「各々」の使い方を正しく理解していますか? 似たような言葉との使い分けが正しくできているか、自信がない方も多いでしょう。
本記事では、正しい意味から似ている言葉との違い、ビジネスシーンでの使い方まで解説していきます。また、例文も紹介していくので使い方をマスターすることができます。
「各々」の意味とは
「各々」の正しい意味は、多くのもののそれぞれのこと・集合や集団の中の一つひとつです。一人ひとりやそれぞれというような意味合いも持ちます。対象は大人数でも、少人数でも使うことができます。
「各々」の由来
「各」はこの漢字1文字でも、「おのおの」と読むことができます。この漢字はかつて、「ある集団や集合の中の一つひとつ」という意味を指しており、すべて別個体のことを指していました。
「各々」は、「己己(おのれおのれ)」から来ていると考えられており、己は自分やその本人を指すことから、「その人その人」と個人を示す意味に転じました。 同じ単語や意味を表す言葉を重ねて作られた畳語表現の1種であり、「各々」は「各」が複数であることを表現している言葉なのです。
正しい読み方は「おのおの」? 「かくかく」?
「各」という漢字は「かく」と読めることから「かくかく」と読んでしまう人がいますが、それは間違いです。正しい読み方は「おのおの」なので、きちんと把握しておきましょう。
先述した通り「己己」からきている言葉なので、その読みから転じて「おのおの」になった覚えておくといいでしょう。
「各々」と似ている言葉と違い
一人ひとりや一つひとつを指す言葉は「各々」以外にもあります。「各々」と、同じような意味で使われますが、言葉によっては対象がものか人か違ってくるので、相手の指示を正しく理解するために押さえておくことが重要です。 ビジネスシーンで使われる言葉も多いので、「各々」との違いを明確にしておきましょう。
「それぞれ」
「それぞれ」は「各々」とほぼ同じ意味を指していますが、対象となる範囲が広く抽象的なイメージです。人とものどちらにも使うことができます。
「会議に使う資料は各々で用意してください」を「会議に使う資料はそれぞれで用意してください」と置き換えることができます。しかし「それぞれ」の方がややくだけた表現に感じられます。 日常会話で使いやすい表現ですが、ビジネスシーンで使いたいときには「各々」を使うのが適切です。
「各自」
「各自」は「集団の中の一人ひとり」という意味です。この場合「かくじ」と読むので「各々」と混同しないようにしておきましょう。
「各々」との違いは人を対象とした言葉であり、ものに対しては使えないということです。組織やグループは問わないので、人であれば使うことができます。 「美術品は各々が優れている」という文章を「美術品は各自が優れている」と言い換えることはできません。
「めいめい」
「各々」の同義語として使われることが多いのが「めいめい」です。意味は「集団の中の一人ひとり」です。「めいめい」は漢字で書くと「銘々」で、この漢字には尊敬の意味が含まれています。ただ、目上の人に対して尊敬の意味を込めて「銘々」を使うことは少ないでしょう。
「めいめい」は人に対して使われるので、ものに対して使うのは不適切です。「新作の商品は各々が素敵です」という文章を「新作の商品は銘々が素敵です」と言い換えることはできません。
「個々」
「個々」は集団の中の一人ひとり・一つひとつを意味し、「各々」と同じ意味を指しています。「各々」よりも、個人やひとつずつのものを強調したいときに使われることが多いようです。人にもものにも使うことができるので、「各々」をそのまま言い換えることができます。
「個々で目標を設定しましょう」や「作品は個々素晴らしい」などの人やものを対象とした使い方ができます。
「各々」をビジネスシーンで使いたい場合
ビジネスシーンでは、「各々」が使われるシーンが多くあります。特にビジネスメールや挨拶の際に使うことが多いので、敬語表現やメールでの表現方法について把握しておくことが重要です。正しい使い分けをして、いざというときに恥ずかしい思いをしないようにしておきましょう。
敬語表現は「皆様方」
「各々」を敬語表現に置き換えたいときに使うのが「皆様方」です。挨拶やプレゼンをするときに、目上の人ばかりで「各々」を使うのは不適切です。「皆様」や「皆様方」を使うことで、相手にも好印象を残すことができるでしょう。
「各々方」はあまり使わない
「各々」の敬語表現である「各々方」ですが、あまり使われないのが現状です。「各々方」を使いたいシーンでは、「皆様方」を使う方が一般的です。
