「何卒」とは「何卒よろしくお願いいたします」のように、依頼などの気持ちを丁寧に強調する意味の言葉。主に手紙やメールで使われる表現でありビジネスシーンでも多用されるため、どんな場面で使われる言葉なのかを知り、状況に応じて使いこなすことが大切です。

本記事では「何卒」の詳しい意味や読み方を解説。シーン別の豊富な例文とともに、よく使う言い回しや正しい使い方を紹介します。注意点や類語、英語表現もまとめました。

  • 何卒とは

    「何卒」の読み方や意味を知り、その場に適した表現を用いましょう

「何卒」の意味や読み方とは

「何卒」とは代名詞「なに」+格助詞「と」+係助詞「ぞ」からなる副詞です。

古くから使われている言葉で「強く理解を求める」「許しを請う」のように挨拶や依頼、謝罪などの気持ちを強調したい場合に用いられます。

読み方は「なにとぞ」です。

ビジネスメールなどでの「何卒」の使い方と例文

「何卒」は主に、手紙やビジネスメールなどで用いられる言葉です。何かを行うために手を尽くしていることを強調する目的で、メールの文中にはもちろんメールの最後の締めにも使えます。

敬語ではありませんが、格式のある言葉として目上の相手や上司、顧客に使用可能です。

ここでは「何卒」の活用シーンや実際の文例を紹介します。

「何卒よろしくお願いいたします」

この表現は、ビジネスメールの締めに広く用いられます。自分が言いたいことを「何卒」で強調しています。

(例 : 事業所の移転)

弊社○○支店は、○月○日から○○市○○へ移転いたします。皆様にはご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。

(例 : 贈答品をいただいた場合のお礼)

先日は○○を頂戴しまして誠にありがとうございました。
これからもお客様の信頼にお応えするべく懸命に取り組んで参ります。
ご指導のほど何卒よろしくお願いいたします。

(例 : 書類を送付する)

添付書類をご確認いただき、お打ち合わせの機会を頂戴できましたら幸いです。
ご多用の折恐れ入りますが、ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。

「なにとぞ倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます」

年賀状や周年記念など格式ばった内容で用いられます。

なお「何卒」と漢字で表記しても間違いではありませんが、「何卒倍旧」と続くと圧迫感があるため、「何卒」をひらがなにすると読みやすくなります。

(例 : 年賀状の挨拶)

旧年中は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。
本年もなにとぞ倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

(例 : 周年記念の挨拶)

弊社は○月○日に創立50周年を迎えます。
これを機に社員一同心を新たにして皆様の御期待に添えますよう一層努力してまいります。
なにとぞ倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

「何卒ご了承ください」

休業日や定休日、営業時間のお知らせなど一般的な内容について理解を求めたい場合に用いられます。なお柔らかい印象となるよう「ご了承ください」に「ませ」を添える場合もあります。

(例 : 休業日のお知らせ)

年末年始の営業時間を下記の通り変更させていただきます。何卒ご了承ください。

(例 : 営業時間変更のお知らせ)

当店の営業時間を当面の間9:00~18:00に変更させていただきます。
何卒ご了承くださいませ。

「何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」

「報酬の入金が確認できない」「必要書類が届かない」など相手に確認をとりたい場合は、相手に不快な思いをさせない配慮をして問い合わせることが大切です。

万一自分の勘違いであることを考慮して、相手に謝罪する場合などに用いられます。

(例 : 請求書が届いていない)

本日時点で請求書到着が確認できておりません。お忙しいところ大変恐縮ですが、ご確認ください。
なお、請求書の送付が本メールと行き違いになっている場合は、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

こちらも注目 : 催促メールをやんわり書く方法 - ビジネスシーン別の例文付き[社外/社内]

「何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます」

クレームに対して理解を求めたい場合や商品価格を高くする場合など、自社が相手に明らかな不利益を与えている場合などに用いられます。

(例 : 商品価格を引き上げる)

消費税の改訂に伴い○年○月○日より以下の製品価格を改定させていただきたく、ご案内申し上げます。
(詳細説明)
何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

(例 : クレームを受けて謝罪をする)

この度は、貴重なご意見をお寄せいただき誠にありがとうございました。今回お寄せいただきました件を真摯に受け止め、今後の商品開発やサポート・サービスに反映していく所存でございます。
何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

(例 : 大雪による配達遅延)

