1月8日に公開予定だった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のIMAX上映。作業不備により上映見合わせとなっていたが、カラーおよび東宝は同日、「IMAX各シアターへの修正データの再納品が完了し、1月9日からIMAX上映を順次開始する」と発表した。

  • EVANGELION:3.333

    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.333 YOU CAN (NOT) REDO.』
    (C)カラー

一時見合わせとなった理由についてカラーは、「カラーの納品した映像、音声素材に対し、IMAX仕様への仕上げ作業をおこなった際、IMAX社作業過程において一部音声トラックの未反映による重大な作業不備が発覚したため」と説明していた。

IMAXも、最終クオリティーチェックの際に、技術的な面の過失による不備が発覚し、同作品の上映を一時見合わせることになった責任を認め、「今回発生してしまった重大なエラーに対し、深くお詫び申し上げる」と謝罪。「あくまでIMAXの技術的な問題で、カラーの映像制作スケジュール、納品スケジュールに起因するものではない」と強調している。

1月23日公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』IMAX上映についても、「同じ事態に陥らないよう細心の注意を払い制作することを約束する」とコメントしている。

『ヱヴァ新劇場版:Q』IMAX版はどこが進化? 見どころ解説記事が公開

既報の通り、『エヴァンゲリオン』シリーズのIMAX上映は今回が初めて。その進化点について、アニメ特撮研究家の氷川竜介氏が解説した記事が、1月7日にエヴァンゲリオン公式サイトに掲載された

IMAXの大きな特徴は、視界を覆う巨大スクリーンと独自の画面比率、デジタル・メディア・リマスタリング技術(DMR)による鮮明な映像。さらに、シアターの設計やプロジェクション、⾳響までもが独⾃にカスタマイズされているのも注目ポイントだ。

庵野秀明氏は、初監督作品『トップをねらえ!』以来、アスペクト比をはじめとする上映フォーマットを重視してきた。それは「『この状態で鑑賞してほしい』という、映像の理想追求へのこだわりがあるため」だと氷川氏は説明する。そして、映画館の品質が向上した2021年、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の最高の上映環境のひとつとしてIMAXが選ばれ、連動して『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のIMAX上映も決定した。

  • EVANGELION:3.333

    (C)カラー

『:Q』のIMAX上映にあたり、カラーは全カットを2K解像度で再撮影し、IMAXに対応。英文タイトルは劇場初公開時の『EVANGELION:3.0』(2012年)、Blu-ray/DVD収録用に再調整された『EVANGELION:3.33』(2014年)から『EVANGELION:3.333』に更新されている。

カラーの担当者によると、劇場公開版(3.0)は素材が2Kサイズで作られており、撮影で1,280×544ドットにした上で劇場公開された。だが、今回はIMAXで『シン・エヴァ』を公開する意図が先にあり、『:Q』からシームレスに観てもらうために、新たに2,048×870ドットという1.6倍の解像度で再撮影したとのこと。

このため、「(反NERV組織「WILLE」の空中戦艦である)ヴンダーの外観など、線が複雑に絡み合ったようなカットが非常にクリアで、全体にパキッとした印象が出た」、「コア化した赤い大地も粒子状の動きなど、ディテールの表現力が上がった」としている。

ほかにもIMAX化されたことが分かりやすいポイントとして、「アスカとマリのプラグスーツ。肩から腕が色指定ごと変わり、データを塗り直した」、「レイのスーツの足の模様が無くなった」、「瞳の処理を変更。ハイライトや虹彩などディテールを追加した」など、マニアックな見どころが多数紹介されている。

なお、『:Q』のIMAX版が4Kではなく2Kで再撮影された理由については、記事中で担当者へのインタビューとともに詳しく解説されている。