東京2020パラリンピック競技大会では、22競技539種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「アーチェリー」にフォーカスする。
アーチェリーの歴史と競技概要
50メートル、または70メートル先にある的を狙い得点を競う、肢体不自由の選手を対象としたアーチェリー競技。オリンピックとほぼ同じルールで行われるが、障がいの内容や程度に応じて補助用具の使用が認められている。
障がい者を対象にしたアーチェリーが行われるようになったのは1940年代からで、1948年にイギリスの傷病兵のリハビリを行うストーク・マンデビル病院で車いすのアーチェリー大会が開催されている。この大会はのちに「パラリンピックの原点」と言われるようになった。パラリンピックとしてのアーチェリーは、第1回ローマ1960大会で正式競技として採用され、以来、継続して実施されている。
かつては、選手は障がいの程度によって、W1(四肢に障がいがあり、車いすを使用)、W2(下半身の障がいにより車いすを使用)、ST(立つか、いすに座って競技)の3クラスに分類されていた。現在のパラリンピックでは、W2とSTはオープンクラスとして統合されている。
競技種目は3部門に大別され、弓の形が異なる「リカーブオープン」と「コンパウンドオープン」、そして、W1クラス限定の「W1」がある。リカーブオープンとコンパウンドオープンはいずれもW2とSTクラスを含み、それぞれの弓を使って競技を行うのに対して、W1 部門ではリカーブ、コンパウンドどちらの弓を使うかは選手の自由。全部門で男女別の個人戦と、男女各1名による混合(ミックス)戦が行われる。
的までの距離と的のサイズは部門ごとに異なる。リカーブオープンでは、70メートル先にある直径122センチメートルの的で、10点を中心に外側に向かって点数が低くなり1点まで得点帯がある的を使用する。
W1部門では、50メートル先にある直径80センチメートルの中心が10点で外側に向かって点数が低くなり1点の得点帯まである的を使用する。
コンパウンドオープンでは、50メートル先にある直径48センチメートルの中心が10点で外側に向かって点数が低くなり5点の得点帯まである「6リング」と呼ばれる的を使用する。
実施種目は男女別の個人戦と混合(ミックス)戦の全9種目。ランキングラウンドという予選を行い、その順位によって決勝トーナメントの対戦相手が決まる。決勝トーナメントは1対1の対戦形式で勝敗が決まる。
障がいに応じた多様な競技スタイルも見どころ
使用できる2種類の弓のうち「リカーブ」は、オリンピックでも使われる一般的なタイプ。もう1つの「コンパウンド」は、上下の両先端に滑車がついたタイプで、その滑車の働きによってリカーブとは異なる力で弦を引き、矢を射(う)つことができる弓だ。パラリンピックではオリンピックでは見ることのできない、このコンパウンドを使用したアーチェリー競技が見られる。
かつて選手は障がいの程度によって3つのクラス(W1、W2、ST)に分類されていた。障がいに応じて補助用具の使用やアシスタントをつけることもできる。車いすに座ったまま弓を引いたり、口で弦を引いたり、それぞれに工夫しながら、個性あふれるさまざまなスタイルで矢を放つ。
予選ラウンドでは選手は72本の矢を射ち合計得点によりランキングが決まり、トーナメントに進む。試合形式は、部門によって異なる。リカーブ部門の個人戦は5セットマッチで行われ、セットごとに勝者2、引き分け1、敗者0のポイントが加算され、合計6ポイント以上先取すると勝ちとなる。ミックス戦は4セットマッチで行われ、個人戦と同様にポイントが加算され、ペアの合計で5ポイント以上先取すると勝ちとなる。
コンパウンドとW1部門の個人戦は1エンドにつき3射(30点満点)射ち、5エンドの合計得点(150点満点)の高い選手の勝ちとなる。ミックス戦は、1エンドにつき4射(1人2本40点満点)射ち、4エンドの合計得点(160点満点)の高いチームの勝ちとなる。