「既出のデータは不要です」「既出でしたらすみません」

ビジネスシーンや公の場でときに目にする「既出」という言葉。読み方や意味、正しい使い方をご存知でしょうか。社会人になって読み方や使い方を間違えていると、恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。

本記事では、「既出」の読み方や意味、正しい使い方をご紹介します。

  • 「既出」とはどういう語意?

    キ人前で間違えてしまうと恥ずかしいかも

「既出」とはどういう語意?

「既出」とは、漢字の通り「すでに出された」「すでに提示された」ことを表します。過去に一度取り上げられた内容や情報が出てきたときや、前から議論の対象となっていることに対して「何度も繰り返されている」という語意を含んで使用されることもあります。

従来より熟語として存在していた「既出」ですが、近年はネットスラングとしても広く知られています。SNSなどで個人が自由に投稿・発言できるようになったことで、すでに一度出たアイディアや画像、動画などのことを「既出」というようになったようです。

これは同じ人物が同じ画像や動画を投稿したときも、別の人が投稿したときも同様に「既出」といわれます。まれに元の画像・動画を投稿した人以外の人がよく似た画像や動画を投稿してしまった際も、「既出」と指摘されてしまうこともあるようです。

「既出」の正しい読みは「きしゅつ」

「既出」の読み方は「きしゅつ」となります。「既」は「すでに」という音読みもありますが、同様に訓読みの「キ」を用いた熟語には「既婚」「既存」「既知」「既決」などがあります。

「がいしゅつ」「すでで」は間違い!

前述したようにネットスラングとして使われるようになってから、ネット上では「がいしゅつ」「そくで」「すでで」と読んでしまう人が増えているようです。当然ながらこれらの読み方は間違いとなります。

「がいしゅつ」と「そくで」はそれぞれ漢字を「概」「即」と見間違えてしまったために起きている誤読です。「そくで」は熟語として認められた読み方ではありません。 いずれもネット上で発言したくても変換できないので打ち込むときに間違った読み方だと判断することができます。しかし「既出」はビジネスの場面でも使われる言葉です。口に出すときにうっかり間違った読み方をすることのないように気を付けましょう。

  • 「既出」とはどういう語意?

    ネットの情報だけに頼らず辞書を引いてみてもいいかも

「既出」の類語は?

「既出」と同じ意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは「既出」の類語について見ていきましょう。

「前述」

以前に公になったものを表すとき、「前述(ぜんじゅつ)」という言葉を使います。会議などの場でも使われますが、論文やブログの記事のような長文でも、同じ原稿の中で一度出てきた話題に対して「前述したように」といった使われ方をします。

「前出」

「前述」とほとんど同じような語意で、以前に公的な場で開示されたものを表すときに使います。少し違いがあるとすれば、「前述」の方がより主語が明確だといえるでしょう。

論文や記事の中で「前述したように」と表現すれば書き手が「前述した」ことになります。また、「〇〇さんが前述したように」と主語を指定することもできます。「前出」の場合は主語が不明確でも使うことができます。「前出の資料の通り」といった表現をするとき、「前出」の主語は明確にされません。

「前陳」

「前陳」は「以前に言葉で述べたこと」に対して使われます。「前述」は文語でも口語でも使うことができ、「前出」は言葉に限らず使用できますが、「前陳」が使えるのは口頭での会話に対してのみです。「陳」は「陳述」という言葉にも使われるように、「言葉で述べる」という意味があります。

「既存」

「既存」はすでに存在しているものに対して使います。「既出」は提示された「こと」に対して使うため、実物でも概念や言葉でも対象となりますが、「既存」はどちらかといえば実物を対象に使われるイメージです。「既存のファイル」「既存の映像」というように使われます。

  • 「既出」の類語は?

    「前出の資料をご確認ください」というときにも使われます

「既出」の対義語は?

「既出」の対義語についてみていきましょう。「既出」がすでに提示されていることを表すので、その対義語は「まだ出ていない」ことになります。

「新出」

これまで出たことがない新しいものが出たときに、「新出」という言葉が使われます。日常では「新出漢字」「新出単語」というように学校などの授業の中で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

「未出」

「未出」は、まだ世に出ていないことを表します。こちらは辞書に載っていない言葉です。「既出」の「既」の反対語が「未」であることから、「既出」の反対語としてつくられた造語のようです。「未出の証拠映像」というような使い方をします。

「未発表」

「既出」がすでに発表されているものに対して使うので、反対語として「未発表」が該当します。これはまだ発表されたことがないことを表す言葉です。「発表」という単語そのものが公の場などで表向けに知らせること、世間に知らせることを表すため、「未発表」は世間や表向きには出ていない情報などに対して使うといいでしょう。

「未公開」

「未公開」も「未発表」と同様、「すでに公開されている」という語意の「既出」に対する反対語とすることができます。「公開」は「発表」の類語になるので同じく公衆に対して情報を知らせることを表します。知らせることだけを表す「発表」と異なり、「公開」することで「提示した画像や映像の閲覧を許可する」というニュアンスも含んでいます。

  • 「既出」の対義語は?

    未発表の情報です

「既出」の使い方

具体的な例文を見ながら、「既出」の使い方を確認しましょう。

「既出のデータに誤りがある」

すでに提出されているデータに対し、指摘するときに使います。対象となるデータの名称が長かったり思い出せなかったりしたときに、「既出の」とスマートに言うといいでしょう。

「既出も既出、使い古された企画です」

何度も繰り返し提示されていることに対して使う「既出」です。口語では例文のように2回繰り返して言えば、すでに何度も使われていることを強調することもできるでしょう。

「既出でしたらすみません」

ビジネスの場ではよく使われる表現です。途中から会議やプロジェクトに参加したとき、自分では既出ではなくとも、最初からその場にいる人にとっては一度は聞いた話、使い古されたアイディアである可能性もあります。「既出でしたらすみません」と謙虚な姿勢を示すことで、同じことを聞かされていたとしてもあまり気にならなくなるでしょう。

ネットやSNSでの使い方に注意

気を付けておきたいのは、ネットやSNSでの使い方です。ビジネスシーンのように自分で提案したことに対して「既出」と使うのであれば問題ないですが、ネットやSNSでは主に、自分以外の人が投稿したものに対して「既出」と指摘することがほとんどです。

しかし、類似画像についても「既出」と指摘するなど、ネットスラングとしての「既出」は人によって基準が異なっています。自分の価値観を押し付けることがないよう、注意が必要でしょう。

  •  「既出」の使い方

    このツイート、既出ですよね

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「既出」の語意や読み方、使い方についてまとめました。特に近年はネットスラングとしても知られるようになった単語ですが、ネット上でもビジネスシーンでも正しく使えるようにしておきましょう。