パナソニックが東京・有明に構えるショールーム「パナソニックセンター東京」で、同社の最先端技術を紹介する展示会「CES 2021 Panasonic in Tokyo」が開催されます。会期は1月12日〜15日(招待制)。イベントの開幕に先立って開催されたメディア向けツアーで、開発中のHDR対応VRグラスなどを体験しました。

  • CES 2021 Panasonic in Tokyo

    パナソニックが開発を進めている、HDR対応VRグラスの試作機

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    世界最大級の家電・テクノロジー見本市「CES 2021」と連動して開催される、パナソニックの技術展示イベント「CES 2021 Panasonic in Tokyo」

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    パナソニックセンター東京の外観。りんかい線「国際展示場駅」から徒歩2分、新交通ゆりかもめ「有明駅」からは徒歩3分の立地にある

VRグラス試作機の画質は5K/HDR対応に。装着性も改善

今回のイベントは、パナソニックも毎年参加する世界最大の家電・テクノロジー見本市「CES」と連動しています。2020年まで米ラスベガスで開催されていたCESですが、主催する米CTA(全米民生技術協会)の決定により、2021年は全面オンラインでの実施となりました。パナソニックは同社ショールームに設ける展示スペースにて、徹底した感染症対策を講じたうえで少人数の完全招待制によるイベントを実施します。なお、同じ内容の展示は特設サイトからも体験できます。

イベント会場にはパナソニックが開発を進めるVRグラスが出展されていました。2020年1月開催の「CES 2020」で初めてお披露目された試作機に改良を加えた最新バージョンです。

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    パナソニックのVRグラスを装着したところ。丁番(ちょうばん、フラッシュが当たっている箇所)に、新たにモーショントラッキング用のセンサーが搭載された

パナソニックのVRグラスは眼鏡のように軽快に身に着けられるデザインと、同社の映像分野の先端技術を活かした高画質を特徴としています。新しい試作機も同じコンセプトを継承。どことなくSFっぽくレトロな雰囲気のある、インパクトあふれるデザインも進化していました。2021年度中の商品化実現に向けて細部をブラッシュアップしているそうです。

本機は眼鏡のように身に着けるウェアラブルデバイスです。グラスの部分は非透過型で、超小型のマイクロ有機ELディスプレイを載せています。現在の仕様では装着した状態で周辺の風景が見られないため、基本的には身に着けた状態で、椅子などに座って映像を楽しむ用途に向いています。

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    メガネのように軽快に身に着けられるデザイン。ディスプレイ部分は非透過タイプ。丸眼鏡のようなレトロなデザインがインパクト大

VRグラスの開発に豊富な経験と実績を持つKopinと共同開発し、眼鏡メーカーのノウハウも取り込んで練り上げたとのことで、装着性はとても高くなっています。筆者も会場で最新の試作機を身に着けてみました。2020年に公開されたVRグラスの試作機では少し前のめりになってしまっていた比重が、今回の新しい試作機では改善されて疲れにくくなったと感じました。

重さは従来の試作機よりも少し重くなっているそうですが、テンプルの先端に先の広がったフィン形状のスタビライザーを設けたことで、耳の後ろでしっかりとグリップされるため、頭を動かしても本体がグラつかず、安定感も良くなっていました。

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    テンプルの先端にフィンを付けて耳の後ろでしっかりとグリップする形状。リムの側圧がやや強めで、商品化に向けて改善されるべきポイントだと感じた

従来の試作機はレンズを入れ替えてユーザーの視力に合わせたフォーカス調整が行えました。新しい試作機では商品化を意識して、左右ディスプレイの下側にあるレバーでより手軽に視度調整が行える機構に進化しています。ディスプレイの間にあるダイヤルを回して瞳孔間の距離調整も行えます。

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    ディスプレイの下側にあるレバーで視度調整を行う

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    瞳孔間の距離調整機構も備えている

画質も従来は4K相当でしたが、最新モデルでは5K相当(2,560×2,560ドット)のHDR対応に強化されています。残念ながら今回のイベントでは実際の映像をチェックできませんでしたが、パナソニックならではの高画質がどこまで進化したのか、試せる次の機会が楽しみです。

最新の試作機は、VRグラスとPCなどの映像出力機器をUSB(Type-C)ケーブルで接続し、有線でコンテンツを入力して表示する仕様。グラス本体にはプロセッサや電源、ストレージはなく、接続機器で再生している映像・音声をVRグラスで視聴するかたちです。