大雪のため配達業務が遅延しております。近隣の方々へは大変ご迷惑をおかけいたしておりますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。なお最新情報につきましては、弊社のホームページにてご案内いたします。

「何卒」を使う場合の注意点

  • 「何卒」を使う場合の注意点

    注意点を守りつつ、気持ちを伝える際に「何卒」をうまく活用しましょう

「何卒」は思いを強める言葉だからこそ、使う際は相手に不快な思いをさせないように配慮するのが重要です。

依頼の理由を添えてから使う

年末年始の休業の挨拶のように一般常識の範囲であれば不要ですが、「何卒」と依頼や期待の気持ちを伝えるからには、なぜその件が重視されているのかを補足するようにしましょう。

特に先方に協力を仰ぐ場合や謝罪をしたい場合には「相手に何をしてほしいのか」「自社でどこまで努力をしたのか」など具体的な内容を添えるのがマナーだといえます。

文中や締めなど、一つの文章で多用しない

「何卒」は文中にも文末にも使えますが、ひとつのメール連絡のなかで何度も「何卒」を使うと相手にお願いばかりする形になります。また、「何卒」に強調する意味があるにもかかわらず何度も使ってしまうと、どの部分が本当に重要な箇所なのかが分かりません。

メールを受け取った相手に重苦しい印象を与えないためにも、「何卒」は使い過ぎないことが大切です。

「何卒よろしくお願いします」はバランスが悪い

「何卒」は謙譲語である「いたす」「申す」などの敬語と組み合わせて使う言葉です。

一方「よろしくお願いします」は単なる丁寧語のため、「何卒」とはうまくかみ合いません。もし強調したい場合には「どうぞ」を用いる方が自然でしょう。

(例)

  • 何卒よろしくお願いいたします。 : 「する」の謙譲語「いたす
  • 何卒よろしくお願い申し上げます。 : 「言う」の謙譲語「申す
  • どうぞよろしくお願いします。

何卒のみで使用するのはカジュアルな印象

単独で「何卒」と使ったり「なにとぞなにとぞ!」と繰り返して用いられたりする場合もありますが、これらはあくまでも砕けた用法です。

ビジネスシーンでは使わないようにしましょう。

応答する際は丁寧な回答を心掛ける

「何卒」は主に、メールや手紙などの書き言葉として使われる表現です。

もし相手から「何卒よろしくお願いいたします」と言われた場合、返事は「かしこまりました」「承知しました」「お引き受けいたします」のように、丁寧な応対を心掛けましょう。

「何卒」の類語・言い換え表現(「どうぞ」「ぜひ」など)

  • 「何卒」の類義語

    「何卒」の類語も併せて覚えておきましょう

「何卒」はなんとかして自分の望みを受け入れてもらいたい場合に用いられます。そこで、「何卒」の類語は話を強調する際に用いられる「どうぞ」「どうか」「ぜひ」「なんとか」などが代表的です。

「何卒よろしくお願いいたします」はやや格式ばった表現で、ビジネスシーンでは丁寧な言い回しとして好まれます。一方、簡単な依頼や親しい間で「何卒」を用いると、相手に窮屈な印象を与えてしまうかもしれません。

そこで親近感を込めて依頼をしたい場合には、「何卒」の類語である「ぜひともよろしくお願いいたします」「どうぞよろしくお願いいたします」などを用いるのがおすすめです。

「何卒」の英語表現

「何卒」は正確に英訳できる表現がありません。もし「何卒」を英語で伝えたい場合は「自分のことを理解してくれてありがとう」「~していただけませんか」という表現を使います。

以下に「何卒よろしくお願いいたします」の英語表現例をご紹介します。

(例)

  • I appreciate your kind cooperation.
    親切に協力してくれることに感謝します。

  • Thank you for your cooperation.
    ご協力ありがとうございます。

  • Would you please~?
    ~していただけませんか。

  • Best regards.
    何卒よろしくお願いいたします。

  • Sincerely.
    何卒よろしくお願いいたします。

「何卒(なにとぞ)」の正しい使い方を覚えて、ビジネスを円滑に進めよう

「何卒」はお願いなどの意味を強調する表現です。類語の「ぜひ」「どうぞ」などと違い、やや形式ばった言葉。

「何卒」自体は敬語ではありませんが「お願い申し上げます」などの敬語と組み合わせて、丁寧に気持ちを強調する際に使われます。

「何卒」はメールの文中や締めで使用可能です。主に書き言葉で使われるため、ビジネスメールなどで上手に活用してみましょう。