「ウォッチドッグス レギオン」、「アサシンクリード ヴァルハラ」、「Call of Duty: Black Ops Cold War」、「サイバーパンク2077」と2020年末はAAA級のPCゲームが続々と発売され、ゲーム好きにとってはどれからプレイするのか悩む人も多かっただろう。
それと同時に問題になるのがストレージの容量だ。ゲームのインストールに必要な容量は肥大化傾向にあり、原稿執筆時点で各ゲームのフォルダは、「ウォッチドッグス レギオン」が55.5GB、「アサシンクリード ヴァルハラ」が52.5GB、「Call of Duty: Black Ops Cold War」が140GB、「サイバーパンク2077」が66.8GBに達している。この4本だけで314.8GBにもなり、500GBクラスのSSDではちょっと心配。ほかのゲームをプレイすることを考えると1TBクラスのSSDがほしくなるところだ。
そこで今回は最新、人気のNVMe SSDを9製品、容量は1TBに統一して集め、どれがゲーム向きなのか調べてみたいと思う。まずは、各製品の紹介と「CrystalDiskMark 8.0.0a」による最大性能と「PCMark 10-Storage(Full System Drive Benchmark)」による、実アプリベースの使用感を見てみる。
テスト環境は以下の通りだ。
CPU | AMD Ryzen 9 5900X(12C24T) |
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マザーボード | MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-3200で動作) |
グラフィックスカード | MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC(NVIDIA GeForce RTX 3070) |
システムSSD | Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版(October 2020 Update) |
CFD販売「PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND」
CFD販売
PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND
実売価格:22,000円前後
インターフェース:PCI Express 4.0 x4
シーケンシャルリード:4,950MB/秒
シーケンシャルライト:4,400MB/秒
Phisonの第1世代PCI Express 4.0対応コントローラ「PS5016-E16」を搭載。NANDにWestern Digital製のBiCS 4を採用することで、旧モデルの「PG3VNF」シリーズより性能向上を果たしている。CrystalDiskMarkではほぼ公称通りの結果、PCMark 10-Storageの結果も高いほうとゲーム性能にも期待がかかる。
CFD販売「PG4VNZ CSSD-M2M1TPG4VNZ」
CFD販売
PG4VNZ CSSD-M2M1TPG4VNZ
実売価格:24,000円前後
インターフェース:PCI Express 4.0 x4
シーケンシャルリード:7,000MB/秒
シーケンシャルライト:5,500MB/秒
コントローラには、PhisonのPCI Express 4.0対応としては第2世代となる「PS5018-E18」を対応。公称速度は、コンシューマー向けとして最速クラス。実際にCrystalDiskMarkでも、シーケンシャルリードで6969.46MB/秒とほぼ公称通りの実力を見せた。PCMark 10-Storageのスコアも高い。
Kingstone「KC2500 SKC2500M8/1000G」
Kingstone Technology
KC2500 SKC2500M8/1000G
実売価格:21,000円前後
インターフェース:PCI Express 3.0 x4
シーケンシャルリード:3,500MB/秒
シーケンシャルライト:2,900MB/秒
8チャンネル接続に対応したSilicon Motionのハイエンドコントローラ「SM2262EN」を採用。PCI Express 3.0接続だが、PCMark 10-Storageのスコアは高く、実アプリでのレスポンスのよさを表している。CrystalDiskMarkの結果も公称通りと、あまり目立っていない製品だが完成度は高い。
Micron「Crucial P1 CT1000P1SSD8JP」
Micron Technology
Crucial P1 CT1000P1SSD8JP
実売価格:12,000円前後
インターフェース:PCI Express 3.0 x4
シーケンシャルリード:2,000MB/秒
シーケンシャルライト:1,700MB/秒
QLC NANDを採用することで低価格化を実現し、大ヒットとなった。NVMe SSDとしては、それほど高速ではないが、それでもSerial ATA接続のSSDよりは高速。今回取り上げた9製品の中でCrystalDiskMark、PCMark 10-Storageともスコアは一番低いが、それでもハイエンドモデルに比べて半値となるコスパは強烈だ。
Micron「Crucial P5 CT1000P5SSD8JP」
Micron Technology
Crucial P5 CT1000P5SSD8JP
実売価格:17,000円前後
インターフェース:PCI Express 3.0 x4
シーケンシャルリード:3,400MB/秒
シーケンシャルライト:3,000MB/秒
Crucialブランド初のハイエンドNVMe SSD。コントローラ、NAND、キャッシュすべてMicron製と自社製品で固めた意欲作だ。CrystalDiskMarkを見ると、PCI Express 3.0接続としては上位クラスの速度を持つ。価格が下落傾向で、ハイエンドモデルとしては買いやすくなっている点も見逃せない。
