「自惚れ」は漫画や曲のタイトルとしてもよく使われる言葉なので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。しかし正しい意味や読み方をご存じでしょうか。

本記事では自惚れの意味や例文を交えた使い方、類語や対義語、英語表現をご紹介します。自惚れという心理と自己肯定感の違いについてもまとめました。

  • 自惚れとは

    自惚れの意味や使い方、自己肯定感との違いなどについて解説します

自惚れの意味や読み方とは

早速、自惚れの意味や読み方を見ていきましょう。

自惚れの意味は、実際の能力以上に自分が優秀だと思い上がること

自惚れとは「自分自身に惚れる」という漢字の通り、「実際の能力・姿以上に自分が優れているとおごり高ぶる」という状態のことです。また、このように思い込んでいる人のことを「自惚れ屋」と揶揄(やゆ)することもあります。

自分自身の価値を自分で認めることは大切ですが、「自惚れ」状態の場合は「実際の能力や現実以上」に自分を評価してしまっていることから、周りからも好感を得ることはありません。マイナスイメージでの使われ方をするシーンが多いでしょう。

自惚れの読み方は「じぼれ」ではなく「うぬぼれ」

自惚れは「うぬぼれ」と読みます。「自」は「じ」や「みずか(ら)」と読むことが一般的なので、知らないと難しい読み方かもしれません。この機会に覚えておきましょう。「惚」という漢字は「ほ(れる)」と読むことが多く、うっとりする、恋い慕うという意味を持ちます。

己惚れとも書く

「うぬぼれ」と辞書で調べてみると、「自惚れ」だけではなく「己惚れ」という漢字も出てきます。「自己」ともいうように、「自」も「己」も、どちらも自分自身のことを指す漢字であり、どちらを使っても間違いではありません。

  • 自惚れの意味と読み方とは

    自惚れとは「自分が実際の姿以上に優れていると思い込む」ということです

うぬぼれの「うぬ」って?

うぬぼれには「自惚れ」と「己惚れ」という2つの漢字表記が存在します。どちらも「うぬ」と読みますが、なかなか普段の会話の中でも出てくる言葉ではありません。「うぬ」は昔から日本で使われていた古語の一つです。

次に「自惚れ」の「うぬ」の持つ意味についてご紹介します。

一人称としての使い方

「うぬ」は「おのれ」という言葉がだんだんと変化して生まれた言葉だといわれています。「己を省みる」というように、「おのれ」は自分自身を指す言葉として現代でも使われています。「うぬ」も同じような使われ方をしていたようです。 漫画のキャラクターなどでも自分のことを「うぬは~」と呼ぶことがありますね。

二人称としての使い方

「うぬ(おのれ)」は二人称としての使われ方もします。「うぬはそのようなこともわからないのか」など、相手をののしる際に使用することが多かったようです。また、自分より目下の人を指す際にも使われていました。現代でいえば「貴様」がニュアンスの近い言葉でしょう。こちらも漫画やアニメなどで目にしたことがある方も多いかもしれません。

自惚れの場合は一人称で使う

一人称・二人称として使われていた「うぬ」ですが、「自惚れ」の場合は「自分自身に惚れる」という一人称的な使われ方をしています。「うぬ」という言葉のもとが「己」から来ていると知ると「自惚れ・己惚れ」という2つの表記があることもうなずけますね。

  • うぬぼれの「うぬ」って?

    自惚れの「うぬ」は「おのれ」が変化してできた古語です

自惚れの類語・言い換え表現

「自分自身や持っている能力について過度に評価している」という意味を持つ自惚れ。同じような意味を持つ言葉としては「過信」や「おごり」、「慢心」などが挙げられるでしょう。

また自分のことをとても美しいと思い込んでいる「自惚れ屋」のことを「ナルシスト」と呼ぶこともあります。「ナルシシズム」も自惚れに似た言葉といえるでしょう。

自惚れの対義語

自惚れの反対は「自分に自信がないこと」です。「卑下」や「自虐的」などが対義語として挙げられるでしょう。

自分のことを能力以上に評価し思い上がることはあまりいいこととはいえませんが、自信がなさすぎるのも考えものです。「卑下」や「自虐的」もあまりいい意味では使われない言葉です。相手を褒めるときには使わないので注意しておきましょう。

自惚れを英語で表現すると

自惚れを英語で表現すると「conceit」になります。自惚れた、と動詞的な使い方をする場合は「to be conceit」とするのがいいでしょう。「彼は自惚れている」を英訳すると「He is conceit」となります。ほかにも、「narcissist」なども似た意味となります。

