよね。

JUVENILE そうなんです。でもMay'nちゃんはアイデアを出したら「こっちがいい」ってどんどん決めてくれるので、すごく楽なんですよね。方向が決まれば、またさらに新しいものを乗せていけばいいから。

May'n 私は選択が早いですね。人生の選択もすぐ決めるし(笑)。たしかに「あ、こっちいいじゃん!」みたいな感じでポンポン決まっていた気がする。

JUVENILE で、鍵盤でメロディ作ってすぐそのままラララみたいに歌って、ベースは2~3時間ぐらいでできたんですよ。元々制作が早い方ではあるんですけど、決めてくれたおかげで普段以上に早く完成しました。

●心から自分の気持ちで歌えるうえに、バランス感覚も”今”に刺さる歌詞

――歌詞は今回、May'nさんがご一緒される機会の多い藤林聖子さんが手掛けられています。

JUVENILE アルバム全体を通して、実は恋愛から家族愛まで「LOVE」という「裏テーマ」があります。そのなかでMay'nちゃんの曲は、ベタベタした「誰が好き」というよりも、自分への愛。「誰になんと言われようと、私は私でいこうよ」みたいな像がいいよねというのは最初に話しました。でも逆に、それぐらいしか言ってないよね?

May'n うん。実は、もともと自分で歌詞を書きたかったんですけど、曲が上がって歌詞を作る段階で、ちょうどいろんな制作や舞台が重なってしまったので、他の方に書いていただくことになって。それで、「本当に心から自分の気持ちでうたえる歌って、自分以外なら誰が書いてくれるかな?」と考えたときに、絶対的信頼を置いている藤林さんがすぐ頭に浮かんだんですよ。

――出来上がりはいかがでしたか?

May'n 今の時代だからこそ歌えるというのもありますし、メッセージはすごく胸にぐっとくるけど、決して重くなければ説教臭くもない……というのが本当に素晴らしい。May'nっぽさも洋楽っぽさもある、すごくちょうどいいところの歌詞を書いていただけたように感じています。

――JUVENILEさんは歌詞の中に、お気に入りの部分はありますか?

JUVENILE 2番の「占い読み漁り 安心する夜もあるけど ほら次の日あたり 1行だって 思い出せない」ですね。次の日にはもう覚えてないっていうの、めっちゃあるなぁって(笑)。

May'n でもそれが、「占いなんて気にしちゃだめだよ」でもないのがまた素敵なんです。

JUVENILE そうそう。それで安心してもいいし忘れたっていいじゃん、っていうのがすごくよくて……バランス感覚が素晴らしいよね。「頑張ろうぜ!」とか「やろうぜ!」じゃなくて「ま、いいんじゃない?」みたいな「熱くないポジティブ」なところが、令和っぽいなと思います。