米労働省が2021年1月8日に発表した12月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数14.0万人減、(2)失業率6.7%、(3)平均時給29.81ドル(前月比+0.8%、前年比+5.1%)という内容であった。
(1)12月の米非農業部門雇用者数は前月比14.0万人減と、前月の33.6万人増から減少に転じ、市場予想(5.0万人増)も下回った。前月比での減少はコロナ・ショックで2,000万人余りが職を失った2020年4月以来8カ月ぶり。業種別では宿泊・娯楽が49.8万人減少しており、新型コロナウイルス感染再拡大の影響が強く出た格好だ。製造業や建設業では3~5万人程度の小幅な増加となった。
(2)12月の米失業率は前月から横ばいの6.7%となり、予想(6.8%)を下回った。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は11.7%と、前月から0.3ポイント改善。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月と同じく61.5%だった。
(3)12月の米平均時給は29.81ドルとなり、前月から0.23ドル増加。伸び率は前月比+0.8%、前年比+5.1%となり、いずれも予想(+0.2%、+4.5%)を上回った。(1)で示されたように、宿泊・娯楽など比較的低賃金の業種で雇用者が減少したことが平均時給を押し上げたと見られる。
米12月雇用統計は、米国経済の厳しい現状を示す結果となった。春先のコロナ禍で失われた約2,200万人の雇用は、その後7カ月かけて1,200万人ほどが回復したが、その回復が一旦止まった格好だ。失業率もコロナ前の3%台には程遠い水準で低下基調がストップした。
ただ、市場はあくまでも前向きだった。米国株は主要3指数が揃って過去最高値を更新。ドルは米12月雇用統計の発表直後後こそ小幅に売られたが、米長期金利が上昇する中で買い優勢に転じた。足元の新型コロナウイルス感染拡大が下火になれば、バイデン次期政権の経済対策が奏功して米経済は再び回復軌道に乗るとの見方が強いようだ。
さらには、米12月雇用統計が冴えない内容だったことで、バイデン新政権がより大胆な追加経済対策を講じるとの観測も浮上した。なお、バイデン次期大統領は、米12月雇用統計の発表を受けて「雇用統計で一段の追加経済対策が必用なことが示された」「現時点で行動を起こすことが経済に対する支援になる」などとするコメントを発表した。