  • 自惚れの英語表現

    「自惚れ」は英語でも表現することができます。日本以外でも通用する概念のようです

自惚れを使った言葉

次に、自惚れを使った言葉についてご紹介します。

自惚れ屋

先ほどから何度か登場していますが、自惚れている人のことを「自惚れ屋」と呼ぶことがあります。あまりいい意味ではなく、相手を揶揄(やゆ)するときに使う言葉です。悪く捉えられてしまうので、使う場所や相手には十分注意するようにしましょう。実際に自惚れている人の前で「自惚れ屋」と呼んでしまうのはトラブルのもとになりそうです。

相惚れ自惚れ方惚れ岡惚れ(あいぼれ うぬぼれ かたぼれ おかぼれ)

「相惚れ自惚れ方惚れ岡惚れ」ということわざもあります。これは恋愛の種類を並べたものです。それぞれ「相惚れ」は両思いのことを、「自惚れ」はひとりよがりになることを、「方惚れ」は片想いのことを、「岡惚れ」はひそかに慕う片想いのことを指しています。昔からこのように恋愛の性質を分けていたと考えると、なんだか面白いですね。

  • 自惚れを使った言葉

    「自惚れ」を使った言葉はいくつかあります

自惚れの使い方と例文

次に、自惚れを使った例文についてご紹介します。例文を通して使い方を学び、「自惚れ」の持つニュアンスや最適なシーンを学びましょう。

「自惚れていたことに気付いて自分自身を恥じた」

「自惚れ」はいい状態のことを指す言葉ではありません。「自惚れていたことに気付いて自分自身を恥じた」など、自分の姿を反省するときに使うことができます。

「自惚れてるわけじゃないけど、このリップ似合うでしょ?」

過信ではなくても、自分のことを自分で褒めるのはなんだか恥ずかしいこともありますよね。「自惚れてるわけじゃないけど~」とワンクッション置くことで、おごっているわけではないと相手に示すことができます。

自分の持ち物やメイクを自慢したいときは「自惚れてるわけじゃないけど、この〇〇似合うでしょ?」などと冗談まじりに使ってみるのもいいでしょう。

「彼ってかなりの自惚れ屋だけど嫌いになれないんだよね」

自惚れは誰かを揶揄する場合に使われる言葉です。そのため、実際に自惚れている本人に向かって「自惚れ」ということはあまりないかもしれません。

自惚れている誰かのことを他の人に話すときは「彼ってかなりの自惚れ屋だけど嫌いになれないんだよね」などというと憎めないキャラクターを伝えることができます。

  •  自惚れを使った例文

    いいイメージの言葉ではないので、使い方には気を付けましょう

自己肯定感と自惚れの違い

最近「自己肯定感」という言葉をよく目にするようになりました。「自己肯定感の高い子を育てよう」や「私は自己肯定感が低くてつらい」というようなことを聞いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

「自分のことを肯定する」と聞くと「自惚れ」と近い意味を持つ言葉のようですが、「自惚れ」と「自己肯定感」はどのように違うのでしょうか。

自己肯定感とは?

自己肯定感とは「自分の在り方や存在意義を積極的に肯定できる感情」を意味する言葉です。1994年に提唱されたばかりの概念で、現在もその意味や他の言葉との違いを検討され続けています。

自分自身を卑下するのが美徳とされてきた日本ではつい「私なんか…」と思ってしまいがちです。しかし、「自分には価値がある」「必要な人間である」と自分自身を肯定することで明るく強く生きていけるのではないかと今注目されています。

自惚れることと違うのは、ありのままの自分を見ているか

「自分に価値がある」というとなんだか自惚れと同じような意味に聞こえますが、自惚れと自己肯定感は大きく異なります。自惚れは自分の姿を実際よりも良く、大きいものだと思い込む感情のことです。自分の弱い部分に蓋をして、実際よりも自分をいいものだとおごっています。

自己肯定感が高いと、自分の弱い部分や苦手なところがあっても「そんな自分も自分らしくていい」とありのままを受け止めることができます。自己肯定感が高い場合はわざわざ自惚れる必要もないのです。

  • 自己肯定感と自惚れの違い

    決して自惚れることがないよう、自己肯定感を養っていきたいですね

自惚れて慢心しないよう、謙虚な気持ちを忘れずに

「自惚れ」は自分自身を実際以上に価値があると思い込むという意味の言葉です。「うぬ」は「おのれ」が変化して生まれた古語のため「自惚れ」「己惚れ」という2つの漢字表記があります。相手の姿を揶揄するときなどに多く使われる悪いイメージの言葉のため、使うシーンには気を配る必要があるでしょう。

最近では「自己肯定感」という言葉も頻繁に聞くようになりましたが、「自己肯定感」は「自分のありのままをそのまま受け止める」という感情のことであるため、実際よりも高く評価してしまう自惚れとは大きく異なります。自分の能力を高く見積もってしまい「自惚れ」すぎるのは恥ずかしいですが、卑下することなく自己を肯定しながら日々を送りたいですね。