「感慨深いものがあります」などと、会社役員のスピーチや著名人がインタビューを受けた際に答えているのを耳にすることがありますが、「感慨深い」という言葉の意味を詳しく知らない方もいるでしょう。

本記事では「感慨深い」の意味や、具体的にどんな感情のときに使えばいいのか、使用場面と正しい使い方を、豊富な例文を交えて解説。目上の人に使えるかなどの注意点、考え深い・感動との違いや類語、英語表現も確認していきましょう。

  • 感慨深いの意味や使い方、類語などを解説していきます

    感慨深いの意味や使い方、類語などを解説していきます

感慨深いの意味と読み方とは

まずは感慨深いの基本的な意味や読み方を見ていきましょう。

感慨深いの意味は、思い出などに対ししみじみと心に感じる度合いが強いこと

「感慨」とは、物事に対して心に深く感じて、しみじみとした気持ちになることや、そのときの気持ちを表します。よって「感慨深い」とは、「心の底から深く感じる度合いが強い」という意味の言葉です。

特に切なさや思い出深い話の感想を述べる時に使用され、曖昧で情緒豊かな表現だと言えます。喜びや悲しみなどにも使用することができます。

感慨深いの読み方は「かんがいぶかい」

感慨深いは、「かんがいぶかい」と読みます。「概」は「概念」などで使われる際と同じ読みです。

ビジネスシーンにおける「感慨深い」の使い方・例文

  • ビジネスシーンでの感慨深いの使い方を知りましょう

    ビジネスシーンでの感慨深いの使い方を知りましょう

次は、ビジネスシーンにおける感慨深いの使い方として、なにかを達成したとき、スピーチをするときなど、場面ごとに例を挙げて紹介します。例文を知って理解することで、感慨深いという言葉を正しく使いましょう。

なにかを達成した場面

感慨深いという言葉は、ビジネスシーンでは、なにかを達成したときによく使われています。

自分のしたことの成果が出たときなどに、目上の相手や周囲に対して「うれしい」と言うだけでは幼稚に聞こえるため、「感慨深いです」「感慨深い気持ちです」などと言い換えて使います。

<例文>

  • 10年以上温めてきた作品が世に出たことは、実に感慨深い
  • 2年にわたる長期プロジェクトを無事完了でき、とても感慨深いです

スピーチをする場面

感慨深いは、スピーチでも心境を伝える際の言葉として使われます。

努力が実を結んだ話をするときや、成長についてうれしい気持ちを他人に話す際に「感慨深い思いに浸りました」「感慨深いものを感じます」と使うと、落ち着きのある表現として聞こえるでしょう。

<例文>

  • こうして皆さまの前に立つことができて感慨深いものを感じます
  • 新たな立場でこうして故郷に戻ってきて、感慨深い思いに浸りました

目下の人の功績などについて述べる場面

「感慨深い」は、部下や後輩、子供など、自分が長らく目をかけてきた人、面倒を見てきた人が、何かを成し遂げたとき、評価を受けたときなどにも使用できます。

  • ○○さんの初受注の知らせを聞いて、指導係を務めた私も感慨深い気持ちです
  • 彼の志望校合格は、担任である私にとっても大変感慨深い
  • 娘から結婚の報告を受けたときには、感慨深い気持ちになりました

感慨深いを使うときの注意点

感慨深いを使用する際には、気を付けるべきことがあります。

目上の人の功績などには使えない

目上の方の功績などに対して賛辞を述べる際、感慨深いを使うと違和感を与える可能性があります。

例えば、「○○ディレクターがご栄転とは、感慨深いですね」「課長が昇進とは、感慨深いものです」といったように、目上の方に対して感慨深いという表現を使うと、相手の苦労をさも分かっているかのように聞こえたり、その上で皮肉っているような言い方になったりします。

違和感を与えるだけではなく、生意気だ、失礼だと思われる危険性があるでしょう。

今さっき見聞きしただけで、関わりが浅いことには使えない

「感慨深い」は、思い出などに対ししみじみと心に感じることであり、今起きた(知った)事実そのもの、というよりは、そこに至るまでのプロセスに思いをはせるというニュアンスがあります。

よって、「さっきふらっと入った、初めて行った店の料理がおいしくて感慨深いよ」といった使い方はできません。そのお店の料理人の努力や苦労というプロセスを知らないためです。

