「暫時」という言葉を正しく読むことはできますか?
「ずいじ」「ぜんじ」など似ている言葉も多く、間違えて覚えてしまっている人も少なくありません。今回は暫時の意味や例文、間違えやすい「漸次」「随時」などとの使い分けの仕方についてご紹介します。
暫時とは
暫時とは「少しの間」「しばらくの間」といった意味の言葉です。「暫時休憩を取る」など少しかしこまったシチュエーションで使われることが多いので、ビジネスシーンではじめて耳にしたという方も少なくないでしょう。「ざんじ」と読みます。
「漸次(ぜんじ)」などといった混同しやすい言葉が複数あり、読み方も難しいことから大学入試で出題されることも多くある熟語のひとつです。
「暫」の意味
「暫時」の「暫」も普段はなかなか使わない漢字ではないでしょうか。 「暫」は音読みで「ザン」、訓読みで「しばら-く」「しば-し」と読みます。「しばらく」「わずかな間」という意味や、「仮に」という意味を持っています。 「暫時」だけではなく、「暫く(しばら-く)」、「暫定(ざんてい)」というように使われています。
しばらくとは?
「しばらくお待ちください」と聞いたとき、あなたはどのくらいの時間を想像するでしょうか。「しばらく」は受け取る人によってニュアンスの変わる難しい言葉ですよね。
「しばらく」には「長くはかからず、一時的であるさま」や「すぐではないが、時間のかからない間」という意味があります。また「しばらく滞在します」など「当分、時間的にある程度長く」という意味もあります。あとに続く言葉によってどれくらいの時間なのか判断するのがおすすめです。
基本的には「すぐではないが、それほどの時間はかからない」と覚えておくのがいいでしょう。暫時の場合は「ちょっと」という意味もあるので、「しばらく」といっても長い時間を指すことはありません。
暫時の類義語・対義語・英語表現
次に暫時の類義語や対義語、英語表現についてご紹介します。類義語や対義語を知ることで、さらに意味が理解しやすくなるでしょう。
類義語は?
先ほどご紹介した通り、「暫時」は「ちょっとの間、しばらく」という意味を持っています。そのため類義語としては「一寸」や「ひととき」、「寸刻」などが挙げられます。
対義語は?
暫時は「すぐではないが、長くかかるわけでもない」という時間を指す言葉の中でも中間に位置するものであるといえます。そのため「暫時」の対義語には「すぐ」と「長い間」という意味の2種類の言葉が考えられます。すぐを指す「即時」や永久的な時間を指す「恒久」などが対義語として挙げられるでしょう。
英語で表現すると?
暫時を英語で表現すると「for a while」や「awhile」、「for a (short) time」となります。
<例>
- Wait a while.
(暫時お待ちください) - Let us take a short rest.
(暫時休息しよう。)
暫時を使った例文を紹介
次に、暫時を使った例文をご紹介します。例文を参考にして暫時を使えるようになりましょう。
「暫時休息を取ろう」
長時間のミーティング中など「暫時休息を取ろう」と声をかけることができます。「少しの間休息を取ろう」と促すことでリフレッシュし、新しいアイディアが浮かぶこともあるかもしれません。
「ちょっと休みたい」というときに「暫時」を使うことでビジネスシーンにも適した言葉使いになるでしょう。
「暫時空気が凍りついたように思えた」
誰かの発言で衝撃が走ったときなどは「暫時空気が凍りついたように思えた」と表現することができます。先ほどご紹介した通り、「暫時」は「すぐ」と「永久」のおよそ中間に位置する言葉でもあります。”少しの間” 空気が止まってしまったときなどに使うことができるでしょう。
要注意! 暫時によく似た言葉との違い
暫時には似ている読みや漢字の言葉が多くあり、混同されることも少なくありません。大学入試などでも問われることが多いほど間違えやすく、注意が必要な言葉です。苦手意識がある方も多いかもしれませんが、暫時と間違いやすい言葉をしっかり覚えておけば、周りと差をつけることができるでしょう。
最後に暫時と間違えやすい言葉とその意味をご紹介します。
漸次(ぜんじ)
漸次(ぜんじ)はもっとも暫時と間違われやすい言葉です。どちらも日常会話で使う言葉ではなく、読みや意味を知っている人も多くありません。特に注意して使い分ける必要があるでしょう。
漸次とは「しだいに、だんだん」という意味の言葉です。「ようやく、しだいに」「少しずつすすむ」といった意味を持つ「漸」と、「続く、つぎ」「順序」という意味を持つ「次」からできています。響きこそ暫時と似ていますが、意味は全く違うので注意しておきましょう。 「漸次売り上げが伸びていった」や「これらの目標は漸次実現させていこう」というように使います。
なお「漸次」の「漸」も「漸く」と書かれることのある漢字です。この場合は「ようや-く」と読みます。暫時・漸次だけではなく「暫(しばら)く」と「漸(ようや)く」も混同しないように気をつけましょう。
随時(ずいじ)
随時(ずいじ)とは「適宜」「好きなときにいつでも」という意味の言葉です。「随時報告する」や「随時利用できます」のように使います。
随時の「随」には「なりゆきにまかせる」や「そのままついていく」という意味があります。「時」とついていても、暫時のように時間の長さをあらわす言葉ではないので混同しないよう気をつけましょう。
順次(じゅんじ)
順次は「順序にしたがって物事をするさま」という意味の言葉です。「順次お名前をお呼びします」といったときに使います。先ほど紹介した「好きなタイミング」という意味の「随時」とも間違えやすい言葉です。
逐次(ちくじ)
逐次は「順を追って次々に物事をなす」という意味の言葉です。「逐」には「順にしたがう」という意味があるので、「次」とあわさりこのような意味となります。 「逐次修正させていただきます」のように使用します。
意味はもちろん、「時・次」にも要注意
暫時と間違えやすい「◯◯じ」という言葉はこのように多くあります。一つひとつの意味も混同しないよう覚えておくべきですが、「じ」という漢字ひとつとっても「時」「次」と2種類あるので注意しておくようにしましょう。
「暫時」を「暫次」と書いたり、「逐次」を「逐時」と書いたりしないよう一つひとつ丁寧に意味と漢字を確認しておきましょう。
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「暫時」という言葉を日常生活で使用する機会はなかなか少ないかもしれません。しかし「少しの間、しばらくの間」という意味を持つ使い勝手のいい言葉なので、覚えておくとビジネスシーンなどのかしこまった場面で活躍するはずです。
「逐次」「漸次」「随時」など間違えやすい言葉も多くありますが、それぞれの意味をしっかり確認し普段の生活から使えるように意識すると語彙力も向上します。難しい言葉だと敬遠せず、積極的に使って語彙力UPを目指しましょう。