ソニーは1月8日、独自の立体音響技術を活用した音楽体験「360 Reality Audio」のエコシステムを拡充。臨場感あるビデオコンテンツの配信や、他社へのライセンス提供などを進めるほか、対応ワイヤレススピーカー2機種を今春以降に発売すると発表した。
360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ、以下360RA)は「CES 2019」でソニーが発表した、オブジェクトベースの空間音響技術で実現される音楽体験のこと。詳細は「CES 2020」のソニーブースのレポート記事で解説している。
2020年から欧米を皮切りに展開されており、複数のストリーミングサービスで対応楽曲を配信。アリシア・キーズ、リル・ナズ・X、ミーガン・ザ・スタリオン、ノア・サイラス、ザラ・ラーソンの新曲を含む、4,000曲以上の対応楽曲が配信されている。
国内では2019年12月からAmazon Musicのプレミアムサービス「Amazon Music HD」において、360RA楽曲が「3Dミュージック」音源の一部として提供されており、Amazonのスマートスピーカー最上位機「Echo Studio」で楽しめる。
ソニーは今春以降、360RA対応のワイヤレススピーカー「SRS-RA5000」、「SRS-RA3000」を発売する予定で、一台のスピーカーで360RAの立体的な音場を再現できるとのこと。また、360RA対応ヘッドホンでより臨場感ある音楽体験を実現するために、音場を一人ひとりに最適化するソニー独自技術のライセンスと、対応スマートフォンや車載オーディオで360RAコンテンツを再生するための技術ライセンスを、360RA対応機器を開発するオーディオ機器メーカーに提供していく。
360RAの新たな取り組みとして、立体的な音場に映像を組み合わせた臨場感あるビデオコンテンツの配信や、対応楽曲制作ツール「360 Reality Audio Creative Suite(サンロクマル・リアリティオーディオ・クリエイティブスイート)」の共同開発を進める。
ビデオコンテンツについては、「CES 2021」に合わせて、ザラ・ラーソンによるパフォーマンスを、360 Reality Audio初のビデオコンテンツとして1月12日午前7時から楽曲配信アプリ「Artist Connection」で配信する。日本国内でも視聴体験が可能で、iOS/Android搭載のスマートフォンとヘッドホンを組み合わせて体験できる。なお、ソニーの推奨ヘッドホンとスマートフォン専用アプリ「Sony | Headphones Connect」を使うと、音場を一人一人に最適化した、より没入感のある音楽体験が味わえるとする。
主要音楽レーベルやストリーミングサービスと連携し、360RAによる立体的な音場と映像を組み合わせたアーティストのライブパフォーマンス映像の配信サービスも、2021年内に開始する予定。欧米などでサービスを展開しているnugs.netで配信予定だが、日本国内では「360 Reality Audioの配信サービスの開始後に対応予定」とのこと。
対応コンテンツ拡大に向け、360RAの制作環境も整備を進める。ソニーは音楽ソフトウェア開発会社のVirtual Sonicsと共同で、対応楽曲制作ツール「360 Reality Audio Creative Suite」を開発した。さまざまなDAWソフトのプラグインとして使用でき、Virtual Sonics子会社のAudio Futuresから4月にダウンロード発売を予定している。
【訂正】初出時、楽曲制作ツール「360 Reality Audio Creative Suite」の発売時期を「1月末」としていましたが、「4月」に延期されたため、当該箇所を訂正しました(2月4日 16:00) |
CESでは、グラミー賞受賞プロデューサーのキース・ハリスが、実際に360 Reality Audio Creative Suiteを使って対応楽曲を制作するシーンや、その使用感を語る動画を配信する。
このほか、クリエイターが360 Reality Audio Creative Suiteで制作した楽曲を配信する取り組みの「クリエイター・プログラム」を、Music.com(運営:米Inspiration is Everything)、および米国の音楽配信会社The Orchardと協業して展開する予定。