「感慨深い」と「考え深い」の違い

  • 読み方が似ていても「感慨深い」と「考え深い」の言葉の意味は違うため注意しましょう

    読み方が似ていても「感慨深い」と「考え深い」の言葉の意味は違うため注意しましょう

感慨深いと似た読み方の言葉に「考え深い」がありますが、意味は大きく異なります。考え深いとは、「考え」が「深い」ということであり、思慮深く考えを巡らせることを表します。例えば「彼は考え深い方だ」や「夫は考え深い様子でその場を離れた」という使い方をします。

「感慨深い」は、個人的感情を伝える時に使用しますが、考え深いは、感情ではなく思考の動きを表現する際に使用します。

「感慨深い」と「感動」の違い

「感動」とは、物事に深い感銘を受け、心を強く動かされることを意味します。心に深く感じるものがあるという点では「感慨深い」と共通しますが、「感慨深い」の方が、そこに至るまでのプロセスに思いをはせて、しみじみと感じるというニュアンスがあるでしょう。

例えば

  • 友人が作った映画を観て、感動した
  • 友人が作った映画を観て、感慨深かった

という文章の場合、前者はその映画自体の内容に感動した、または友人が映画を作ったという事実に感動した、といった意味合いになるでしょう。

後者については、その友人が幼いときから映画監督になることを夢見て、並々ならぬ努力をしていたことを知っており、困難を乗り越えその友人がようやく夢をかなえたことを、深く身に染みて感じている、といった場面を想像させます。

感慨深いの類語・言い換え表現

  • 感慨深いの言い換え表現もこの機会に覚えましょう

    感慨深いの言い換え表現もこの機会に覚えましょう

感慨深いの言い換え表現には、感無量・余韻のある・心に染み渡る・感極まる、などがあります。言い換え表現を知ることで、場面や状況に応じて正しく使い分けていきましょう。

感無量

「感無量」とは、感慨無量の省略した形です。無量は、量をはかれないほど多い、という意味であり、大きく心を動かされた様子を表します。

<例文>

  • 泣いてばかりいた○○君が、こんなにも立派になって感無量だよ
  • ピアノコンクールで優勝した彼の顔は感無量だ
  • 苦しい時こそ他の方の温かみや優しさを感じ、感無量だった

余韻のある

「余韻のある」は、「余った音」という字から構成されていることから、音が鳴り終わった後に残っている響きを表し、時間の経過がある中で徐々に広がる感情を伝える際に使用されます。

<例文>

  • 余韻のある物語のラストだった
  • 余韻のある鐘の音が、いつまでも耳に心地よく残っている

心に染み渡る

「心に染み渡る」は、心に深く入りこむこと、じわじわと心を動かされた様子が感じられるという意味の言葉です。

<例文>

  • こんなに言葉が心に染み渡ることは、いまだかつてあっただろうか
  • 多くの方々の心に染み渡る名言を残した

感極まる

「感極まる」は、非常に感動する様子、強い感動を表す時に使用します。今起こった強い感動を表す時にも使用しますが、過去の出来事と今をしみじみ思い出して使うこともあるため、感慨深いの類語として活用できます。

<例文>

  • 相手の誇りを感じ、死闘の最中といえど、感極まるものがあった
  • 自分の名前が発表されたとき、これまでの苦労が頭をよぎり、感極まって涙を流した

感慨深いの英語表現

  • 感慨深いの英語表現も覚えておきましょう

    感慨深いの英語表現も覚えておきましょう

近年、外国人採用枠なども増えているため、ビジネスシーンで英語を使う場面が増える可能性があります。では、「感慨深い」の英語表現にはどのようなものがあるか見ていきましょう。

moving

「moving」には「心を打つ」「涙ぐましい」という意味があります。このmovingを使って、「deeply moving」と表現すると、感慨深いという意味になります。その他にも「deeply emotive」といた表現も使われます。

touching

「touching」は、「何かが心に触れる」「感動させる」という意味があります。共感や同情の気持ちを表現する場合に用いられますが、内容によって感慨深いの英語表現でも使用できるでしょう。

「感慨深い気持ち」「感慨深い思い」など、「感慨深い」を使いこなそう

感慨深いとは、心を強く揺さぶられる出来事が起きた時などに、心の底から深く感じる度合いが強いという意味の言葉です。

人間の心を表す言葉は他にもたくさんありますが、正しく意味を理解することで豊かな表現力を身に付けることが可能でしょう。この機会に、感慨深いという言葉の意味を理解し、正しく使えるようになりましょう。