アイリスオーヤマの「極細スティッククリーナーモップ・マルチツール付 SBD-E4P」(以下、SBD-E4P)は、今回評価した10製品のなかで唯一、集じん方式として紙パック式を採用。さらに、静電気を発生させてゴミを取るモップを付属するなど、個性的な機能が特徴です。
家電の専門家が使い倒す「注目のコードレス掃除機」10台チェック | ||
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テスト紹介 | アイリスオーヤマ SBD-E4P |
エレクトロラックス Pure Q9 |
シャークニンジャ CS401 |
シャープ EC-AR5 |
ダイソン Dyson Digital SLIM |
東芝ライフスタイル VC-CL1700 |
パナソニック MC-SBU840K |
バルミューダ BALMUDA THE CLEANER |
日立GLS PV-BH900H |
三菱電機 HC-JD2X |
SBD-E4Pは、「ものすごく軽い」「超スタミナバッテリー」など突出したスペックはありません。必要十分な性能をしっかり備えた、堅実に作られている製品という印象を受けます。
- 本体サイズ(スティック時):幅255×奥行き19×高さ1,039mm
- 本体重量:約1.7kg
- 連続使用時間:標準約20分、ターボ約8分、自動約30分
- 集じん容積:0.3L
- 実勢価格(2020年12月下旬):21,000円前後(税込)
運転モードは標準、ターボ、自動の3つ。吸引テストはすべてターボモードで行っています。
掃除力は?
フローリング
仮想ゴミ:猫砂(直径約5mmサイズ)、重曹、人毛(40cm~45cm程度、1回につき20本)
フローリング吸引テスト(ヘッド往路後)
ヘッドを壁に向けて動かしたあとのフローリング。おおむねゴミは取れていますが、よく見ると重曹がちらほらと残っています。フローリングの溝に落ちた重曹は残りやすいようです。
もともと、ヘッドにブラシを内蔵する掃除機はヘッドを「引く(後退)」動作時にゴミを吸い取りやすい傾向があるのですが、SBD-E4Pもこのタイプ。ヘッドを前進させるだけだと、大きめの猫砂も少し散らかしてしまいます。
フローリング吸引テスト(壁ぎわ2秒吸引後)
一見キレイになった壁ぎわですが、壁から1cmあたりに取り切れていない重曹の細かなゴミがうっすらと残ります。壁ぎわの細かなゴミまで掃除したい場合は、壁に沿ってヘッドを何度か往復させる必要がありました。
フローリング吸引テスト(ヘッド往復後)
ヘッドを1往復させたフローリングの状態。ヘッドの通り道の両脇で、スジ状に残った細かなゴミ(重曹)が気になります。また、よく見るとヘッド両端に近い溝に落ちた重曹は取り切れていません。ヘッドの中央部分はしっかりとゴミを吸っており、この点は評価した10製品のなかでも優秀な結果でした。
カーペット吸引テスト(ヘッド往復後)
仮想ゴミ:猫砂(直径約5mmサイズ)、重曹、人毛(40cm~45cm程度、1回につき20本)
ヘッドを一往復させたカーペット。ヘッド両脇2.5cmほどのエリアに、細かなゴミが残りました。特にヘッド左側のゴミ残りがくっきりと目立っています。フローリングと同じく、ヘッド中央部分の吸い込みは優秀。重曹を撒いて白くなったカーペットの地色(茶色)がくっきりと戻りました。たっぷり撒いた大きな猫砂ゴミも、ほとんど散らかさずに吸引した点も高く評価できます。
吸引テスト総評
カーペットもフローリングもヘッド両脇の掃除が甘め。逆にヘッド中央部分の掃除性能は優秀なので、ヘッドをずらしながら掃除をするユーザーに向いてます。ヘッドを動かす回数は多くなりますが、掃除方法さえ工夫すればカーペットでもきっちり実力を発揮できる製品だと感じました。
掃除時短の重要ポイント、メンテナンスのしやすさ
ヘッドのメンテナンス
