ビジネスにおいて、強みを生かすというのは重要なこととされている。鉄道事業者も、それぞれに強みがある。JR東日本と、西武鉄道の親会社である西武ホールディングス。2つの事業者がそれぞれの強みを生かすべく、包括的連携を行い、ワーケーションなどの事業を手がけることになった。
両社の連携開始にあたり、JR品川駅近くにある西武ホールディングス傘下のグランドプリンスホテル高輪にて、共同記者会見が実施された。
■JR東日本と西武ホールディングス、それぞれの強みとは
コロナ禍を経験し、鉄道ビジネスはこれまでと異なる戦略を求められるようになった。人々のライフスタイルも変わり、それに適応しなければ生き残れないという意識を各事業者が持っている。そこで、どのようなニーズが求められるのかを探究していく中で、JR東日本と西武ホールディングスの強みを合わせるべく、連携することとなった。
共同記者会見の場で、JR東日本代表取締役社長の深澤祐二氏は、同社の強みを「長距離輸送が可能な路線網です」と語った。一方、西武ホールディングスの強みとして、「充実したホテル事業」を評価。「この2つをかけ合わせ、場所や時間にとらわれないライフスタイルを提供します」と話す。
その一環で、「新たなライフスタイルの創造×地方創生」を連携コンセプトに、ワーケーションなどの事業を行うとのこと。「事業者が十分な対応ができていないという現実があります。その中で、もっとスムーズに連動させることが必要です」と訴えた。
西武ホールディングス代表取締役社長の後藤高志氏も、「どこにいても仕事ができるように、リ・デザインが必要です」と意気込みを示した。
■どのような「ワーケーション」を提供するか
現在、「ワーケーション」という言葉が注目を集めている。その中で、「利用者」「企業」だけでなく、「地域」も巻き込み、「三方良し」にしたいというのが、両社の考え方だ。移動と宿泊のネットワークを完備している両社が、これまで培ってきた地域社会とのネットワークを合わせ、「地域課題の解決」「地方創生」の要素を盛り込み、新たな価値を加えたいとしている。
「これまでのワーケーションはジョブ型の正社員やフリーランスがおもな対象になっていました。一般企業でも導入でき、労働時間管理の概念が通用する状況でのワーケーションをつくりたいと考えています」と後藤社長。ボランティアワーケーションなどでモデルケースをつくり、地域活性化につなげようとしている。その他、移住トライアルプランをワーケーションの中で体験してもらい、地方創生につなげようとする試みも行う。
一方、コロナ禍で気がかりな企業の組織づくりのためにもワーケーションを提供。研修型のワーケーションでは、軽井沢プリンスホテルを会場とし、JR東日本によるさまざまな活動を織り込んで、チームの一体感を醸成するようなものとする。冬季限定のスキーとセットになったプランや、新幹線の「グランクラス」を使用したラグジュアリー志向のものもある。
■JR東日本と西武鉄道が「駅」を結節点に
さらに、西武鉄道の駅にJR東日本が展開しているブース形シェアオフィス「STATION BOOTH」を展開し、一方でプリンスホテルの客室をJR東日本のシェアオフィスシステム「STATION WORK」の利用者に提供する。両社でMaaSを活用したモビリティサービスを連携させ、品川や軽井沢でサービスを提供することが計画されている。
両社の結節点は「駅」だ。その駅を共同で拠点開発することで、駅やまちの活性化、価値の最大化をめざそうとしている。
「首都圏から地方。そして日本を元気にしたいと考えています」と西武ホールディングスの後藤社長は宣言した。コロナ禍を経て、働き方が変わっていく中で、鉄道においても各事業者が強みを生かし、新しい時代に備えようとしている。