メールで使うときは「各位」がベター
「各位」は集団の中の一人ひとりに対して、敬意を払った言い方です。「皆様」や「皆様方」と同じ意味を持っており、ビジネスメールや招待状ではよく使われる表現です。 「関係者各位 〇〇のお知らせ」のように使い、基本的には各位の前に「様」を着けることはありません。「各位」自体が敬語表現なので、二重敬語になってしまうからです。
しかし、「お客様」や「ご家族様」のあとに「各位」を使う場合には、そのまま使います。「お客様各位」が正しい表記です。
メールで平仮名か漢字か悩んだら
メールで「各々」を使いたいときに、平仮名で書くか漢字で書くか悩んでしまうこともあるでしょう。「おのおの」と平仮名で目にする機会はなかなかありません。一般的には漢字で書くのが適切でしょう。
ただ、前後の文章で漢字を使いすぎて、読みにくい文章になっているときには平仮名を使った方が見やすい文章になります。前後の文章との平仮名・漢字のバランスを見て、どのように書くかを判断しましょう。
「各々」を使った例文
最後に「各々」を使った例文をみていきましょう。対象は人でもものでも使うことができるので、さまざまな場面で使うことができます。ビジネスシーンで使う際に迷わないようにしておきましょう。
「各々でご準備ください」
書類や資料など個人で準備してほしいことを、「各々」を使って表現した例です。会議や打ち合わせの際に使うことができるでしょう。これを敬語表現に直すと、「皆様方でご準備ください」になります。対象者が目上の人の場合には注意が必要です。
「各々の作品が素晴らしい」
「各々」の対象をものにした場合の表現方法です。一つひとつの作品が素晴らしいというときに、「各々」を使って作品を指すことができます。「個々」や「銘々」に置き換えて使うこともできますが、対象が人である「各自」には言い換えることができないので注意しましょう。
「各々の価値がある」
こちらはものに対しても人に対しても使えます。一人ひとりに価値がある、一つひとつに価値があることを表現したいときの例文です。ものに対して使いたいときには「個々」や「銘々」に、人に対して使いたいときには「各自」に置き換えて使うこともできます。
日常生活などくだけた場面で使いたいときには、「それぞれ」でもいいでしょう。
「各々」の英語表現
ビジネスシーンなどで英語を使う機会があるという人もいるかもしれません。各々の英語表現は「each」になります。例えば「各々の意見を聞かせてください」と言いたい場合は、「Please let me know each opinion.」などと表現することできるでしょう。
「respectively」も各々という意味を持つ英単語ですが、eachとは使い方が異なるので注意してください。
各々とは反対にまとめて指す場合に使う言葉
「各々」は、集団の中の一つひとつを指す言葉ですが、反対に集団をまとめて指す場合にはどのような言葉があるのでしょうか。ここではいくつかの言葉を紹介します。
皆
皆という言葉はよく使われるので知っている人も多いでしょう。「居合わせているすべての人」や「あるものすべて」という意味で、集団をまとめて指す時に使えます。
全員
全員も皆と同様によく聞かれる言葉です。「団体など集団に属するすべて人」を意味する言葉として使うことができます。皆の言い換え表現としても使えるでしょう。
一同
一同は「そこにいるすべての人々」や「そこにあるものすべて」という意味で使える言葉です。「社員一同」や「関係者一同」といった使われ方をするケースも多くあります。
また、「御一同様」というように敬称をつけて使うこともできます。ビジネスでは年賀状の宛先などに書かれることが多いので、見たことがある人も多いでしょう。似たような言葉に「御一行様」というものもありますが、こちらは団体旅行時のホテル・旅館の案内板などで主に使われる言葉です。
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ビジネスシーンでよく使われる「各々」ですが、読み方や使い方を把握しておかないと恥ずかしい思いをしてしまいます。
似ている言葉に置き換えることも可能ですが、その際は対象がものなのか人なのかを考えることが重要です。また、目上の人に使う場合は敬語表現に言い換える必要があります。
メールでは敬語表現をするほかに、読みやすい文章にするためにほかの表現にしたり、平仮名や漢字の使い分けをしたりできるといいでしょう。