本記事では「名残」や「名残惜しい」というフレーズの詳しい意味、シーン別の使い方と例文を紹介。語源に類語とその違い、英語表現もまとめました。
「名残(なごり)」の意味や由来とは
「名残」とは、物事が過ぎ去った後にまだ影響が残っていることや、別れるときに思いきれない気持ちが残ることという意味があります。
「名残」の由来は「余波」からきていると考えられています。「余波」は、海で風がなくなった後も波が静まらない様子を指します。その様子から転じて「波残り」という言葉が生まれました。これは波が打ち寄せた後に残る海藻などを表現しています。
この「波残り」が短縮され、「なごり」という言葉が誕生しました。もともとの「波残り」の意味から物事が過ぎ去った後の影響や、別れを惜しむ気持ちという意味になりました。
よく使われる表現「名残惜しい」とは
「名残」という言葉を耳にするのは「名残惜しい」という表現がもっとも多いのではないでしょうか。「名残惜しい」とは、別れがつらい・心残りがあるという意味を指します。
人との別れがつらいときや、解散するとき、まだ一緒にいたいという気持ちを表現するときに使う言葉です。ビジネスシーンでも、転勤や退職のときによく使われています。
「名残り」と書くのは間違い?
パソコンやスマートフォンで「なごり」を変換してみると、「名残」と「名残り」どちらも出てきます。そのことから正しい書き方がわからなくなってしまう方もいるようです。この場合、「名残」と送り仮名をつけないのが正解です。
文部科学省が出している「送り仮名の付け方」という規定には、「名残」と記されています。書くときや変換する際には「名残り」としないように気を付けましょう。
「名残」「名残惜しい」のシーン別の使い方・例文
「名残」はどのような場面で使うのが正しい使い方なのでしょうか。ビジネスシーンでも使われる言葉なので、間違った使い方をしてしまうと恥をかいてしまったり、相手にマイナスの印象を与えたりしかねません。
シーン別に例文を紹介していきますので、どのようなときにどう使うのが適切なのか把握しておきましょう。
人との別れ
「名残」の意味にもあるように、別れを惜しむときに使える言葉です。日常生活でもビジネスシーンでも、人との別れのシーンは必ずといっていいほどありますね。
「退職されるのは名残惜しいです」「引っ越ししてしまうなんて名残惜しい」と相手との別れを惜しむ気持ちを表現します。もう少し一緒にいたかったという気持ちを表したいときに使うのがいいでしょう。
会食や会合を切り上げるとき
取引先との会食や忘年会など、会社の人やビジネスの相手とご飯を食べたりお酒を飲んだりする機会があります。その際の解散の言葉として使われることが多いです。
「名残惜しいですが、今日はお開きです」などと解散するときのスピーチでも使うことができます。ただお開きになることを伝えるよりも、「名残惜しい」を使うことで楽しかった気持ちやまだ話していたかったという気持ちを伝えることができます。
実際はそうでなかったとしても、「名残惜しい」を使えば相手にも好印象を与えることができるので覚えておいたほうがいいでしょう。
ものを手放すとき
「名残」の対象は人のみならずものでも適切な使い方です。愛着のあるものや長年使っていたものとの別れは寂しいものですよね。そんなときに「名残惜しい」を使うのは、正しい使い方です。
「このアウターを捨ててしまうのは名残惜しい」というように、ものとの別れを惜しむときに使います。
土地を離れるとき
転勤や引っ越しなどで土地を離れる際にも使うことができます。「〇〇県を離れるのは名残惜しいですが」のように、転勤などでどこかへ行かなくてはならなくなった場合に、別れがつらいことを表現します。
「名残」の類語とその違い
「名残」と似ている意味を表す言葉を紹介していきます。「名残」の意味は大きく2つあります。
- 消えることなく残っていること
- 物事の影響を受けること
それぞれに似ている意味があるので、どちらの意味で置き換えることができるのかを把握しておきましょう。
残る
「残る」は「名残」を構成している漢字にも使われているので、なんとなく似た意味であることがわかる方もいるのではないでしょうか。