写真で見てわかるように、ブラシの両端に髪の毛が幅広く巻き付いてしまいました。髪の長い家族がいる場合は、定期的なメンテナンスが必要でしょう。ブラシ自体は細かな粉ゴミを吸い込んだにもかかわらず、あまり汚れていません。
ゴミ捨て方法
1)本体のカバーを開ける
2)紙パックユニットを引き出す
3)紙パックを分離して捨てる
SBD-E4Pは紙パックなので、ゴミを捨てるときに手が汚れず、ホコリも舞い上がらないのは魅力的。また、サイクロン式のようにダストビン(ダストボックス)がゴミで直接汚れることがないので、掃除機本体のメンテナンスも簡単です。
紙パックの購入というランニングコストはありますが、そのぶんメンテナンスの手間が少ないのがメリット。アイリスオーヤマ製ということもあり、紙パックは通販だけでなくホームセンターなどでも手軽に入手できます。紙パック自体も、25枚入りで直販価格が397円(税別)と低コストなのもポイントです。
購入の決め手? 使い勝手
注目は本体ハンドル部に収納されているモップ。ケースから引き抜くときにモップが静電気を発生する仕組みになっており、細かなホコリを引きつけて吸着してくれます。静電気を利用するモップは、古くからあるものですね。
もうひとつ注目したいのが、掃除機本体が自立すること。最近のコードレス掃除機は上重心タイプが多いため、掃除機だけで自立する製品は少数派。SBD-E4Pはこの数少ない自立可能な掃除機です。自立することで、掃除の中断や再開がラクになります。
多くの家電メーカーは、高いところやすき間を掃除するために、掃除機にさまざまなノズルを付属しています。しかし、「掃除機のヘッドを外してノズルに付け替えるのが面倒」という声があるのも現実。そんなユーザーをターゲットにしたのが、モップ付き掃除機のSBD-E4Pです。
掃除したあとの汚れたモップは、付属の充電台と掃除機を使って手を汚さずキレイにできます。このモップは、直販サイトで797円(税別)で追加購入することも可能です。
充電台
充電台は、付属ノズルなどをすべて収納できるようになっています。便利に感じたのは、紙パックの予備を収納する「ダストパックケース」が充電台に付いていること。掃除機に関わるパーツがすべて充電台にそろっているので、掃除中に必要なノズルや替え用の紙パックを慌てて探すことがありません。
付属品
付属するノズルやブラシは、写真左からフレキシブルホース、ふとん用ヘッド、すき間ノズル、ブラシノズル、ミニヘッドの5点。
ヘッド両端にゴミ残しが少し出てしまうものの、基本的な吸引力はかなり優秀。メイン掃除機として十分な掃除能力を持った製品だと感じました。メインとして使えるパワフルで高機能なコードレスクリーナーは、紙パック方式の製品がほとんどありません。「メンテナンスが手軽な紙パック式」を選びたいユーザーにとって、かなり魅力的な製品ではないでしょうか。手軽に使えるモップの存在も、実際に掃除で使うと「こんなに便利だっけ?」と再発見しました。
このシリーズが発売された当初は、まさかの「静電モップ付き」という新機能にアナログすぎて笑ってしまいましたが、実際に使ってみるとその便利さに驚きました。掃除しながら、棚やテレビのホコリが気になったらサッとモップを本体から取り出して掃除できます。掃除をする人の気持ちに寄り添った製品で、アイリスオーヤマらしいアイデア製品でした。吸引力もパワフルで、しっかりとゴミを吸い取ってくれます。紙パック式ですが、交換するときにゴミがこぼれやすいのが気になりました。
ほかの製品と比べて価格はかなり安いですが、吸引力もそこそこあり、ゴミセンサーも搭載するなど、コスパ面は非常に優秀。静電モップは、もはや掃除機とは関係ないじゃん(笑)と思いつつも、掃除機をかけているとホコリが気になる……というニーズにマッチ。静電気を帯びているからホコリが取れやすいなど、なるほどと思わせる仕掛けが、さすがアイリスです。デザインや質感などお値段なりなところもありますが、値段以上の性能は備えていると思います。