「お慶び申し上げます」は、慶事の際に使われる言葉の一つです。本記事では「お慶び申し上げます」の意味や読み方、正しい使い方・例文を紹介します。また、類語・言い換え表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「お慶び申し上げます」の意味や読み方は?
年賀状や案内状などの冒頭で目にする機会の多い「お慶び申し上げます」という言葉は、使う機会も多く、知っておくと便利な言葉のひとつです。「お慶び申し上げます」について、まずは基本的な情報を整理しておきましょう。
「お慶び申し上げます」の読み方
「お慶び申し上げます」は「およろこびもうしあげます」と読みます。
慶応大学や慶子など、大学名や人の名前を通じて、「慶」を「けい」と音読みすることは広く知られています。しかし、訓読みの「よろこ(ぶ)」は目にする機会も限られており、今日では年賀状やお祝い状での「お慶び申し上げます」の用法を目にする程度になっています。
「お慶び申し上げます」の意味
「お慶び申し上げます」は「あなたに起こったおめでたいことを祝福いたします」という意味です。
文法的にみると「お慶び申し上げます」は「お~申します」という形の謙譲語です。先方に起こった「おめでたいこと」を私が「慶び」、その気持ちを「申し上げます」という構造になっています。
「よろこぶ」という言葉の漢字には「喜・悦・慶」が用いられます。「うれしく感じる」「楽しく思う」という感情面の「よろこぶ」は、「喜ぶ・悦ぶ」の字を当てるのに対し、「慶ぶ」の字を当てるのは「慶事(おめでたいこと)をよろこぶ、祝福する」という場合です。ただ「慶」は常用漢字でも「よろこ(ぶ)」という読み方は常用漢字外であるため、「喜ぶ」を当てる場合もあります。
古語での「慶び」や「慶びごと」には任官や昇進の意味があり、そのお祝いの言葉やお礼を指す場合もありました。今日では「慶事」というと、昇進ばかりではなく、結婚や出産、新年など、お祝いごと全般を指すようになっています。
それに伴い、慶事について使われる「お慶び申し上げます」を使用する幅も広がり、慶事のお祝い状のあいさつとして使われる機会が増えています。
「お慶び申し上げます」の使い方・例文
「お慶び申し上げます」は手紙やメールの中で「あいさつ文」として使われることがほとんどです。実際の使用例を紹介します。
ビジネスレターの使用例
ビジネスレターでは前文で、季節の挨拶に続けて使用します。この場合は特に先方を祝福する意味はなく、定型文として用いられています。公用文では「慶ぶ」の読み方は常用漢字外であるため、常用漢字の「喜ぶ」を用います。ビジネスシーンでもそれにならい、「喜ぶ」を用いる場合も増えています。
〈1月の挨拶〉
〈10月の挨拶〉
拝啓 清秋の候、御社におかれましてはますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございます。
結婚祝いの使用例
「お慶び申し上げます」という表現はフォーマルな言葉なので、親しい友人や身内よりも、上司や取引先のお祝い状にふさわしい表現です。
〈上司の息子に贈る結婚祝いに添える手紙〉
謹啓 新緑の候、貴家一段とご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご厚誼にあずかり、誠にありがとうございます。
このたびご子息さまにはめでたく華燭の典を挙げられます由、心よりお祝い申し上げます。ご尊家の皆様のお慶びもいかばかりかとお察しいたします。
栄転のお祝い状での使用例
フォーマルなあいさつとして使われる「お慶び申し上げます」は、後に続く「お祝い申し上げます」より少し距離感のある関係性にふさわしい言葉です。
〈取引先の担当者が新年度から本社営業部長に昇進する際のお祝い状〉
謹啓 立春の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたびは、本社営業部長へのご栄転、心よりお祝い申し上げます。
年賀状での使用例
年賀状で「新春のお慶びを申し上げます」という表現は、相手を選ばずに使うことのできる表現です。ここでは文頭のあいさつに続くき、フォーマルな表現を紹介しています。
〈目上の相手に送る年賀状の文面〉
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中はひとかたならぬご厚誼にあずかりまして、厚く御礼申し上げます。
本年も皆様にとりまして幸多き年でありますよう、心よりお祈り申し上げます。
本文が良くない内容の場合は使用しない
ビジネスレターの前文として、おめでたいできごとのない場合にも使われる「お慶び申し上げます」ですが、本文の内容が弔事や病気、クレームに対するお詫び等の場合は使いません。
〈取引先の地域で地震があった場合のお見舞状〉
急白 御地での地震のニュースを知り、驚いております。被害の大きさに心配でなりません。皆様のご無事を心から祈っております。
「お慶び申し上げます」の類語・言い換え表現
「お慶び申し上げます」の類語を見ていきましょう。
「お祝い申し上げます」
「お慶び申し上げます」をシンプルに言い換えると「お祝い申し上げます」になります。ただ、この表現は慶事に使われる表現で、通常のビジネスレターの挨拶では使うことはできません。
〈直属の上司に送る栄転のお祝い〉
このたびは本社営業課へのご栄転、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
ビジネスメールで使える言い換え表現
時候の挨拶に続く「お慶び申し上げます」は、「お喜び申し上げます」とともに非常によく使われる表現ですが、その言い換えには「拝察申し上げます」という表現があります。「拝察」とは「思う」の謙譲表現で、「拝察申し上げます」「拝察いたします」と使います。
〈「拝察申し上げます」での言い換え〉
拝啓 歳末の候、ますますご隆盛のことと拝察申し上げます。
英語で使うフォーマルなお祝いの言葉
英語ではあまり日本のビジネスメールの前文に相当するようなあいさつの言葉を書く習慣がありません。書き出しは短く、以下のような文章を入れるだけです。
〈ビジネスメールでの前文の例〉
Thank you for your time yesterday.
(昨日はお時間を割いていただきありがとうございました)
I hope you have been well.
(お元気でいらっしゃることと思います)
お祝いの場合も、ストレートに「おめでとうございます」と述べ、あまり導入文を用いません。
〈取引相手が昇進した場合のメールの例〉
Please accept my heartiest congratulations on your promotion.
(ご昇進、心よりお祝い申し上げます)
親しい関係では以下のようなカジュアルな表現の方が好まれます。
〈直属の上司が昇進した場合のメールの例〉
Congratulations on your promotion to manager.
(部長へのご昇格、おめでとうございます)
「お慶び申し上げます」の言葉でお祝いの場に花を添えよう
「お慶び申し上げます」という言葉には、相手の「慶びごと」、つまり幸福を「おめでたいこと」と受けとめ、こちらも一緒に慶ぶ、という意味がこめられています。
ビジネスシーンでは、先方の事業が順調に行っているものとして、お祝いの言葉を述べます。実際には景気が良くなかったとしても、具体的に困ったことがない限りは、儀礼的なあいさつとして使うことに問題はありません。
「お慶び申し上げます」はビジネスシーンや上司や年長者に送るお祝い状で使われることの多い表現です。慣れないうちは面倒に思うこともあるかもしれません。しかし、フォーマルな言葉は、社会で生きる私たちの人間関係をスムーズに動かすための潤滑油の役割を果たします。ぜひお祝い事の場面で、またビジネスメールの前文で「お慶び申し上げます」を使ってみてください。