意味としては先述の1、つまりは「消えることなく残っていること」の方に属し、その後にとどまる・消えずにあるという意味です。
余韻
「余韻」は後に残る味わいや響きを意味します。先述の2、つまりは「物事の影響を受けること」のほうに属し、「あの頃の余韻に浸る」という使い方です。
残留
「残留」は漢字の通り残りとどまることを意味します。また、後にものが残っていることも示しています。
先述の1(消えることなく残っていること)に近い意味合いで、気持ちというよりかは状況を表す言葉です。「野球選手が球団に残留した」「2位のまま残留している」というように、ある場所や状態のまま残っていることを表現できます。
影響
「影響」はある事柄が他の事柄に変化や反応を起こさせることをいいます。「名残」となる事柄の原因を指す言葉ですが、似ている言葉でもあります。
「彼の影響を受けて〇〇が好きになった」「地震の影響で電柱が壊れた」のように使うことができます。
「名残惜しい」の類語・言い換え表現
「名残惜しい」をほかの言い方で表現することもできます。同じ言葉を何度も使ってしまうと、特にビジネスメールではしつこい文章になってしまいます。
その際に他の言葉で言い換えることもできるので、把握しておくのがいいでしょう。
後ろ髪をひかれる
「後ろ髪をひかれる」は、未練がある気持ちや心残りがありその場から離れられないことを意味しています。「名残惜しい」と同じような意味で使われ、強い後悔の気持ちを表しています。
「後ろ髪をひかれるが、その場を去った」と使うことで、その対象に向けた未練を表現することができます。
心残り
「心残り」はある物事が気になって気がかり・心配になることを意味しています。未練でもあり、やり残したことに対しての後悔を表現しています。
尾を引く
「尾を引く」は物事が過ぎ去っても残っていることを意味しています。未練を含んでいるので「名残惜しい」の類義語でありますが、少しニュアンスが違うので注意が必要です。
「尾を引く」では物事から時間がたっても残っている様子を示しています。「名残惜しい」は現在進行形で惜しい気持ちを表しているので、言い換えるときには注意が必要です。
「名残」「名残惜しい」の英語表現
「名残」「名残惜しい」を英語で表現するにはどうすればいいのでしょうか。
remnant
「remnant」は「残り」「面影」などの意味を持つ言葉です。
「This is a remnant of medieval days.(これは中世の時代の名残です)」といった形で使用します。
regret
「regret」は、「残念」「遺憾」などの意味を持つ言葉で、失敗してしまったことや間違えた選択をしてしまったときに、後悔や別の選択肢を選んでおけばよかったと感じることを意味します。
ただし、単に未練があるということだけではなく、対象が失敗や間違えた選択にあるということは覚えておきましょう。
reluctant to leave someone
「名残惜しい」は、まだ一緒にいたいけれど別れるといったシーンで、別れを惜しむ気持ちを意味しています。そのため英語で「名残惜しい」を表現する時もこの「別れを惜しむ」部分に焦点を当てます。
「reluctant to leave someone」が人との別れを惜しむ表現です。
「I'm reluctant to leave her.(彼女と離れるのが名残惜しい)」といった形で使用します。
また「remnant」自体にも「嫌々ながら」「しぶしぶの」などの意味があるため、別れのシーンで用いることにより、「名残」「名残惜しい」というニュアンスを表すことができます。
「He shed tears because of a reluctant parting.(別れが名残惜しくて彼は涙を流した)」といった形で使用します。
「名残」の意味を理解して正しく使おう
「名残惜しい」はビジネスシーンでもよく使われる言葉です。特に会食や退職などの別れのシーンで活躍します。正しく使えるようにしておきましょう。
誰か・何かとお別れするのがつらい、もっと一緒にいたかったという気持ちを表すのに最適です。似ている言葉もありますが、「名残」との違いを把握しておけば正しく置き換えることもできるでしょう。