PNY「XLR8 CS3040 M.2 2280 NVMe Gen4x4 SSD M280CS3040-1TB-RB」
PNY Technologies
XLR8 CS3040 M.2 2280 NVMe Gen4x4 SSD M280CS3040-1TB-RB
実売価格:27,000円前後
インターフェース:PCI Express 4.0 x4
シーケンシャルリード:5,600MB/秒
シーケンシャルライト:4,300MB/秒
筆者が確認したところ、コントローラはPhisonの第1世代PCI Express 4.0対応の「PS5016-E16」を採用。CrystalDiskMarkのシーケンシャルリードは4,989.44MB/秒と公称には届いていないが、コントローラを考えると順当なところ。PCMark 10-Storageのスコアは悪くなく、ゲームでの実力も気になるところ。
Samsung「SSD 980 PRO MZ-V8P1T0B/IT」
Samsung Electronics
SSD 980 PRO MZ-V8P1T0B/IT
実売価格:25,000円前後
インターフェース:PCI Express 4.0 x4
シーケンシャルリード:7,000MB/秒
シーケンシャルライト:5,000MB/秒
最新CPU並の8nmプロセスで製造される自社開発の「Elpis」コントローラを採用。低発熱かつ非常に高速な性能を実現し、ハイエンドなPCI Express 4.0対応NVMe SSDとして一気に人気モデルとなった。CrystalDiskMark、PCMark 10-Storageともトップクラス性能を出している。
Western Digital「WD_BLACK SN850 NVMe WDS100T1X0E-00AFY0」
Western Digital
WD_BLACK SN850 NVMe WDS100T1X0E-00AFY0
実売価格:28,000円前後
インターフェース:PCI Express 4.0 x4
シーケンシャルリード:7,000MB/秒
シーケンシャルライト:5,300MB/秒
SamsungのSSD 980 PROと並び、PCI Express 4.0対応NVMe SSDとしてトップクラスの実力を持つ。実際にPCMark 10-Storageでは今回トップスコア。CrystalDiskMarkでは、SSD 980 PROとテストによって勝ったり負けたりとまさに実力伯仲だ。大型のヒートシンクを備えるモデルもラインナップ。
Western Digital「WD Blue SN550 NVMe WDS100T2B0C」
Western Digital
WD Blue SN550 NVMe WDS100T2B0C
実売価格:13,000円前後
インターフェース:PCI Express 3.0 x4
シーケンシャルリード:2,400MB/秒
シーケンシャルライト:1,950MB/秒
エントリークラスのNVMe SSDとしてCrucial P1と並び人気のモデル。キャッシュ用のDRAMを備えないなど、価格を抑える仕様ではあるが、PCMark 10-Storageのスコアはそれほど悪くなく、価格から考えると十分なコストパフォーマンスを持つ。ゲーム用途ではどうなのか楽しみだ。
各NVMe SSDの性能をまとめて比較
各製品の紹介が終わったところで本題に入ろう。PCMark 10-Storageはオフィス系、クリエイティブ系、ゲーム系のアプリを実行し、それを総合スコアとして算出する。ゲーム系は、「Battlefield V」、「Call of Duty: Black Ops 4」、「Overwatch」の3タイトルの起動時間を測定しているのだが、ここでは、その部分だけをピックアップ。それで各NVMe SSDのゲーム性能を見ていく。
やはり強さを発揮したのはSamsungのSSD 980 PROとWestern DigitalのWDBLACK SN850だ。とくにWDBLACK SN850は合計でトップ、ゲーム個別でもすべて最速。実売価格でも一番高いが、それだけの実力があることを証明した。伏兵と言えるのはKingstonのKC2500だろう。PCI Express 3.0接続ながら、合計で3番手に入った。ゲームに強いと言っていいだろう。Crucial P1とWD Blue SN550はエントリークラスらしい結果と言えるが、それでも価格が約2倍になるハイエンドクラスより、おおむね1.5倍ほど処理に時間がかかるだけ。価格差ほど処理速度が落ちるわけではないことを考えると、悪い選択肢ではない。CFD販売のPG4VNZはシーケンシャルリードとライトでは最速クラスだけに、ゲーム性能で伸び悩んでいるのが惜しい。
次はファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク実行時に測定されるローディングタイムを見てみよう。
トップに立ったのはKingstonのKC2500。ここでもゲームに対する強さを発揮した。Intel環境などPCI Express 3.0までしか対応しないPCで、ストレージにゲーム性能を求めるなら有力な選択肢と言えるだろう。2番手グループは、SamsungのSSD 980 PROとWestern DigitalのWD_BLACK SN850。ほぼ同スコアだ。この2製品は最大性能も高く、ゲームだけではなく、どの処理にも強いNVMe SSDと言える。このほか、Crucial P1の健闘も光るところだ。
まとめとして、SSD 980 PRO、WD_BLACK SN850、KC2500が3強だ。ゲーム性能を求めるなら、ここから選ぶのがよいだろう。その一方で、コストパフォーマンスの面から考えると今回最安のCrucial P1やPCI Express 4.0対応としては低価格のCFD販売のPG3VNDも悪くない。今回の結果がゲーム好きのSSD選びの参考になれば幸いだ。