音声はテンプル(つる)に埋め込んだスピーカーで再生。内蔵スピーカーとアンプはパナソニックのハイエンドオーディオブランド、テクニクスのエンジニアがチューニングを手がけました。、本体にアナログヘッドホンジャックを載せて、イヤホンやヘッドホンでも音を聴けるようにすることも検討しているようです。

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    つるの中に高音質スピーカーとアンプが内蔵されている

パナソニックのVRグラスは、高画質を追求して理想的な没入体験を実現することをコンセプトとしてうたっています。最新の試作機も基本姿勢に変わりはないものの、ゲーミング用途も想定して、顔の向きだけでなく上下回転方向に動かした体の動きもトラッキングできるように、6DoF(six degrees of freedom)対応のモーションセンサーを新たに追加しています。

同社の担当者によると、VRグラスの商品化は今後、例えば5Gスマートフォンと連携させるといったコンシューマー向けの展開を想定しているとのこと。加えて、BtoB向けのソリューションビジネスにも対応できるように、さまざまなフィードバックを取り込みながら検討を重ねていくそうです。

パナソニックが関わるスマートなテクノロジー&デバイスが盛りだくさん

CES 2021 Panasonic in Tokyoのイベント会場には、VRグラスのほかにも、パナソニックが実用化に向けて研究を進めるさまざまな技術と製品のプロトタイプが展示されています。

「オーラ可視化システム“aura meditation”」は、人のオーラ(エネルギーの形)を可視化できるというヒューマンセンシングデバイスです。パナソニックの先行開発に特化するデザインスタジオ「Future Life Factory」と、製品の品質評価や技術解析を基盤として開発を担う「プロダクト解析センター」の協業により、BtoB向けを軸とした応用検討が進められています。

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    人のオーラの形を読み取れるという、ヒューマンセンシングデバイスのコンセプトモデル「aura meditation」

一枚板のスレート形状のデバイスには顔画像を認識するカメラが内蔵されています。正面の大型ディスプレイの前に立つ、人物の表情や目線、顔や体のわずかな動きをカメラが読み取り、独自開発の評価アルゴリズムによりデータを解析。体と心にかかるストレスのレベルを図形とテキストで表示します。ユーザー固有の「オーラ」は異なる色・形・質感を組み合わせ、288通りのパターンから導き出されるオブジェクトとして、形を変えてディスプレイに表示されます。

会場ではわずか20秒間ほどで、カメラが人物のステータスを読み取り、解析したオーラをディスプレイに表示するデモンストレーションを体験できました。

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    カメラで読み取った人物の表情などの情報を元に、独自のアルゴリズムを使ってわずか20秒ほどで解析。オーラの形を読み取る

aura meditationの基礎技術はパナソニックのオートモーティブ向けのソリューションとして、ドライバーの眠気対策等にも既に活用されています。同じ技術を今後多方面に展開して、例えばマインドフルネスやウェルネスを向上させる感性センシング技術に練り上げ、人々の生活に役立てていきたい、と同社の担当者は抱負を語っていました。

会場の屋外スペースには、パナソニックが実験的に展開するスタートアップ支援のプログラム「100BANCH(ヒャクバンチ)」が出展しています。

こちらでは人の体温や心拍数、周辺の温度や湿度といった情報をモバイルアプリに集約して、現在の気分に合わせたお茶を淹れてくれるスマートIoTティーポット「teplo」、独自のスチームブレンダー機構により短時間でチョコレートドリンクを調理できる、MITSUBACHI PRODUCTSの「インフィニミックス」のデモンストレーションを行っています。

  • CES 2021 Panasonic in Tokyo

    100BANCHとの連携で生まれたスマートIoTティーポット「teplo」を展示

  • CES 2021 Panasonic in Tokyo

    MITSUBACHI PRODUCTSの「インフィニミックス」によるチョコレートドリンクの実演も見られる

イベント会場から毎日配信される、特別セミナーのライブ動画は同社特設サイトから視聴できます。2021年のCESはいつもと異なるオンライン形式での開催となりますが、自宅にいながら最先端のテクノロジーに触れられる絶好の機会。これを活用しない手はないと思います。

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    イベント期間中はオンラインで数々の特別セミナーが実施される