斎藤八段は6勝1敗で単独首位。佐藤康九段は3勝4敗で挑戦消える

第79期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の7回戦、▲斎藤慎太郎八段(5勝1敗)-△佐藤康光九段(3勝3敗)戦が1月12日に東京・将棋会館で行われました。結果は121手で斎藤八段が勝利。A級順位戦初参加でいきなりの挑戦に向けてまた一歩前進しました。

本局の戦型は、佐藤康九段の雁木対斎藤八段の左美濃となりました。急戦を含みに駒組みを進める斎藤八段に対し、佐藤康九段は専守防衛の姿勢をとります。金銀4枚でがっちりと雁木を組み上げ、玉は囲いと反対側へ移動させて「右玉」の構えです。

斎藤八段が角道を止めて急戦を断念すると、佐藤康九段は玉の大移動を開始。6二の玉が、最終的には2一にまで移動しました。この移動に手数をかけることによって、低い陣形を維持するのも狙いでしょう。

低姿勢で徹底待機という工夫を見せた佐藤康九段に対し、今度は斎藤八段が工夫する番です。生半可な仕掛けでは敵陣を突破することはできません。そこで斎藤八段は左美濃を構築していた6九の金を▲5八金~▲4七金と攻めに活用していきました。これが好着想の順だったようです。

金を前進させることで打開に成功した斎藤八段がリードを奪いました。敵陣の弱点である角頭を、歩を巧みに用いて攻めていきます。攻めには元守り駒の金も大活躍。最終的には敵陣の1三にまで到達し、役目を終えました。

守りを破られた佐藤康九段は玉を逃がそうとしますが、斎藤八段はしっかりと左右挟撃形を築いて逃がしません。最後は佐藤玉に必死を掛けて勝負あり。佐藤九段の最後の攻めにも正しく対応し、相手を投了に追い込みました。

この勝利で斎藤八段は6勝1敗に。2敗で追うのは5勝2敗の広瀬章人八段、4勝2敗の豊島将之竜王です。斎藤八段は残る稲葉陽八段、佐藤天彦九段戦で連勝すれば文句なしの挑戦。1勝1敗でも最低プレーオフ進出となります。

B級1組から上がってきたばかりの棋士が、そのまま名人へ挑戦するケースがここ数年は目立ちます。過去5期で佐藤天彦八段(74期)、稲葉陽八段(75期)、渡辺明三冠(78期)と、3人も挑戦権を勝ち取っています(渡辺三冠は出戻りですが)。さらに佐藤天九段、渡辺名人は名人奪取も果たしました。斎藤八段も彼らに続くことができるでしょうか。

一方、本局に敗れた佐藤康九段は3連敗で3勝4敗の成績に。順位がいいため、4勝すれば残留が確定する佐藤康九段。残り2戦の相手は豊島竜王と菅井竜也八段です。

初の名人挑戦を目指す斎藤八段
初の名人挑戦を目指す斎藤八段